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1-74:79年目の秋2

ふふふふふ~~紅葉にはまだちょっと早いですけど実りの秋が訪れましたよ?

なんか糸植物による世界ホラー化作戦は水際で食い止められたのです。

そして、平和な世界が戻ってきたのですよ!

世界が薔薇色に輝いているのです。若干、子供達から非難の視線が飛んできていますけど、あれはゾンビを作り出したあの子達が悪いのです。

ただ、予想外の事が!なんとあの時最後に作られた食虫花さんが、いまやエルフっ子ちゃん達の村で大事に育てられてるのです!上げ膳据え膳なのです!ずるいと思いませんか?

事の発端は、あのゾンビ撃退において最後に力を発揮した人族さん達が、撃退後にわたしの処まで現れたのです。そして、食虫花さんとご対面~~~大きさ的に言っても、あ、不味い?食べられちゃう?っと思ってドキドキして見てたのですが・・・なんと!良く解らないのですが鬼族の先頭にいた大きな人が突然食虫花さんに抱きつきました。


ほえ?もしかして、餌を誘因する匂いを出しているのでしょうか?

ただ、食虫花さんからは敵意などは一切感じられませんね。

じ~~っと見てたのですが、なんと!なんと!混乱したのでしょうか、鬼族の男の人は服を脱いで食虫花さんの大きな花の中に入っちゃいました。

投身自殺でしょうか?この世界は荒んでいますからね~。


そんな事を考えていると、数分でその人が花の中から出てきましたよ?あれ?溶かされてないですね?

その後、順番に皆さん服を脱いで花の中へと入っては出てを繰り返してます。


う~~ん、何をしているのか解りません。食虫花さんもまだ幼すぎてリンクできませんね。

ただ、特に嫌がっている様子は無いですしね。どちらかというと喜んでる?

ちょっとズームしてみましょう・・・・え?あ、あわあわ、ドキドキ、ふわ~~~す、すごいです。初めて見ちゃいました。・・・・じ~~~~~ごっくん・・・じ~~~~はっ!

え?何ですか、え?べ、別に男性の裸を見てたわけじゃないですよ!わ、わたしは淑女なのですから!

挙動があやしいですか?そんな事無いのです!

も、もちろん、ちょっと見えてしまった事は否定しないです、でも、それは不可抗力なのですよ?!

それに、わたしもお年頃なのです!いつかの為にちょっとお勉強もいるのですよ?そうですよね?

淑女の嗜みなのです!


そ、それより何となく何が起きてるか解ったのです!本当ですよ?ちゃんと調べてたのですよ!

どうやらですね、食虫花ちゃんが人族の体に着いた不要物を溶かして食べてあげてるみたいです。

鬼さんすっきり、食虫花ちゃん満足のWIN-WINの関係?

それと、これは近くにいる子供達の報告ですが、どうやら食虫花ちゃんはお酒を出せるみたいです。あれが誘因剤?になるのでしょうか?


お酒の匂いがするみたいですけど、こちらまでは届いてこないですね。

ちょっと残念です。お酒は前世でもあんまり得意ではなかったのでどうでも良いといえば良いのですけど。

とにかく、どうやら鬼族達はお酒目当てに食虫花ちゃんに餌?を与えているようです。


でも、どうやって意志疎通したのでしょうか?わたしでもまだリンクできないのに。


とにかく、そんな経緯があって、今では食虫花ちゃんはエルフっ子ちゃん達の村でアイドルになってます。

それはもう、すっごい崇められ方ですね、これはまたライバルを作ってしまったのでしょうか?!


あ、ついでなのですが棘付人型木の実さんですが、うん、まったく注目されていません。

可愛そうなくらいスルーです。特に害意が無いと攻撃してこないので皆さん放置です。


ちょっと可愛そうになったので、墓地の周辺で生育して貰う事にしました。

これでもしゾンビや糸植物が現れても大丈夫ですね!


◆◆◆


トールズは、ほんのりとした酔いに、至福の時間を感じていた。


「むぅ、美味い。体に酒精が巡るのを感じる」


トールズは思わず感嘆の声を洩らした。

この地へと来て酒など手に入る事は出来ていない、もっとも本国ですら今や酒を造る様な贅沢は許されていないのだが。

そして、先日の死人討伐において神樹様がご褒美を下された。

始め、この植物を見て戦闘にて気が立っていた自分は、咄嗟に攻撃を行いそうになった。しかし、植物から漂う独特の匂いに気が付いたのだ。

更には、植物が我々に敵意をもっていない事を直感的に察した。その瞬間、俺は植物に抱きつき、この香しい香りの元を必死に舐めとった。

あの時、口の中へと広がった感動は今もって忘れる事が無い。

一頻り舐めとった時、この植物もまた自分につく栄養を舐めとりたがっている事に気が付く。

トールズはすぐさま装備を外し、植物の花の中へと身を沈めたのだった。

後で思い出せば思慮のない行動であったやもしれん。しかし、その御蔭で今自分はこの酒を味わう事が出来る。それを思えば今でも、あの時の自分の行動を褒めてやりたいと思う。


もっとも、改めて見れば植物は不思議な形をしており、村の者の一部は食虫植物ではないかと警戒をしている。しかし、この目慣れれば愛らしいこの植物が決して自分達に害意を持っていない事はすぐに解るではないか。ましてや、酒を出してくれるのだ、多少の危険などまったく意味を成さん。

それが解らん者が多すぎる。ゾットルにして


「植物の意思をそこまで感じる事が出来るのは巫女様とお前くらいだ」


などと言う。まったく信心が足らんな。

とにかく、この村にあらたな楽しみが増えた事を喜ぼう。

あと、キルスがもう少しこの酒精を高める方法に成功してくれる事を祈ろう。


「ああ、それにしても美味い。おれは幸せだ」


そう呟きトールズは、植物から滴るしずくを盃に受けるのだった。


「ちょっと司令官!真昼間から素っ裸になるなってなんども言ったでしょう!」


トールズが声の発する方向を見ると、最近副官の一人になった女性兵士が正に鬼のような形相で睨み付けている。


「ん?しかしな、酒を貰うにはこの花に浸からねばならんのだぞ?」


「だ、か、ら、真昼間からなにやってるの?ねぇ?」


「む?お前は相変わらず可笑しなことを言う。酒を飲んでいる以外に何に見えるのだ?」


「ふ、ふふふ、あたしが可笑しいのかしら?」


次第に近づいてくる女性兵士の手には、所々黒ずんだ棍棒が握られているのが見えた。


「む、まて、お前は短気でいかん。仕方がないな」


トールズはそう言うと今まで浸かっていた花から外へと、一切合財躊躇の欠片も無く出る。


「な、な、な、」


先程の形相を一変させ顔を真っ赤にした女性兵士が棍棒を大きく振りかぶる。

しかし、タイミング悪くトールズは傍らに会った衣類へ手を伸ばしておりその動きに気が付かなかった。


「この変態が~~~~~~!」ドゴン!


凄まじい音と共にトールズは素っ裸のまま吹き飛ばされた。

女性兵士は顔を赤くし、その倒れたままのトールズを放置して何処かへと走り去って行った。


「うわ!意識がないぞ!」

「メーデー!メーデー!医療班はどこだ!」

「衛生兵!衛生兵!」

「くそ!この人なんで懲りないんだ?!」


吹き飛ばされたトールズは、治療が終わるまでその姿で放置された。その為、この頑丈な男が風邪を引いたかは誰も知らない。

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