表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/88

第83話 璃莉はどこ?

「今から君に再び命を与える。そして元の世界とはまったく異なる世界で生きてもらうよ」 

 

 唐突な発言に戸惑いながらも、私は理解に努める。

 再び命が与えられて、元いた世界とはまったく別の世界で生きる……。


「……え?」


 あの小説と合致するものがあった。

 そう、これは異世界転生。

 そんなことあるわけないと思いながらも、心のどこかで期待していた展開。

 つまり、璃莉に会えるかもしれないチャンスが、実際に訪れたというわけで……。


「あなた天使だったの⁉ これから私を異世界転生させるってわけよね⁉ 早く転生させなさい! あ、そもそもその世界に璃莉はいるの⁉ 璃莉がいなければ意味がないわ! ねえ、今璃莉はどこにいるの⁉」


「ちょちょちょちょ、ちょっと待って待って落ち着いて!」


「早く教えなさいよ!」


「教えるから服を引っ張らないで! あとちゃんと座って!」

 

 教えると言質を取った私は、一旦引き下がる。

 光る人間は「ったく、乱暴だな」と崩れた服装を整えながら。


「まずボクは天使じゃない。あんな下々と一緒にしないでほしいな」


「へえ、そうなの?」

 

 小説では天使が主人公を転生させていたからてっきりそうかと。

 でも一応天使も存在するらしい。下々呼ばわりされていたけど。


「ならあなたは何者?」


「ふふふ、よくぞ聞いてくれました」

 

 光る人間は席を立って、手を大きく広げた。


「ボクは太陽神。この宇宙において万物の頂点に立つ存在さ」


 自信満々に高らかと宣言しているが、イマイチ掴めない。


「その力は神の中でも圧倒的で、常任理事神達のトップ――」「わかったわ。次に移って」


「……君ね」

 

 太陽神にジトーッとした目を向けられる。


「一応そっちが尋ねてきたんだから、最後まで聞くのがマナーだろ。ボクについて知りたいこと他にもあるんじゃないの? なぜ神なのに人間の姿なの? とか、なぜ光っているの? とか」


「なぜ神なのに人間の姿なの? なぜ光っているの?」


「やっつけだな……。光っているのは生まれつき、代々太陽神の身体は光るものなんだ」


「了解」


「……この姿は見る人に合わせて変えるようにしていてね。元来ボクのような神に実体はない。今は君に合わせて人間の姿にしているというわけさ。ま、ボクはこの姿が好きだから、普段からこのままなんだけど」


「なるほど、もう終わったわね。じゃあ次に移って」


「……まあいいか」


 太陽神は嘆息した。


「えーと次は……『これから異世界転生するのか』って質問だったよね?」


「ええ、そうよ」


「概ねその認識で間違いないよ。姿や記憶もそのままで移動するから、厳密に言うと転移なんだけどね。転生のほうが言葉としてよく馴染むんでしょ? 別の世界でも、君は『転移者』ではなく『転生者』と呼ばれると思う」


「呼ばれると思うって、正体を大っぴらにしてもいいの?」


「ばらすもばらさないも君の自由さ。好きにするといい」


「わかったわ」と言うと、太陽神は「うんうん」と頷いて。


「いやーそれにしても若い子は転生の理解が早くて助かるよ。そういう小説があっちで流行ってるんでしょ? ボクも読んでみ」「早く、次」


「……はいはい、余計な話して悪かったよ」

 

 太陽神は肘掛けに頬杖をついた。


「次は……璃莉という子のことだったよね」


 私が一番聞きたかったことだ!

 椅子から立ち上がって太陽神へ飛びかかった。


「そうよ! 璃莉も異世界にいるの⁉ いるのなら早く私を転生させなさい! いないのならどうにかして会わせなさい!」


「おおお! さっきまでの塩対応と全然違うぅぅぅ!」


「あなた神なんでしょ⁉ だったら早く璃莉と会わせなさいよ! お願いだから!」


「く、詳しい話を聞くからまずは落ち着いてぇぇぇぇぇ!」


「落ち着いてなんかいられないわよ! すぐに会わせると約束しなさい!」


「ああもう! えい!」

 

 太陽神を揺さぶっていた私は、原因不明の強い力で後ろに引っ張られ、どこからともなく現われた勝手に動くロープで椅子に縛り付けられた。

 太陽神の力だろうか。


「はあはあ……君ね、あまり無礼を働くと会えるものも会わせなくしちゃうよ」


「うっ……」

 

 さすがにやりすぎた。


「……悪かったわよ」


「ふう、まあ、許すよ。君がなによりも璃莉って子を大切にしているのがわかったし、大いなる力を持つ者として寛大にいてあげよう。じゃあさっそく話を……いや……」

 

 太陽神は席を立って、縛られている私の額に手をかざした。


「こうした方が早い。ちょっと記憶を覗かせてもらうよ」

 

 記憶を覗く?

 太陽神はそんなこともできるのか。


「ふむふむ…………そういう動画を頻繁に見るのはあまり感心しないな」


「うっさいわね! 必要な情報だけ覗きなさいよ!」


「はいはい……なるほどなるほど……なんというか……君の最期は激動そのものだね……」


 激動、か。

 たしかにそうかもしれない。


「……」


「あっ、ごめん、今のはボクが無神経だった」


「……いいわよ。別に」

 

 太陽神は記憶を覗き終えたのか、自分の席に戻っていった。

 そして腰を下ろして、口を開く。


「君の最愛の恋人、城之園璃莉は異世界に転生している。死因が自殺だからね」


「え? 死因が関係あるの?」


 思いも寄らない言葉だった。

 太陽神は「ああ」と頷いて言葉を続けた。


「異世界に転生できるのは自殺者だけ。そして十代の自殺者はもれなく全員転生させることになっているから、異世界にいることは間違いない」


「じゃあ早く私を転生させなさい! 異世界のどこかにいるんでしょ⁉」


 はやる気持ちを抑えられず、大きな希望を抱いて発言したが、しかし太陽神は神妙な面持ちで、


「……それは少し違う」


 首を横に振った。


「え?」と首をかしげた私に、太陽神は希望を砕く言葉を告げる。


「異世界のどこかではなく、どこかの異世界だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