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第23話 現れた敵

 ミスティの準備が整うまで結構待った……!

 だけど、彼女を一人にしておくわけにはいかない。


 魔剣鍛冶の里に侵入してきたやつが、もしミスティを狙っていたら目も当てられないもんな。

 守らねば!!

 俺は鼻息を荒くする。


「あっ! もしかしてあたしの着替えを想像して鼻息を……?」


「そっちじゃないよ!?」


 ミスティに変な勘違いをされてしまった。


「髪の毛の水分を吸わせてるので、頭に布を巻いたままで行くからね……」


「髪が長いの大変だなあ……。ミスティ、髪きれいだもんな」


「えっ、そう? ほんと? ふふふ……頑張ってきた甲斐があったわあ」


 ニヤニヤしながら、俺の腕をピシピシ叩くミスティ。

 凄く嬉しそうだな。


 こうして、かなりゆっくりと俺は動き出した。


 なんか、外で「ウグワーッ!?」と断末魔が聞こえた。

 誰かやられたか!


 それでも準備はきちんとしなくてはいけない。

 確認。俺の腰には魔法の針をたっぷり入れた革袋がぶら下がっている。


 これがあれば、戦う手段には困らないぞ。


 下の階に降りたら、宿の主人がガクガク震えて、扉の前にテーブルや椅子を積み上げているところだった。


「お、おいあんたら、外に出たらいかんぞ! モンスターだ! モンスターが外を歩きまわってる! いつも散歩してるじいさんが食われた!」


「マジでか!」


「かなり長生きしてちょっとボケてたからな。モンスターがいつもの散歩コースに入ってきたから、いつも里の客に怒鳴りつけたりしてたが、同じノリでモンスターを怒鳴ったら食われた」


「あー」


 恐れを知らないのは良し悪しだ。


「可哀想だねえ……」


 しんみりしたミスティだったが、


「ああ。生前はボケたふりをして女の尻を触るのが趣味のじいさんでな」


「天罰じゃん」


 おっ、スパッと気持ちが切り替わった!

 しばらく、宿の主人から死んだセクハラじいさんの思い出話を聞かされた。

 その間何をしてたかというと、俺が積み上がった椅子やテーブルをどけていたのだ。


 ふと思い立つ。


「あの、このテーブルと椅子幾らっすか?」


「あ、これ? えーとな」


 宿の主人が帳簿をめくっている。

 領収証が重なっているやつらしい。


「それぞれ銀貨三枚だな」


「高いなー」


 凄くいいテーブルと椅子じゃないか。

 でも、これでモノに触れたし、値段も分かったし。


「もしかしてウーサー」


「ああ、再現できる!」


 俺は積み上がったテーブルと椅子を銀貨に変えた。


「えっ!?」


 宿の主人が跳び上がって驚く。


「ちゃんと元に戻すから! 安心してくれ!」


「お、おう。お前さん……スキル能力者だったのか! それも、こんな不思議な力見たことねえ……」


 俺たちが外に出ると同時に、テーブルと椅子を元の形に戻しておいた。

 ぐちゃぐちゃに積み重なった状態になっている。


「よし、行こうか! ……暗くない?」


「暗い、怖い……」


 宿の主人に声をかける。


「ランタン貸してほしいんすけど」


「お、おう」


 テーブルの隙間から、ランタンが差し出された。

 ありがたい。


 こいつを受け取って、夜の里を歩く。

 道が広くなったところまで出てくると、月明かりで思ったよりも視界が通る。


 そこにはたくさんの人影がいて、そいつらがゆっくり歩いている。

 こいつらがモンスターか……。


「ゾンビじゃん!」


「ゾンビ!? あれってそう言う名前なのか。ゾンビドッグと名前似てない?」


「犬のゾンビだからゾンビドッグでしょ? んで、犬じゃないゾンビならゾンビじゃん」


「ぞ、ゾンビ……? 犬が? うーん」


「ウーサー! 混乱しないでー!」


 頭や肩や背中をぺちぺちされた。

 俺は正気に戻った!


「ミスティの話はなんか難しいことが多い……!」


「ごめんねえ。後でゆっくり教えてあげるから」


「おう! 今は戦わないとな!」


 すぐ近くまで、ゾンビが寄ってきた。

 動きは鈍いな。

 楽勝楽勝……。


「油断したらダメ! こういうの、こっちに気づいたら走ってくるんだから」


『もがー!!』


「うわーっ!? ほ、本当に走ってきた!!」


 黄色い乱ぐい歯をむき出しにし、襲いかかってくるゾンビ。

 俺は慌てて魔法の針を放り出した。


「両替!!」


 ゾンビの足元まで転がった針が、幾つものテーブルと椅子になる。

 ゾンビは勢いよく空にふっとばされた。


『ウグワー!?』


 すごい音を立てて、地面に落ちる。

 俺は机と椅子を武器に両替して、持ち直した。


「よし、とどめを……」


「ウーサー! 魔法か銀の武器!」


「あ、そうだった!」


 武器やテーブルを束ねて、魔法の短剣に作り変えた。

 これで、ざくっとゾンビに止めを刺しておく。


『ウグワーッ!』


 ゾンビが動かなくなった。

 本当に魔法の武器が効くんだなあ……。

 ゾンビの中から、真っ白な骨の蛇みたいなのが出てきて、地面に潜っていった。


「ねえウーサー、その……高そうな刃物に汚い汁がたくさんついてない……? それどうするの……?」


「あ、これか」


 ゾンビの体液みたいなのが確かに。


「両替!」


 短剣を金貨五枚に作り変えた。

 すると、ゾンビの体液だけがその場に取り残され、金貨は俺の手のひらの上。


「いけた!」


「便利ー!!」


 二人ではしゃいでいたら、その声は静かな夜に響き渡っていたようだ。

 周囲のゾンビが集まってくる!

 しまったあ。


 ちょっとずつおびき寄せて、確実に倒していくことにする。


 何体かのゾンビを仕留めたところで、ついに黒幕が現れた。

 俺が森の中で見た、ローブを着た人影だ。


「なんたること。魔剣鍛冶を確保して欲しいとの依頼を受けてやって来たら、せっかく私が作ったアンデッドを退治するような輩がいるとは……」


 ローブの中から、真っ白な蛇が這い出してきて、そいつの体の上を移動する。

 よく見ると、骨でできた蛇だ。


 倒したアンデッドたちの中にも、この白い蛇がいたと思ったけど……。


「全部お前がやったことか……!」


「いかにも」


 ローブ姿が頷いた。


「十頭蛇の二、『死人繰り』のエグゾシー。冥府への土産に覚えておくがいい」


 

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