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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第130話 ガンマちゃんは家を出ない配信

 思い立ったが吉日。何事も、遅すぎるよりかは、さっさとやった方が良いに決まっているだろう。


 私は早速、ウミヅリ王国で活動する今回の企画にぴったしの配信者を見つけ出した。

 相手の名前は、『お魚ハート・いっちゃん』。ウミヅリ王国で、主に魚の研究を配信で紹介する配信者であった。登録者は、私の1/5程度。お魚の紹介系動画の配信者としては、かなり高い位置にいるのではないだろうか。

 私の方からオファーを申し出ると、相手は喜び勇んで企画に参加してくれると言ってくれた。相手の方からして見れば、登録者の多い配信者である私からのお誘いで、出来たら自身のフォロワーが伸びないかなくらいの気持ちだったのだろう。こういう時、登録者が多いのは役に立つ。


 配信の内容に関しては、1日目にウミヅリ王国の観光地案内。2日目は予め捕獲()っておいた魚を使っての魚の生態についての動画という、2部制にするつもりである。

 正直な話、イプシロンちゃんを作りたいだけなので、1日目の観光は興味がないのだが、そうなると相手の『お魚ハート・いっちゃん』だけが得をすると言う事で断られたため、急遽(きゅうきょ)、王国の観光案内というのを追加したのである。

 黙っていればいい物を、それをわざわざ自分から言うってことは、かなりまじめな性格であると思えるし、コラボ相手としては当たりだろう。


 コラボの日程も決まり、私は早速準備を開始する。

 ベータちゃんと相談して、必要となりそうな服や簡易的な調味料などを鞄へと詰める。どうせ【アイテムボックス】に入れれば一緒なんだが、整理したという感覚が好きだし、なによりこれを出せば良いと初めから分かっているのも良い。

 デルタちゃんとアレイスターには、私が留守の間、定期的に道場に顔見せをお願いしておいたし、道場問題もクリア。


 残る問題は、あと1つ。



「さぁ、ガンマちゃん。行く準備をサッサと済ませちゃって」

「なんでそうなるのだ、巨匠!」


 絶対嫌と、断固拒否しているガンマちゃんをなんとかすれば終わりだな。


「巨匠! 巨匠は私を、動画編集用のゴーレムとして作ったはずなのだ! そんな私に他国、しかも陽キャが多い海に連れて行くだなんて! 絶対、行きたくないのだ!」


 どこからか引っ張り出して来た炬燵(こたつ)の中に引きこもり、ガンマちゃんは徹底的に引きこもるつもりらしい。

 動画編集用と割り切って、『家の中が好き』という設定にはしていたが、まさかここまでとは……。


「仕方ないでしょ、ガンマちゃん。今回のイプシロンちゃん作成計画には、しっかりとした調査が必要となる。その調査に一番向いているのが、編集などで演算能力を高めに作成しているガンマちゃんだけなのだから」

「いーやーだー! 家にいるもん! 家の中が絶対、安全だもん!」


 ベータちゃんは家事手伝いだから、割かし外に行くから外出もさほど抵抗はない。

 しかし、今回の手伝いに一番向いているのが、ガンマちゃんである以上、どうしてもガンマちゃんが必要なのだ。


「そもそも! 巨匠の腕なら、私と同じくらい演算能力に長けたフィールドワーク用のゴーレムとか作れるはずなのだ!」

「作れなくはないけど……」

「それに! 調査用の魔道具とか作れば、私でなくても可能のはず!」


 まぁ、ガンマちゃんがどうしても嫌というのならば、そういう方向性になってしまう。


「ただなぁ……」

「なんなのだ!? なんなのだ?! それとも、巨匠には、あなたがこういう風にして作り上げた私の性格(アイデンティティー)を崩すほどの、立派な名目があるとでも?」


 うーむ、そう言われるとそこまでではない気がするが……一応、伝えておこう。



「ベータちゃんが、ガンマちゃんの部屋を掃除したいと言っている」

「----なっ?!」



 ベータちゃん曰く、「そろそろガンマの部屋を一度、大規模な掃除をかけたいと思っております。そのため、ガンマをしばらく部屋からどかして欲しい」との事。

 そういう事なら、ついでにウミヅリ王国での調査に同行してもらおうではないかというのが、私の考えなのだ。


「いやいや、ちょっと待ってくださいなのだ!」


 ベータちゃんの話を聞いたガンマちゃんは、その必要はないと、掃除の不必要性を訴えて来た。


「どっ、どういう事なのだ?! 私の、この完璧な部屋を掃除したいって……私の部屋は、掃除をしなくても良い、完璧な部屋なのだ!」

「完璧な部屋ねぇ」


 そう言いつつ、私は彼女の部屋を覗き込む。


 ガンマちゃんの部屋は、だいぶ乱雑に置かれている。

 いま彼女が潜っていた炬燵を始め、心地よい風を送り込む扇風機、何か良く分からないキャラクターのフィギュアたちが並ぶ棚----うん、どこが綺麗なのだろう?


「巨匠には分からないはずないのだ、この部屋の素晴らしさを! 『映像編集用ゴーレム、その名はガンマ』に相応しい、そういうコンセプトに仕上げているこの部屋の素晴らしさを!」

「コンセプト」

「そう、コンセプト! 私の部屋は最近、配信で映る機会が多いのだ! 主にベータちゃんとの調理配信の後に、2人で食べる際に! ----まぁ、実際は食べるふりして、口の中から【アイテムボックス】に直行しているだけだが」


 あー、時折置いてある、食べかけのケーキみたいなのはそういう感じで出来た代物なのね。

 というか、それなら普通に食べないで渡して欲しい。


「そう! 部屋が映る以上、その部屋の持ち主に相応しい部屋にすべき! 決して、私個人の堕落スペースが欲しいとかではないので、あしからず----」

「…………」

「あし、からず----」

「…………」



「……すいません、ぶっちゃけ自分が過ごしやすい部屋を作っただけです」



 素直に謝ったのは、実に良い事だろう。

 ----まぁ、それはそれとして、ウミヅリ王国には一緒に行ってもらうけれども。

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