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第81話 星降る想い

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……やってしまった。


 煮えたぎるような熱さの頭が冷めてゆく。

 それは冬の夜が運んだ風のせいではない。私は事を終えてようやく我に返った。

 目の前の肉塊と少し遠くにある肉塊。ふたつを交互に眺めたのち、目を逸らす。

 

 正直、悪いことをしたとは思っていない。


 あのふたりは許されないことをした、なんなら今でも許してはいない。

 目には目を、歯には歯を。そして、死には死を。

 簡単かつ自然な論理だ。


 だが……。

 

 私を知る者にはどんな顔向けができようか。

 両親、剣崎さん、師匠、特に先輩。

 

 先輩からは直接注意を受けていた。

 実力行使しようとした私を止めて、奮闘した挙げ句、未来が閉ざされてしまったのも先輩だ。

 そこまで世話になっておきながら、私は恩を仇で返すようなことをしてしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

 ここにはいない素晴らしき人達へ、謝罪の言葉を口にする。

 顔に付いた赤い液体を洗い流すように涙が溢れたのも、そのときだった。

 


















 















 ねえ、璃莉
































 私もそっちへ行っていい?




























 復讐を決めた時から、最期はこうしようと決めていた。

 たとえ素晴らしき人達が私を庇ってくれたとしても、璃莉のいない世界に未練など無い。

 

 昇降口の壁を沿うように曲がって、壁にもたれて座り込んだ。

 ここは璃莉と昼食を取っていた場所だ。

 見上げると、都会には珍しい満点の星空。

 冬の澄んだ空気がそうさせたのかもしれない。


「……璃莉」


 もし死後の世界なんてものがあるのなら、もう一度璃莉と会えるだろうか?

 でも天国と地獄に別れていたら嫌だなあ。

 閻魔様にお願いして、一目だけでも璃莉に会わせてもらおうか。


「……璃莉」


 仮に璃莉と会えたとして、そのときはどんな反応をされるだろうか?

 今日の事を知ったら、青ざめ、拒絶されるかもしれない。

 だが、それでいい。

 私はそれほどのことした。

 一目会えたのなら、それで満足だ。


「……璃莉」


 でも、でも、でも。

 もし受け入れてくれたのなら……。

 



























 璃莉



























 





 また私の、恋人になってくれる?





























 首に冷たいものを当て、躊躇なく押し込んだ。

 痛みはない。

 それどころか心地よかった。

 今までの思い出が星降るように現われて、私を包んでくれたからだ。

 走馬灯って、こういうのかもしれない。




 ――『初めまして! 城之園璃莉です!』――




 ――『かっこよくて美しかったです!』――




 ――『じゃあ……『お姉様』と呼んでもいいですか?』――




 ――『一緒に花火大会に行きませんか?』――




 ――『好きです。璃莉もお姉様が大好きです』――




 ――『璃莉を、お姫様にしてください』――




 ――『お姉様は璃莉にとっての特別です』――




 ――『嫉妬しなくて大丈夫ですよ。璃莉はお姉様だけのものですから』――




 ――『えっ……あっ……璃莉も、好き。お姉様が、大好き』――




 ――『お姉様となら、璃莉も、したいな……』――




 ――『だ・い・す・き』――






 璃莉と出会って、私の人生は劇的に変化した。


 恋の味を教えてくれて。


 私のことを好きだと言ってくれて。


 剣以外なにもなかった私の光になってくれて。


 璃莉といると、空はより青く、花はより鮮やかに見えた。


 そんな璃莉を、私は世界で一番愛してる。


 出会った頃から今に至るまで。


 ずっと、ずっと。




 思い出が星のように輝いて、優しい光を放つ。


 その中でも、ひときわ大きな光を放つ星があった。




『今日、丁度この本を読み終えたばかりなんです!』




 それは小説を貸してくれたあのとき。


 なぜこれが一番大きいのだろう? 


 はじめてきちんとおしゃべりできたから?


 私物を貸してもらえて、嬉しかったから?




 ……もしかしたら。




 私は期待しているのかもしれない。


 物語の中にあった、恋人と同じ異世界に転生する、そんな展開を。


 そんなこと、死後の世界云々より望み薄だ。


 でも、もしも、もしも奇跡が起きたのなら……。


 王子様がお姫様を探したように、私も命をかけて璃莉を探して、また会いたい。


 そして伝えるんだ。


 心の底からもう一度、『璃莉のことが、大好き』と。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 全部読んで追いつきました! これは…ひょっとして異世界転生フラグみたいな感じですかね!?(このまま終わると普通に悲しいから何か起こってほしいハッピーエンド主義者) [一言] 次の話で一…
[一言] ここからどうなるのでしょう とても展開が気になります。 異世界転生?それともやり直しかな....?
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