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お仕事は繁殖させる事?  作者: 鹿熊織座らむ男爵
第二章 おまけ
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モテます、ね?

何が書きたかったのか途中で分からなくなってグチャってなった奴ですが…。

前回に引き続き愛され話し。

 頭にレイを貼り付けたイヴァンがザミラと合流したのはついさっき。

 イヴァンとザミラが先週のマンドレイクの売上表の束を片手にホルンの執務室に向かっていると、丁度廊下の端で立ち話をしているホルンを見つけた。

 茶器のワゴンを曳いた侍女二人とホルンは随分楽しげで、時折軽い笑い声も聞えてくる。

 王が廊下で侍女と立ち話。随分とのどかな光景だな。

 ここに来てから目まぐるしい思いだったイヴァンはそんな感想を抱きながら、微笑ましくその光景を眺めていた。

 が、そのイヴァンの脇をするりとザミラが通りすぎたかと思うや、至極滑らかな動きでホルンの背中にぎゅっと貼り付いた。

 相当驚いたのか、ホルンはびくりと硬直した後、何事かと振り返り背中を確認しようとするも、ザミラが小さくて見えないのか、何度も首を捻る様が傍から見ていて面白い。

 そうこうしている内にホルンはイヴァンに気付いたらしく、いつも通りのふにゃりとした笑顔を浮かべた。

 

「おはようございます。ザミラさんかレオかどちらか悩んでいたのですが、やはりザミラさんですか」

「おい、今俺を見てザミラって判断しただろ? まぁ、大きさ的にもザミラだよな。ほら、これ先週の」

 

 通常運行のイヴァンはホルンにぽいっと売上表を一枚手渡し、ホルンもザミラを背中に貼り付けたまま受け取り軽く目を通し始める。

 するとそれまで壁際に下がっていた侍女の二人が、一歩近付くと柔らかい笑みを浮かべイヴァンに会釈した。

 

「おはようございます、イヴァン様。後程、いつも通りお茶をお持ち致しますね」

「おはよー。おーいつもありが、と……と……」

 

 侍女が挨拶をし始めると、それまで大人しくホルンにしがみ付いていたザミラがゆーーっくりと動き出し、今度はイヴァンに正面からぎゅっとしがみ付く。

 売上表を片手に侍女と挨拶をしてたイヴァンは、ザミラがゆーーっくり近づいてくるのは気付いていたが、まさかそこに落ち着くとは思わず珍しくもびしりと固まってしまった。

 侍女達の目にはそんなザミラの姿がとても愛らしく映った様で、満面の笑みを浮かべ一礼すると、そのまま仕事に戻って行った。

 

「ザミラ……さすがにいい歳して正面から妹に抱きつかれるのは、色々もうほんっとうにどうして良いか分からないー……いやまぁ、引っ付くのは良いんだけどな? 良いんだけどさ、せめてあのー、いつも通り背中にしてくれるか、な……?」

「イヴァンさんが面白い事に……メルを呼びたい……!」

 

 侍女を見送ったイヴァンがそうぎこちなく口を開くと、相当ツボに入ったのか、ホルンはぐっと堪える様に顔を反らし肩を揺らす。

 お上品に笑いを堪えるホルンにじとりと恨めしい視線を向けた後、イヴァンは一先ずザミラを持ち上げてみる。

 するとザミラは見事な膨れっ面で、危くイヴァンもホルン同様に吹き出しそうになった。

 

「ホルン、これ、やる」

「ははっ……。はい、ありがとうご、ざいま……っ」

 

 二人揃って笑いを堪え過ぎてプルプルと震える。

 ザミラを受け取ったホルンは、いつも通り子どもをあやす様にザミラの背中をとんとんと叩きつつ、一先ずイヴァンと執務室に向け歩き出す。

 

「さて、これは何か猛烈に落ち込んでる時ですよね。早朝からどうしましたザミラさん?」

「二人とも、モテるなぁって、思いまして……」

「ちょっといきなり何言ってるか分からんなーおい」

 

 ホルンの問いにザミラがゆっくりと答えると、イヴァンが即ツッコミを入れる。

 侍女に挨拶をしただけで?

 そんなまさかと、ホルンとイヴァンが顔を見合わせていると、丁度向かいからメルが歩いて来た。

 結婚してからはアマデウス邸にいるはずのメルだったが、実はイヴァンとアマデウスには内緒でこっそりと遊びに来ていたのだった。

 イヴァンの姿を見つけたメルがしまったと言う表情をした瞬間、何故かザミラはホルンの腕からはなれ、一直線にメルの下へ向かった。

 メルをぐいぐいと引っ張り耳打ちをしたかと思うと、今度はメルが見事な膨れっ面になる。

 そしてメルはそのまま足早にイヴァンに近付くや、先程のザミラの様に無言のままぎゅっとしがみ付いてしまった。 

 イヴァンはメルを抱えたまま、ホルンによじ登って行くザミラに視線を向けると、ホルンも心底困った様にイヴァンに視線を向けて来た。

 

