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第60話 接触、バイキング!

 海に出た。

 河口を下り、視界が大きく開ける。


 イースマスから眺める海は曇天だったが、こちらはとても気持ちよく晴れ渡っていた。


「うみーっ!!」


 ミスティが舳先に立ち、大きく手を広げる。

 彼女の足元で、アンデッド船からも骨の腕が何本も上がってきて、『ウミィーッ』と同じようなポーズをした。


 やっぱりこの船、意志がある……。

 まあ、フレンドリーみたいだからいいんだけど。


『アンデッドには生前の意志に似たものが簡易的に宿っておるからな。わしが魔将だった頃に鍛え上げた力よ。ゾンビどもは練が甘い故に陽光を受けると崩れ落ちていくが、こやつはわしが最近強化したものだから、何日も持つ』


「アンデッドって儚いんだなあ……」


『正確にはわしが作り上げた細工物だからな。これだけ動き回って一晩持つのは大したものではないかな』


『あぁ~、日差しがポカポカして気持ちいいですねえ~』


 ニトリアは甲板に寝転んで、陽光をいっぱいに受けている。

 あれはなんだろう。

 蛇が日光浴している?


 やはり蛇みたいな人なんだなあ。


「あはは、水が冷たくて気持ちいい!」


 パシャパシャと水を叩くミスティの足。

 アンデッド船が形を変えて、彼女を水面に近い所に寄せてくれているのだ。


「ぶもー」


『ウボァー』


 ライズとも何かお喋りしているなあ。


「じゃあなんで意志があるような動きをするんだろう」


『形あるものにはまがい物でも魂が宿る。わしが作り出した形代に、死者の魂が宿っておるのじゃろ。知らんけど』


 本人も原理知らないのか!

 こうして、アンデッド船は行く。

 

 傍目にはめちゃくちゃに目立つはずだ。

 真っ白で大きくて、帆もないのに海をぐんぐん進んでいく船。

 よく見ると、白い船のあちこちから腕やら足やらが生えて、もりもりと蠢いている。


 怖いよなあ。


「あれ? 船……うわーっ!」


 ミスティが悲鳴を上げてひっくり返った。

 彼女の頭上を、何かがぴゅーんと飛んでいった。


 矢だ。

 あっぶな!!


 俺は素早く、魔法の針を両替した。


「はい、ミスティ!」


「ご、ごめーん! 無用心過ぎた!」


 両替された魔法の盾を受け取るミスティ。

 矢の狙いは全然甘く、全く当たりそうにはないけれど。

 念のためだ。


 海の向こうに、幾つもの船が見える。

 帆を貼った大きな船と、それに従う小舟が幾つか。


 みんな距離を取って、こっちに向かって矢を射掛けてくる。


「なんだあいつら!」


『バイキングじゃのう。まあ、海の上を骨の船が蠢きながら這ってきたら、誰だって驚くであろうな』


 のんきだなあエグゾシー!

 あれ、どうすればいいんだ?

 これから向かうのは彼らのいるところだろ?


 だったら、傷つけてもいけないんじゃないか。

 俺が考えていたら、ニトリアがぬるぬるっと近くまで這ってきて、ニューっと起き上がった。


「うわーっ、不気味な動きを」


『むふーっ、わたくしが解決して来ましょう。話し合いですよ、話し合い。ちょっとエネルギーを補給しますね』


 ニトリアの言葉の後で、俺は顔に柔らかいものを押し当てられた。


「!?」


 不意打ちだ!

 ニトリアに抱きしめられているじゃないか!


「ニトリア! ウーサーはあたしのーっ!!」


 もぎゃーっと暴れるミスティ。

 だけど、降り注ぐ矢から実を守るために盾を手放せないし、その場も動けないのだ。


『フフフ……この機会にたっぷりウーサーくんをムギュッとさせてもらいました。できれば裸のお付き合いもお願いしたいところですが、それはまた今度……』


「そんなんあたしが許さないからね!!」


『うふふふふふ、こういう状況ならわたくしのほうが有利ですからねえ……』


 ニトリアが笑いながら、海に向かって進み出た。

 何本かの矢が彼女に突き立つかと思われたが……。

 それは、体にフィットした鱗のようなスーツをつるりと滑って行ってしまった。


 今気づいたけど、ニトリアには刺す攻撃が通用しないみたいだ。


 彼女は水面を滑るようにして進んでいく。

 そして、スーツのあちこちに設けられたスリットから、潜んでいた白い蛇たちが出現する。


 どれだけ矢が降り注いでも、ニトリアに通じないのだから問題ない。

 彼女はまったりとバイキング船までたどり着くと、ヌルヌルと這いながら上っていき、ついに侵入を果たした。


 船から、「うわー」とか「あぎゃー」とか声が聞こえてくる。

 そしてすぐに静かになった。


 小舟も蛇たちの侵入を許し、すっかり大人しくなっている。

 アンデッド船が近づいても、全く反応がない。


 そろーっと覗きに行くと、みんな腰を抜かし、宙を眺めてぼんやりしていた。


『ああ皆さん。ご覧の通り、話し合いで解決いたしました』


『ニトリアは工作が得意じゃからな。アホみたいな打たれ強さと、ほとんどの物理攻撃を受け付けぬ異常な防御力で、正面から侵入してこうして無力化する』


「やばいなあ」


 やっぱり彼女は十頭蛇なんだな。

 とんでもない人しかいない。


 それはそうと、大きな船も触って把握しておく。

 今度は帆船が作れそう。


「ウーサー! 船長さんがね、案内してくれるって!」


 いつの間にか、ミスティが話をつけていた。

 ニトリアによってぼんやりしている船長が、説得されてしまったか。

 いつ正気に返るかは分からないけれど、とりあえずバイキングの島まで連れて行ってもらうとしよう。 

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