「大蔵省と厚生省の協調的競争」と「二系統の投資策定」
【大蔵省と厚生省の協調的競争】
基金への資金流入による国の一般会計の税収減に対しては地代を一般会計に編入
明治財政当局は
・国債の償還不能
・恒常的財政赤字
・紙幣濫発による通貨不信
・税収の景気依存性
を恐れており、
地代の編入は
・国債償還財源の恒久化
・租税依存の構造転換
・財政規律の制度化
・通貨信用の強化
を満たすため大蔵省も統合社会保障制度賛成に回る
大蔵省にとって、地代が一般会計に組み入れられる瞬間は「増税なしで予算を倍増できる」奇跡の瞬間ですあり、そのためには、一刻も早く「土地・禄買取公債」を完済する必要がある
大蔵省の役人たちは、無駄な国債発行を「地代を国庫に迎え入れる時期を遅らせる害悪」と見なすようになり、結果として、政府内に強力な「財政規律の自浄作用」が働き、政治家によるバラマキも厳しく制限される
「富を増やすプロ(厚生省基金)」と「規律を守るプロ(大蔵省)」の二つの強力なエンジンが並走することになり、
・厚生省が投資でパイを広げる
・大蔵省がその還流ルート(地代の国庫編入)を死守する
また大蔵省の「もっと地価を上げて、地代を国庫に入れろ」という力に厚生省の「地代を上げすぎて事業者が逃げたら、国民の年金原資が枯渇する。それは『信義』に反する」という「省庁間の利害対立」が、地価を適正水準(収益性に見合った額)に押し留めるブレーキとなる
このバランスにより、国家が肥大化しすぎて腐敗する「官僚の罠」を防ぎ、民間経済の活力を維持し続ける
市場でも、
国債が「地代という実物裏付け収入を持つ」こととなり、円は事実上「土地+インフラ裏付け通貨」になり信用の爆発的向上
土地は一度国民から預かりその果実が将来世代の減税として還元される
という事でさらなる賛同を得る
《松方正義(大蔵卿) 》
「……当初、私は厚生省の構想に懐疑的だった。国債を増発し、民の金を集めて投資する——こんな危険な賭けがあるか、と。だが、地代が一般会計に編入されるという仕組みを理解した今、考えは変わった。これは"増税なき財政再建"の道だ。ただし、公債の完済までは一銭たりとも無駄にはできぬ。財政規律を死守する。」
《大隈重信(参議)》
「松方君が賛成に回ったことで、この制度の勝利は確定した。大蔵省が財政規律の番人となり、厚生省が成長の推進者となる──この二頭立ての馬車こそ、日本が財政破綻と通貨不信から逃れる唯一の道だ。ただし、私は懸念している。官僚機構が強大になりすぎれば、民の自由は損なわれる。議会の監視が不可欠だ。」
《伊藤博文(参議、後の初代内閣総理大臣)》
「大蔵省と厚生省が互いを牽制する構造──これは意図的に設計されたのか、それとも偶然の産物か? いずれにせよ、素晴らしい。権力の集中を防ぎ、財政規律を保ちながら成長を促す。この"制度的均衡"こそ、立憲国家の基盤になるだろう。憲法起草の際に、この構造を参考にしたい。」
《岩倉具視(右大臣)》
「欧米視察で学んだことがある。財政の腐敗は、国家を内側から蝕む。イギリスは議会が財政を監視し、フランスは官僚が規律を守ろうとしたが、両国とも完璧ではなかった。だが、この制度は"省庁間の利害対立"を利用して、自動的に規律を保つ。人の善意に頼らず、構造で悪を防ぐ──これぞ近代国家の知恵だ。」
《三条実美(太政大臣)》
「大蔵省が厚生省を支持したことで、政府内の最大の対立が解消された。これで制度は盤石だ。ただし、両省の力が強大になりすぎれば、政治が官僚に支配される。我々政治家は、常に民の声を聞き、官僚を監視せねばならぬ。」
《黒田清隆(開拓使長官)》
「榎本の言う通り、北海道開拓は基金の投資で加速している。土地を整備し、鉄道を敷き、港を作る──そして、その土地から上がる地代が、将来は国庫に入る。つまり、開拓は"投資"であり"財源創出"でもある。こんな素晴らしい循環は、他にない!」
《益田孝(三井物産創業者)》
「円が"土地と社会基盤の裏付け通貨"になったことで、国際貿易での信用が格段に上がった。これまでは金決済が基本だったが、今後は円建て取引も増えるだろう。為替差損が減り、貿易が安定する。これは商人にとって福音だ」