「……ザミラ、メルに何を言ったのか大体察しはつくけど、うち、新婚なんだぞ? 変に誤解を招いて波風立てるなよ……。それに、別にモテてるわけじゃないだろ。なぁ、ホルン?」

「え? えぇ、まぁ……。イヴァンさんは侍女に人気はありますが、メルが居るので変なちょっかいかけてくる者は居ないはずですしそのぉ……。あっ! ほらザミラさん父上ですよー」

 

 ホルンは背中で執務室の扉を開け、一先ず自席に座ろうとした時、丁度外に先王の姿が見え、苦し紛れに話を反らす。

 イヴァンもメルを抱えたまま窓際に寄ると、先王は物珍しげにスレイプニルの首筋を撫でていた。

 

「父上ー! ザミラさんの事好きですよねー!!?」


 突如窓を開け放ったホルンは、挨拶も無しに用件だけを叫ぶ。

 ホルン以外の三人が目を丸くしていると、突如頭上から話しかけられた先王も何事かと虚をつかれた様に目を見開き二階を見上げたが、その直後ホルンそっくりに目元を緩ませると、頭の上で両手で大きく丸を描く。

 その光景に今度はホルンが【な、に、柄にも無い……】と引きつった笑顔のまま絶句していたが、ホルンに抱えられていたザミラには効果覿面だった。

 

「うわーーんパパ大好きーー!!」

 

 すっかり機嫌が直りご満悦のザミラは、窓からひょいっと飛び降り先王の腕の中に飛び込む。

 一瞬先王は焦ったものの、受け止めてみればザミラがあまりにも軽く、思った程受け止めるのに苦労はしなかったようだ。

 

「色々癪に障りますが、一先ずは……」

「ホルファティウスー、メルティーナー、静の母神ー」

 

 ホルンが複雑な思いで階下を眺めていると、ザミラを降ろした先王が何やら両手を広げながら三人の名前を呼ぶ。

 ん? とホルンが小首を傾げていると、不敵な笑みをたたえたイヴァンがその肩をぽんと叩く。

 

「まぁ、自分から親父を利用したんだし? しょうがないんじゃないか?」


 ぽんぽんと肩を叩き話すイヴァンは、何故か自分の指から体が軽くなる指輪と物理攻撃無効の指輪を抜き、そっとホルンの指にはめる。


「な、にがです? ちょっとイヴァンさ、んんんんんんん!?」

 

 ホルンは何か嫌な予感を覚えじりりと後退したが、イヴァンは軽々とホルンを持ち上げ、なんの躊躇いも無く窓の外に放り投げた。

 驚きやらなんやら色々な衝撃で悲鳴を上げ背中から落下していく王の体を先王が受け止め、その直後メルを抱えたイヴァンがすぐ隣に着地する。

 先王もさすがに半分冗談のつもりだったのか、落ちて来たホルン以上に先王の方が驚きで固まっている状態。

 

「……ず、ずいぶんと、軽いのだ、な……ホルファティウス……。ちゃんと食べて休んでいるか……?」

「えぇ、最近はしっかりと……。ですがこれは指輪のーえー……」


 この不自然な父と息子の会話を修正すべく、首を突っ込んだのはザミラ。


「ホルンさん、受け止めてもらったんだから、ちゃんと【パパありがとー】って言わないとー」

「パパ受け止めてくれてありがとー? とー……?」

 

 ぐっと盛大に吹き出すイヴァンとザミラとメル。

 王宮内では、庭でホルンを抱えたまま完全に固まっている先王の姿を見つけた侍女や執事達も、信じられないとばかりに唖然とした表情で推し固まっている。

 

「え、と……。今からイヴァンさんに圧政を強いろうかと思いますので、降ろして頂いても良、いっ!!?」

「今日は一日パパに付き合えホルファティウス! なーに、一日位政務を放り出しても国は傾かぬ。今日は天気も良い、鷹狩りにでも行こうか! メルも母神も一緒にな! ははははは!!」

 

 ホルンがどうにか通常運行を始めた瞬間、先王は思い切りホルンを抱き締め天高らかに宣言し、ホルンを小脇に挟むと空いたもう片腕でメルも捕獲し、高笑いをしながら厩の方に向かって行く。

 

「いやーうちの親父そっくりなテンションだなー。あ、先王さまーマンドレイクも連れて行って良いのかー? あとスレイプニルと石喰い鳥もー」

「良い良い! 何ならレオンハルトとイレーネとアマデウスも連れて行くか! 来年からは今日は祝日としよう! うはははは!」

「ちょっと兄様! 御父様の変なスイッチ押してしまったみたいですわよ!?」

「えっ私が!? 鷹狩り……えっ!? ちょっと、父上!? そんな身軽な……じゃなくて、待って下さい降ろして下さいー!」

 

 困惑するホルンとメルをよそに、イヴァンとザミラは【結局ホルンとメルが一番人気だ】等と暢気な会話をしながらさっさと出かける準備を開始。

 そして数分後には有能過ぎる侍女執事達によりあっさりと準備が完了し、結局その日一日は先王のやりたい放題になった。

 が、翌年から祝日にするかどうかの議論はホルンと先王の間で決着がつかなかったらしい。

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