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1-90:80年目の秋です

ビルジットは、会議室に揃う官僚達の顔を見渡した。

秋を迎え、どの領地においても昨年以上の豊作を迎えていた。

先日の会議において、今年の冬における餓死者、凍死者はほぼ0に抑えられるとの報告がされた。

そして、今日の近隣の状況を報告する会議においては、外務、諜報を担当する部署のトップ達が集まっていた。そこに揃う者達は、先日の内務担当者の表情とはそれこそ天と地ほども違った。

蒼褪めた表情を浮かべる者、無表情の者、目の下に見てすぐわかる濃い隈を作っている者、誰も笑顔の欠片すら浮かべる様子は無い。皮肉に笑うなどといった者すらいない、皆そんな段階をとっくに通り過ぎてしまっていた。


「今回の会議に際しては、特別に軍部にも特別に参加して貰っている。外務卿の要請に基づいての事と了承して貰いたい」


国王の言葉に、一同は無言で了承を示した。

元々、今回の会議に軍部をと依頼したのは自分達であるのだ。そして、現状報告が始まる。

まず外務卿からの報告において、概要のみであるにも関わらず、軍部からも低い唸り声が聞こえた。

次に、諜報部による裏付け方向が始まり、その唸り声すらも止み、誰もが頭を抱える。


「それでは、我が国の近隣はどこも国家として成り立つかどうかという事なのだな」


「はい、特にフランツ王国においては・・・もはや国家として再起できるかという状況と思われます」


「フランツ3世が倒れたか、もっとも数ヶ月もすれば復帰はするだろうが」


「官僚の多くも倒れたとの事」


報告を聞けば聞くほど周囲の状況は厳しい。

自国においてもポートランド以外の領地においても魔族化が報告され始めていた。

もっとも、この魔族化はまだ通称でしかない。現在医療部において様々な調査研究が行われている。しかし、魔族化した者に対し人体実験を行う事は非常に困難であった。


「医療院における魔物の襲撃は収まったのだな」


「はい、その様に報告されています」


「トールズが言ったように、魔族化した者達には何らかの繋がりがあるっという事か」


「捕獲しました魔物に関してはそれ程の規制は見られませんが、ただいくら調べたとしても」


「ただの果実でしかない、という事だな?」


「はい」


諜報部の報告は淡々と続くが、どれも一向に有益な報告は出てこない。魔物の種類、その中において人型の物が最優先駆除対象である事は確認出来ている。しかし、その生態やなぜ人を襲うのか、そもそもなぜ動けるのか、何も解ってはいない。


「その他には、まだ未確認ではあるのですが、魔の森の南東にある小国家群において空から羽根が降り、その後に樹木が育ち始めたとの情報がはいりました」


「「「空からだと?!」」」


会議室にいる面々から驚きの声が上がる。


「新種っという事か?」


「まだ何とも」


報告をする者も、報告を受けた者達も一様に表情は暗い。

その後、更に幾人かの者達が報告を行った後、ユーステリア神教を担当する外交官から報告が始まった。


「わたしからの報告ですが、ユーステリア神教において動きが有りました。一昨年に教皇へと就任したビスモントですが、この度全土の信者に対し聖戦を呼びかける予定です」


「聖戦だと?!」


「はい、対象は魔の森の神樹!前教皇が魔族へと姿を変えた事は伏せられておりますが、各地の教会からの情報によって神国も根源は魔の森、それも神樹であると断定しました」


「それは、ある意味仕方がない事ではあるが、その神樹の力によって我が国の食糧事情は改善を見せているのも事実」


「はい、それ故に我々は動きづらいのではあります、しかし神国は別、それ故この度正式に我々が神樹と呼んでいる物を魔王と認定しました」


「「「!!!」」」


誰もが驚きに声が出ない。魔王とは、それこそ過去の歴史においても数例しか認定例が無い。

直近の歴史を踏み説いても、1000年程前に亜種族を率い人族と覇権を争ったエルフを魔王認定した1例のみである。

現在では、その歴史書、古文書の真偽すら疑われている書物だ。

しかし、今回の事で鬼族、エルフの存在は確認出来た。そして、それを生み出す存在と思われる神樹は確かに魔王と認定されてもおかしくは無い。

ただ、改めてその神樹の神力とも思われる力で、今やこの国も、それ以外の国においても作物の生産量が激増、回復の兆しを見せていた。その為、ビルジット達もその対応に非常に苦慮していたのだ。

その最中の魔王認定、その先には聖戦、生きる事にすら厳しい現実において、聖戦を行う余力は無い。ただ、聖戦と成れば愚かな民衆たちはどう動くのか、苦しい者達程踊らされる結果になりかねない。


「それで、我が国における教会はどう判断をするのだ?」


今まで、ただ黙して会議の進行を見定めていた国王が、初めて発言をした。


「まだ判断を保留しているようです。ただ、教会本部は異を唱える場合には破門、最悪魔族に組したと判断するとの見解を送りつけて来たようです」


「異教徒認定・・・か」


その後、多くの意見が交わされ会議は終了する。

そして、会議の3日後、フォールティア王国及び教会支部は事実認定の未だ定かでない段階の、安易な魔王認定を疑問とし、本部と距離を置くことを発表した。

ジルジット達の国の名前を初めて出した・・・はず?

前に書かれていないか確認したのですが、見当たらなかったので問題ないと思うのですが、もし書かれていたらご報告を><

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