《大蔵省の若手官僚》
「つまり、我々が緊縮を貫けば貫くほど、早く地代が入ってくるわけですね。これは……素晴らしい。政治家が"地方に鉄道を!"と叫んでも、"それは地代獲得を遅らせます"と反論できる。大義名分が立つ!」
《大蔵省主計局長(後年) 》
「厚生省との関係は、ライバルであり同志でもあった。彼らが投資で失敗すれば、我々の地代収入も減る。我々が無駄遣いすれば、公債償還が遅れ、彼らの投資原資が目減りする。つまり、互いに監視し合う構造になっていた。これほど健全な緊張関係は、他に例がない。」
《三井高福(三井財閥)》
「国債が"地代裏付け"になったことで、信用が格段に上がった。我々も国債を安心して保有できる。これで金融市場が安定する。……ただし、政府があまりに強力になりすぎると、民間の自由が損なわれる。注視が必要だ。」
《井上馨(後年・外務卿時) 》
「条約改正交渉において、日本の財政の健全性は大きな武器となった。欧米列強は、日本が"破綻寸前の後進国"だと思っていた。だが、国債が地代で裏打ちされ、財政規律が制度化されていることを知り、驚愕した。これで対等な交渉ができる」
《榎本武揚(後年・農商務大時) 》
「厚生省の投資により、北海道開拓が加速した。土地を買い取り、鉄道を敷き、港を整備する——全て基金の資金だ。そして、その土地からの地代が、将来は一般会計に入る。つまり、開拓それ自体が"財源創出"になる。こんな素晴らしい仕組みは、他にない。」
《ウォルター・バジョット(英国経済学者、『ロンバート街』著者)》
「日本の財政制度は、我々イギリスが200年かけて築いた『財政規律』を、制度設計によって一気に実現しようとしている。大蔵省と厚生省の対立を利用した自動安定化機構——これは天才的だ。英国では議会と王室、貴族院と庶民院の対立が権力を抑制してきたが、日本は官僚機構内部に同じ仕組みを埋め込んだ。ただし、これが機能するのは官僚が優秀で誠実である間だけだ。腐敗すれば一瞬で崩壊する」
《東京日日新聞》
「大蔵省が厚生省を支持した意味は大きい。これで財政破綻の恐れは消えた。国債は"地代という実物収入"に裏打ちされ、円は"土地とインフラ"を背景とする。これほど堅固な通貨は、世界に例がない。日本の信用は、ロンドンやパリを凌ぐ日が来るかもしれぬ」
《東京・日本橋の商人》
「国債の信用が上がって、金利が下がるってのは、商売人にとっちゃありがたい話だ。借金がしやすくなる。ただ、地代が上がったら困るな。商売続けられるか心配だ。」
《大阪・船場の豪商》
「大蔵省と厚生省が競い合うってのは、悪くない。どっちかが暴走せんように、監視し合ってくれるんやったら、ありがたい。ただ、二つとも腐ったら終わりやけどな」
《京都・西陣織の職人》
「大蔵省と厚生省が競い合うってことは、どっちが勝つかで、俺らの生活も変わるってことやろ? 怖いな。官僚に俺らの運命を握られてる気がするわ。」
《横浜・港湾労働者》
「国債の信用が上がるってことは、国が潰れる心配が減るってことだろ? それはありがたい。でも、地代が上がったら、俺らの仕事場も影響受けるかもな。」
《大阪・米問屋の主人》
「円の信用が上がって、貿易が安定するってのは、商売人にとっちゃ最高や。ただ、政府が強くなりすぎて、民間を圧迫せんか、それが心配や。」
【二系統の投資策定】
「民生の安定(ボトムアップ:下意上達)」と「国力の増進(トップダウン:上意下達)」の二条の路によって策定
これらは独立しつつも、大蔵省の規律と議会の承認という共通の門を経て、国家の血肉となる
1. 〈民生安定ルート〉(国民・地方主導)
国民一人ひとりの生活の実感から、未来の豊かさを汲み上げるボトムアップの形式
・起点(国民の希望): 各地の郵便局や自治体を通じ、生活に根ざした投資(病院の設立、農地の改良、地方鉄道の敷設など)の要望が集積
・集約(地方役場・県庁): 集まった声を地域の将来像に合わせて整理し、厚生省へ「地域開発要請」として提出
