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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第116話 まじで二度と見られない、光景だモー配信

 ----魔道具【メッセージ・ポスト】。

 『相手が手紙を開いた時』、『食べ物を食べた時』、『眠った後』など、特定の行動を取った時に手紙を相手に届ける魔道具である。


 この魔道具の一番重要な点は、この魔道具は"錬金術師しか使えない"という事である。


 手紙を届けるための条件を定義しておいて、魔道具に魔力を注ぎ込んで周囲に結界を張る。

 その結界内で相手が特定の行動を取るのを探知して、手紙を送るというのが、この魔道具のシステムなのである。


「あの魔道具は繊細でありますから、錬金術師の力がないといけませんね」

「タラタちゃんの言う通りだと思う。それに結界を張れる大きさにも限度があるから、村のどこかには居たでしょう」


 狙いすましたかのように手紙が届いたのが、魔道具【メッセージ・ポスト】を使っての事だとすると、明らかに錬金術師が犯行グループに居るのは間違いない。

 まぁ、"食べたら食欲が消える食べ物"なんて、普通はないだろうし、恐らくなんらかの錬金術によって生み出した代物だろうから、そうだとは思うけど。


「すいません、その手紙はありますか? 魔道具【メッセージ・ポスト】を使った痕跡が分かるかもです」

「なるほど……じゃあ、今すぐ確認させよう」


 スピリッツ組合長が冒険者の1人を呼ぶと、その冒険者と共にタラタちゃんは建物の奥へと消えて行った。


「----こりゃもう、宝石展覧会の流れではないな。怪盗めしどろぼう、私も捜査に参加させてもらいますよ」

「助かるぞ、ススリア」


 いや、私は全然興味はないのですが……。

 スピリッツ組合長の顔に「弟子は手伝うのに、師匠は手伝わないのか?」と書かれていなければ、行っていたところである。


 それに、宝石展覧会よりも面白そうだし。


「そっ、そんなぁ!」


 弟子であるタラタちゃんを抜きにして、自分だけ楽しんでいる訳にもいかない。

 そう思って、私も捜査に協力すると申し出ると、その横で、世界の終わりだと言わんばかりにアレイスターが嘆いていた。


「せっかく……! せっかくの宝石展覧会なのにぃ!! あの輝きを見られないというんッスかぁ……!」


 ううっ……と、嘆くアレイスター。


「(そう言えば、メキスさんにも話を通しておくべきですね)」


 そもそも私達が王都に来たのは、メキスに宝石展覧会に誘われたから。

 この状況では、怪盗めしどろぼう対策で、展覧会には行けないだろうと、私はそう判断した。


 そこで、私は、アレイスターに、メキスさんと合流して、一緒に宝石展覧会に行って来てほしいと頼んだ。

 ……あまりにも可哀想すぎたし、アレイスターはメキスさんと一緒に宝石展覧会を楽しんできて欲しかったからである。


 こうして、アレイスターは「了解したッス!」と嬉しそうに出て行き、私も捜査に本格的に参加するのであった。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「嬉しいな! 嬉しいなったら、嬉しいな!」

「ご機嫌ですね、アレイスターさん」


 ススリアから『メキスさんと宝石展覧会を楽しんでくれ』と言われた、宝石大好きゴーレムのアレイスター。

 無事、待ち合わせ相手である錬金術師メキスと合流したアレイスターは、宝石展覧会に向かっていた。


「今回の目玉はアレキサンドライト! 太陽の下では青緑、魔力を用いた灯りの下では赤へと変わる摩訶不思議な宝石! 光に反応して、属性が変わる素晴らしい宝石! あぁ、今からワクワクするッス!」

「あぁっ、本当に嬉しそうですね。私の名はメキス。そんな嬉しそうな様子に私も喜ぶ、ただの錬金術師♪」


 「ふふっ♪」と、嬉しそうに笑うメキス。そして、メキスとアレイスターの2人は宝石展覧会へと向かって行く。


「ちなみに、メキスさんのお目当ての宝石は何ッスか?」

「私の名はメキス。ダイヤモンドをお目当てにしている、ただの錬金術師」

「……なるほど」


 そうやって、宝石展覧会へと向かう2人。

 しかし、展覧会会場へと近付くにつれ、周囲の人々の顔が気になった。


 彼らは一様に、ガックリと落ち込んでいた。

 「あれはないわぁ~」、「ひどい奴がいたもんだ」と、会場がある方角からどんどん離れていく人達が目立ち始めたのだ。


「「…………」」


 2人揃って、嫌な予感が頭の中によぎる。

 それが違うのを確かめるべく、2人の歩みは自然と速くなっていった。


 そして----



「すいません、宝石が全て"牛に変えられてしまって"……」

「「「「モー」」」」



 宝石展覧会では、困り果てた様子で説明する職員と、色鮮やかな牛の群れ……。

 そして、職員の近くにあった立札には、次のような紙が貼られていた。



『おめでとうございます! あなた達の目には、色鮮やかな牛の群れが映っている事でしょう!

 このような光景はもう二度と見ることが出来ない、今回だけの素晴らしい光景でしょう!

 是非とも、この光景を楽しんでみてくださいませ! 怪盗めしどろぼう』



「「「「モー」」」」


 色鮮やかな牛たち……いや、元宝石だった牛たちは、その場でじっとしながら、キラキラと輝いていた。


 確かに、色鮮やかな牛の群れなんて、二度と見ることが出来ないような素晴らしい光景に見えた。

 しかしながら、もう二度と見たくない光景でもあった。


「宝石をこんな風にするだなんて、許せないッス!」

「私の名はメキス。宝石展覧会をめちゃくちゃにした犯人を絶対に許さない、激オコの錬金術師」


 こうして、アレイスターとメキスの2人も、怪盗めしどろぼう退治に参加することになったのであった。

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