第82話 暗闇と一筋の光
――おかしな夢を見た――
私の目の前に、黒みを帯びた赤・黄・緑の影。
そしてその奥には、黒より黒い邪悪で巨大な影。
それら4つの影がこちらに向かって睨みを利かす異様な状況。
けれど私は臆さない。
――夢の中の私はなぜか武装し、使命と闘志に燃えていた――
腰に差した剣を抜き、蜻蛉を取る。
絶対に勝つ。絶対に救う。
――なんのために勝つの? 誰を救うの?――
よくわからないけど決意を込めて戦闘態勢に入った。
そのときだった――
『よう』
後ろから声がして、肩を叩かれた。
振り向くとそこにいたのは……金髪で眉目秀麗な男。
だれ? この人?
でもどこかで見たことある……あっ!
【オレ様王子の異世界転生物語】
璃莉から借りて読んだその本の主人公にそっくりだ。
『あなた、何者?』
正体を尋ねると、金髪男はおいおいと言わんばかりに苦笑いした。
『俺のことを知らないって変わってるな。あっ、でもこう言えばわかるんじゃないか? 俺は――』
ここで目が覚めた。
……目が覚めた?
私に覚めるような目があるのだろうか。死んだはずなのに。
けれど今、意識があることはたしか。
ぼやけていたさっきの夢と比べて、今は五感も研ぎ澄まされている。
私は暑くも寒くもない真っ暗な空間で、仰向けに横たわっていた。
ここはどこだろう。
夢の中では色々と登場したのに、ここにはなんの気配も感じない。
立ち上がって辺りを見渡すが、どこになにがあるかまったくわからない。
いや、そもそも元からなにもないかもしれない。
この真っ暗な空間はもしかして、死後の世界か?
もしそうなら、こんななにもない空間で死ぬまで……。
いや、私は既に死んでいるから永久的に……。
真っ暗な中、1人絶望する。
ノイローゼを覚悟した瞬間だった。
「あーまた来たのか。ほんと日本って多いよね。国の仕組みに欠陥があるんじゃないの?」
どこからともなく聞こえる軽い口調。
さりげなく日本を侮蔑したが、だれだ?
「ちょっと待っててねー。今行くから」
またさっきと同じ声が聞こえた。
だれが来るというのだ?
キョロキョロと辺りを見渡していると、ふと、頭上から光を感じて視線を上げた。
「え⁉」
思わず声が出た。
空の上から、光る人間がゆっくりと降りてきたのだ。
光る人間、とは比喩表現でもなんでもない。
実際に身体から光を放っている。
その人間が地上に近づくにつれ、私の周りも明るく照らされる。
「こんにちわー」
へらへらした挨拶。
そして光っている以外は普通の見た目だった。
私と同年代くらいで、ユ●クロで買ったかのようなシンプルな服装に身を包んだ男の子。
髪の色は鮮やかな金髪、いや、光っているからそう見えるだけなのかな?
やがて地上に降り立った光る人間は、「えい」っと手をかざし、なにもないところに椅子を出現させた。
物語の世界で王族が座りそうな、装飾品がついて背もたれが不必要なほど長い椅子。
その振る舞いはまるで魔法をかけているようだった。
「あっ、君の分も用意するね」
光る人間はそう言って、私の方へ手をかざす。
「……」
出現させた椅子は、教室にあるような簡素な造りだった。
「さっ、とりあえず座って座って」
待遇の悪さに若干腹を立たせながらも、私は腰を下ろす。
光る人間も自身が出した豪華な椅子に腰を下ろし、私達は数メートルの間隔を空けて向き合った。
私をジッと見るなり、
「名前は月上京花、だね? 細かい話はさておき結論から言おうじゃないか」
「は、はあ……」
足を組み、にやりと笑って告げた。
「今から君に再び命を与える。そして元の世界とはまったく異なる世界で生きてもらうよ」
さて、物語が大きく動き出しました。
月上京花はこれからも奮闘します。
☆新作のお知らせ☆
実はついさっき新作を投稿しました。
タイトルは……『テレワークサボり女子の日常』です!
主人公は自堕落でバカでマヌケな23歳OL。
笑いを意識した日常系作品です。
テレワークをしてる方もそうでない方もお楽しみ頂けるかと思います。
※死人は出ません。
※異世界転生もしません。
※『え? 私、女の子が好きなの?』とは世界線が異なります。
第1話『飲酒』・・・投稿済みです。
第2話『アニメ鑑賞』・・・本日(2021年5月22日)の夜に投稿予定です。
よろしければ下記URL、もしくはページ上部の作者名からどうぞ!
URL→https://book1.adouzi.eu.org/n3031gz/
もちろん『え? 私、女の子が好きなの?』をエタらせたわけではありません。続きます。
次話もいつものペース通り次週投稿予定なので、その点はご安心下さい。