・立案(厚生省): 提出された要望を精査し、基金の運用益を最大化しつつ、国民の厚生に繋がる具体的なプロジェクトとして設計・立案
・審査(大蔵省): その投資がインフレを招かないか、金本位・円信用の維持に抵触しないかを厳格にチェック
最終承認(議会): 国民の代表が「我々の積立金を使うに相応しいか」を審議し、可決をもって執行
2. 〈国力増進ルート〉(厚生省・政府主導)
世情を俯瞰し、次の世代に繋がる技術・産業・文化を創出するためのトップダウンの形式
・起点(厚生省の知恵): 専門の投資官と学術機関が協力し、長期的な利益が見込める先端技術や海外資源、戦略的インフラへの投資案を自ら起案
・審査(大蔵省): 巨額の資金移動が通貨の安定を乱さないか、リスクが許容範囲内かを、ボトムアップ案件以上に厳しく精査
・承認(政府・内閣): 経済競争のスピードに対応するため、まずは内閣の責任において国家の意思として承認
報告と監督(議会): 政府の決断は速やかに議会に報告され、その運用の推移は国民に対し常に透明に開示
二系統の調和が生む「国家の安定」
この二つのルートが並走することにより、
・「今」と「未来」の均衡: 国民が今必要とする福祉と、100年後の日本を養う新産業への投資が同時に行われる
・「情」と「理」の均衡: 民の切実な願い(情)を、専門家による冷徹な利回り計算(理)が支える
・「民主」と「迅速」の均衡: 時間をかけて合意を形成する民生投資と、国際競争に勝つための戦略投資が互いを補完する
《渋沢栄一(厚生省顧問、実業家)》
「これは素晴らしい。民の声を汲み上げる下意上達と、国家戦略を推進する上意下達──二つの流れが並走する。企業経営でも同じだ。現場の声を聞きつつ、経営陣は先を見据える。だが、多くの企業はどちらかに偏って失敗する。この制度は、両方を制度化した。しかも、大蔵省の審査と議会の承認という"歯止め"がある。人の善意に頼らず、構造で健全性を保つ──これぞ近代国家の知恵だ」
《岩倉具視(右大臣)》
「欧米視察で学んだことがある。イギリスは議会が強く、民の声を反映する。だが、時に決断が遅れる。プロイセンは官僚が強く、迅速に動く。だが、民の不満が溜まる。フランスは両方を試みたが、革命と混乱を繰り返した。この制度は、両方の長所を取り入れ、短所を補完する。果たして、日本はこの難題を解けるのか? 歴史が答えを出すだろう。」
《松方正義(大蔵卿)》
「大蔵省の役割が明確だ。下意上達であれ、上意下達であれ、インフレを招かないか、円の信用を損なわないか──それを厳格に審査する。これで財政規律は保たれる。ただし、厚生省との対立は避けられまい。彼らは"投資を増やせ"と言い、我々は"待て"と言う。この緊張関係が、国家を健全に保つのだろう。」
《板垣退助(自由党総理)》
「民生投資ルートは評価する。国民の声が政策に反映される——これは民主主義の理想だ。だが、国力投資ルートは危険だ。政府が『国家の未来』を名目に、勝手に投資を決める。これは専制ではないか? 議会への報告だけでは不十分だ。事前の承認を求めるべきだ。」
《伊藤博文(枢密院議長)》
「板垣の懸念は理解する。だが、国際競争の速度を見よ。議会で何ヶ月も議論している間に、欧米は先へ進む。だからこそ、戦略投資は内閣の責任で迅速に決定し、事後に議会が監督する。これが立憲君主制における『責任と速度』のバランスだ。」
《福沢諭吉(慶應義塾)》
「民の声を聞く──これは民主主義の基本だ。だが、民の声だけでは国は成り立たぬ。専門家の知恵、長期的視野、国際競争力──これらも不可欠だ。この制度は、両方を組み込んでいる。ただし、懸念もある。下意上達の声が、本当に"民の声"なのか? 地方の有力者が自分の利益のために声を集めていないか? また、上意下達の戦略が、官僚の独断に陥っていないか? 透明性と監視が不可欠だ。」
《大隈重信(参議)》
「二系統の投資──これは政治の本質を突いている。政治とは"今"と"未来"のバランスだ。民は今日の生活を求める。だが政治家は、50年後、100年後の国を考えねばならぬ。この制度は、その両方を同時に実現する。ただし、議会の役割が極めて重要だ。我々は、民生投資を承認する際、本当に民の声を代弁しているか? 上意下達投資を監督する際、国家の長期利益を見極めているか? 議員の資質が問われる。」
