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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第188話 ダンパンVS.ピーエム【武闘大会生中継配信】(2)

 ~~ダンパン~~


「このまま、やっちゃいますよぉ!!」


 ピエームはそう高らかに言うと共に、彼女の身体を覆う刃付きのベルトが、ぶるんぶるんっと大きな音を立てて高速で回転する。そして、そのベルトは足裏にもあり、ぎゅいいいいんっと大きな音を立てながら、試合会場を抉り取っていた。

 彼女はそんな全身を駆け巡る刃ベルトを身に纏い、こちらに殴り掛かる。蹴りかかる。とにかく攻めて、攻めて、攻め込んでくる。


 その攻撃は迷いがなく、そして的確であった。

 高速で回転するベルトのせいもあるだろうが、それ以上に的確で、なおかつこちらの隙を逃さないという正確性があった。まだ原石レベルではあるが、一発一発を放つたびに無駄だった部分が修正されているようで、確かな才能を私は感じていた。

 今までピエームは槍使いとしての才能があるのは認めていたが、まさか徒手空拳、無手の才能があるとは思いもしなかった。


「おっしゃああああ!」


 奇声をあげ、彼女はさらに勢いを増す。攻撃はさらに鋭さを増し、避けられずに頬や腕など、彼女のベルトの刃で薄っすらとだが、徐々に斬られ始めていた。

 剣の予備はある。しかし、今の彼女のどこを斬ればダメージになるのか。それが私には分からなかった。


「(今度は、さっきよりも勢いよく剣で斬りつけてみるか? いや、あの感じから言って、勢いをつけたところで高速回転するあの刃でバラバラになる。かと言って、ベルトがない部分を狙おうとしたが、あのベルトは身体を巡っているようだ)」


 最初、私は高速回転するベルトの軌道を見極めようとした。それで分かったのだ。

 あのベルトは、彼女の意思によって自由に場所を移動できるという事が。


「(だったら、自動防御機能があってもおかしくはない。剣で直接攻撃するのは避けるべきだ。だったら、こうだっ!)」


 私はそう思い、彼女と距離を取って、剣を振るう。


 ----斬撃波。つまりは、剣の斬撃による遠距離攻撃。

 直接斬りつけない以上、ダメージは少なくなってしまうが、それでも剣を壊さずにダメージを与えられるのならば、その方が良いだろうと判断しての行動だ。


「……っ?!」


 その斬撃波はピエームの身体へとぶつかる。


「はぁ?」


 私が放った斬撃波は、ピエームの身体を"すり抜け(・・・・)ていた(・・・)"。


 斬撃波はピエームの身体を通り抜けていた。右腕の付け根に向けて斬りつけられた斬撃波は、彼女の身体をすり抜けてしまっていたのである。


 まるで、水を斬りつけた時のように、すーっと斬撃波はピエームの身体をすり抜けていたのである。



「アハハっ! ばーれーちゃった♪」


 バレた事をなんら恥とも思わずに、ピエームはそう言って笑っていた。茶化すようであった。


「ダンパン部隊長、昨日の夜に言いましたよね? 私はもう、同盟を破棄したいと。意味がないと」


 確かに言っていた。というか、その理由を知るために、私はいま戦っているといっても過言ではないのだから。



「----その理由を、今から分かりやすくお教えいたしましょう」



 ----ゴキッ!!


 彼女の身体から、明らかに人間が出すにはおかしすぎる音が聞こえて来ていた。

 そして、彼女の身体が"折りたたまれていく"。人間の大きさから、片手で運べるサイズの武器へと、姿を変化させていく。

 変化は、彼女の身体だけではない。彼女の足元の下にある影が、上へと上がって来て、人間の姿へと形作られていく。


 最終的に、彼女自身の身体は剣の姿へと変わる。刃の部分に、小さな刃がついており、それがぐるんぐるんっと高速で回転していた。

 そして、その剣を、人間の形となった彼女の影がガシッと掴んでいた。


『なにせ、今の私は"もう人間を辞めたのですから"!』

「人間を辞めた、だと?!」


 驚いている中、そのまま人影はその剣を私へと振り下げてきた。


「ぐはっ……?!」


 私の身体へとぶつけられた剣。その剣に取り付けられた小さな刃が高速回転して、私の身体を抉っていったのであった。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




『えっ、衛生兵! 衛生兵を今すぐ呼んでくれ! この大会で誰かが死んでしまう事は、誰も許しませんよ!』

『……治癒神のカンロと、タメリックを呼んでくる。あの2人が居れば、死ぬことはないだろう』


 準決勝第1試合、勝利したのはピエーム。

 しかしながら、観客も、司会(イプシロン)解説(ススリア)も、誰もが今にも死にそうなくらいの重体となってしまったダンパン部隊長の容態を確認していた。




「うむっ! 順調なり! 順調なり! やはり、この正解(わたし)の力は、正しく使われているなり!」


 そんな中、観客席でただ1人、ピエームの勝利を喜んでいる者が居た。


 その者は、顔に『快感』という文字が刻み込まれた仮面をつけていた。

 白衣を着たその仮面の少女は、ポケットから1本の注射器を取り出すと、そのまま近くで状況を受け入れられずにいる1人の観客に声をかける。


「あれはなんだよ……。人間が武器に変わるだなんて、バケモノじゃねえか……」

「そうだねぇ。バケモノだよね。怖いよねぇ」

「あっ、あんたもそう思うかい?! えっと……」


 名前を聞こうとする観客に、仮面の少女は「必要ないよ」と答える。


「私と君は、同じ気持ちを抱いた同士だ。既に私達は繋がっている。それだけで、十分じゃないのかい?」

「まぁ、そうだよな」


 観客は「確かにそうだな」と思った。

 この大会で偶然、観客席が近かっただけの人物なんて、それこそたくさんいる。この仮面の少女は、たまたま近くに居た自分に声をかけて来ただけだと。


「怖かったよね? 私も驚きだったよ。まさか、人間が武器に変化するなんて思いもしなかった」

「あぁ、俺もだ。まさか、人が武器になるなんて……」

「えぇ。体験して(・・・・)みないと(・・・・)分かり(・・・)ませんよね(・・・・・)?」


 そう言って仮面の少女は、注射器を観客の前へ見せる。


「一回、体験してみませんか?」


 仮面の少女----魔王ユギーの五本槍の1人、【快感のブラッド】はそう観客に提案するのであった。

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