第410話 ワットちゃんは奥義に興味津々のようです配信
「えぇ、そうですね。私もその大会とやらには興味ないです。参加したい、参加したくないといえば、参加したくないです」
ジュールちゃんとの話し合いで光明を得た私は、続いてワットちゃんを会議室まで呼び出してもらった。そして、ジュールちゃんと同じように、ワットちゃんにも料理対決について話しつつ、【スピリッツ】の力を搭載するバージョンアップを開始していた。
「というか、マスター・ススリア? その、新しい力を貰えるのはありがたいか、ありがたくないかで言えば、非常にありがたいのですが―――――」
「痛い、と?」
私がそう言うと、ワットちゃんはものすごい勢いでコクコクッと頷いていた。その言葉に、私は、頭の中に疑問符を浮かべていた。
ワットちゃんの売りといえば、分解した状態でも、仕事ができるという特性である。ゲンエインジウムを使う事によって、頭や胴体、足などを分解しながらも、稼働できるように設計されている。
そんなワットちゃんを分解した状態にて、【スピリッツ】を搭載しているのだから、そこまで痛くはないと思うんだけれども?
「マスター・ススリア。私は分解した状態で動けるように設計されているので、分解された状態でも触覚や痛覚があるんです。なので、普通に痛いのですが……」
「この後、この分解数を倍以上にするつもりですけど」
「分解数を倍に?!」
前回の基礎錬金術100連ノック配信で、私の錬金術はさらに一段階向上した。だから、ワットちゃんの分解数を今だったら、4倍くらいに出来る。いまの分解能力でも仕事能力が高いのだけど、さらに4倍に分解できれば、今よりも仕事能力が出来るに違いない。
「よしっ、さらに分解能力を向上させようか! 4倍に!」
「――――それ、だいぶ痛そうか、痛くないかで言えば、痛そうなので、2倍で! 2倍限界でお願いします!」
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ワットちゃんに無事、【スピリッツ】の能力と、分解能力を2倍にする事を搭載できた。そこまでやってから私は、ワットちゃんに本題を話し始める。
「ワットちゃん。ワットちゃんのお店には、従業員さんって居ないですか?」
「――――? どういう質問かは分かりませんが、ホールを回す従業員や、私と同じく料理を作る、私の弟子を名乗るシェフも居ますが……それがどうしましたか?」
うん、予想通り。
ジュールちゃんの料理に弟子がいるのだったら、同じようにワットちゃんの料理を継承しようとしているスタッフがいるのはおかしくない。
2人のお店に、それぞれ弟子が居るのだったら、私の計画も達成できるかもしれない。そう、ジュールちゃんとワットちゃんの、2人の料理大会をする方法を。
――――問題は、これをどう2人に伝えるか。そして、エコロさんがこれに対してどのように反応するかだ。
私が思いついた対処法は、料理経営に特化しているせいで、料理大会には向いていないジュールちゃんとワットちゃんが、どうにかして大会という試合形式をするかを考えた結果みたいなモノ。そして、その結果として導き出したのは、2人の料理勝負はできるかもしれないが、2人は料理対決できないという事だ。
頓智みたいに聞こえるかもしれないが、実際にそうなのだから仕方がない。
「マスター・ススリア?」
「あぁ、すまない。実は料理経営における極意を、どう伝えようかなと思っていてね」
「極意?! それは私だけが聞いていい、または私とジュールの2人に伝える予定のモノです!? できたら、わたしだけに伝えて欲しいんですが!?」
ワットちゃんは興奮した様子でそう聞くけれども、私の答えは『ジュールちゃんにも伝える』である。なにせ、同じ料理経営型ゴーレムであるジュールに伝えないと、フェアではないでしょう。
それに、料理大会をするには、2人に話を通さないといけない。そうじゃないと、これは意味がないのだから。
「ジュールちゃんも呼んでくれる?」
「極意を聞くのが私だけじゃないというのは正直嫌じゃないか、嫌なのかと言えば、嫌ですが――――マスター・ススリアから極意を聞けるのでしたら、是非とも呼んできます!」
「では、早速!」と、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を通して、ジュールちゃんを呼ぼうとするワットちゃん。そうして、呼ぼうとするワットちゃんに、私は「ただし」と注意事項を1つ伝える。
「ジュールちゃんとワットちゃん、2人とも必ず自分の一番弟子を連れてくるように。無論、自分の料理の味を一番受け継いでいると思っている意味で」
「――――? 一番弟子、ですか? マスター・ススリアの意図は分かりませんが、それが極意に繋がるのでしたら、必ずや連れてまいります」
まだ分かっていないみたいだけれども、ワットちゃんは納得してくれたようだ。ワットちゃんによれば、ジュールちゃんの方も「どうして一番弟子を連れてくるのか?」と困惑しているようであった。それでも、「どうしても極意を聞きたい!」と言っているらしく、是非とも一番弟子を、この前に会ったオウギワシの獣人族であるアオギちゃんと一緒に、会いに行くつもりである。
――――さて、後はスコティッシュさん、それに【スワロウ商工組合】のエコロさんを説得に行きましょうか。
私としても、ジュールちゃんとワットちゃんの料理対決、なんだか見ておきたくなったから。
さて、私の方も頑張って、動きましょうか。
ススリアは基本、根が良いタイプの人間ですので
理不尽な期限が設定されていたとしても、納得できたら
納得して協力するタイプです
やはり主人公だから、
多少は主人公らしい性格にしておきませんと( ;∀;)