《陸奥宗光(外務大臣)》
「国力投資で、海外の資源(石油、鉄鉱石、ゴム)への投資が始まっている。これは外交上も重要だ。資源を握る国との関係が強化され、日本の国際的地位が上がる。——ただし、これは諸刃の剣だ。投資先の国が不安定化すれば、損失を被る。慎重な選定が必要だ。」
《田中正造(足尾鉱毒事件)》
「民生投資で地方の病院や学校が建つのは良いことだ。だが、国力投資で鉱山や工場が拡大し、公害が広がっている。足尾の鉱毒を見よ。国家の成長が、民の苦しみを生んでいる。——投資の審査に、『環境への影響』も加えるべきだ。さもなければ、未来の日本は荒廃する。」
《ウッドロウ・ウィルソン(プリンストン大学教授)》
「日本の投資策定制度を研究している。彼らは『民主主義の遅さ』と『官僚制の傲慢さ』という、近代国家が抱える二つの病を、二つのルートを並走させることで克服しようとしている。——アメリカでは、ポピュリズムと利益団体の圧力で、長期的な国家戦略が立てられない。日本のこの制度は、我々が学ぶべきモデルかもしれない。」
《シドニー・ウェッブ&ベアトリス・ウェッブ(英国フェビアン協会)》
「日本の制度は、我々が提唱する『漸進的社会主義』の一つの形だ。革命ではなく、制度改革によって社会を変える。——ただし、日本の制度は『国家が全てを管理する』のではなく、『国民の声を汲み上げる仕組み』を持っている。これは我々の構想よりも民主的だ。イギリスの労働党も、この日本の経験から学ぶべきだ。」
《セオドア・ルーズベルト(米大統領)》
「日本人は『見えざる手』と『見える手』を同時に使っている。民間の自由な活動(民生投資)と、政府の戦略的介入(国力投資)が、互いを補完している。——アメリカでは、大企業が政府を支配し、独占が進んでいる。日本のように、政府が長期的視野で投資を行う仕組みがあれば、我々も対抗できるかもしれない。」
《ヨーゼフ・シュンペーター(オーストリア経済学者)》
「日本の『国力投資ルート』は、私が後に提唱する『創造的破壊』の国家版だ。政府が新技術・新産業に投資し、古い産業を淘汰する。——ただし、これは諸刃の剣だ。政府が正しい技術を選べれば成功するが、間違えれば莫大な損失となる。日本の官僚がそれほど賢明であり続けられるか?」
《厚生省の職員》
「民生投資の要望書を毎日読んでいる。『村に橋を』『町に病院を』『学校に本を』——どれも切実な願いだ。全てに応えることはできないが、できる限り優先順位をつけて実現したい。——これが『国民に仕える』ということなんだと、この仕事を通じて学んだ。」
《大蔵省の審査官》
「国力投資の案件を審査している。『新技術への投資』と聞くと夢があるが、リスクも高い。失敗すれば国民の積立金を失う。——厚生省は『未来のため』と言うが、私は『今の安定』も守らなければならない。この緊張関係が、制度を健全に保っているんだ。」
《女学校の教師》
「民生投資で、地方にも女学校が建ち始めています。これは素晴らしいことです。——でも、国力投資で軍需産業にも資金が流れていると聞きました。教育と軍備、どちらも必要なのでしょうが、バランスが崩れないか心配です。」
《新潟・農村の村長》
「村で話し合って、『灌漑用水を改良してほしい』と郵便局に要望を出した。数ヶ月後、厚生省から『予算が承認された』と連絡が来た。——まさか本当に実現するとは思わなかった。これまで、村の声なんて誰も聞いてくれなかったのに。この国は変わったんだな。」
《東京の職人》
「新聞で読んだが、国が『将来の産業』に投資してるらしい。電気だの化学だの、よく分からんが、息子の世代には役に立つんだろう。——俺たちの積立金が、孫の時代の日本を作ってると思うと、悪い気はしねぇ。」
お読み頂きありがとうございました
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