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1-56:78年目の初春です

あた~らしい春が来た!まだちょっと肌寒いですが、春ですよ!

梅の花が満開で嬉しいです!咲かせたのはわたしですが!

日々の移り変わりに感慨深い樹です。

え?冬はどうしたですか?昨年の冬は特に問題も無く過ぎましたよ?

モコモコをいつも通り作ったくらいしか記憶には無いです。

何となく昔に戻ったようなのんびりした季節ですね。このままのんびり行きたいですね。


わたしがそんな事を思っていると、何そのフラグ?わざとなの?といった感じで何やら森の外が騒がしいです。

何が起きてるのでしょうか?空ではオオワシさん達の苛立った気配がバンバン飛んできます。

むぅ、他の動物さん達も慌ただしく森の中に走り込んでいきますね。


何が起きているのでしょうかと視点を変えて様子を見ます。

すると、人族の村で引っ切り無しに慌ただしく人が出入りしています。

何事でしょうか?うん、ハッキリ言って何にも解りませんね、村の中で育っている木が早くリンクして欲しいですね。そうすれば中の会話も・・・・えっと、そういえば言語まだ覚えていなかったですね。

仕方がないですね、ニュアンスだけでも電波で感じ取れば・・・えっと慌ただしいですね、忙しいですか、そうですね、それは見てわかりますよ?

もっとこう、具体的なイメージとか拾えないでしょうか?

う~ん、駄目っぽいですから放置で良いですよね?


わたしはわたしの道を進めばよいのです!今の時代は人との比較など意味が無いのです!相対評価より絶対評価なのですよ!という事で、とりあえずオオワシさん、何があったのですか?


え?結局聞くのかですか?だって他人様の事情には興味が沸くじゃないですか、そうでなかったら何で週刊誌や報道番組が流行るんですか?

とにかく、な~~に~~が~~おきてるの~~~?

しつこくオオワシさんにお尋ねしたら、漸くですが事情を聴くことができました。


何の事ない多くの人族がまたこちらに向かってきているそうです。


なんですか、そんな事ですか。わたしには関係ありませんね。という事でわたしはわたしで好きな事をしてれば良いのですね。

では、第何回か忘れた味覚開発トレーニングです!

さぁ目覚めるのです!集中ですよ集中!とにかく集中ですっと頭の中で必死に集中と唱えます。

うん、何か頑張ってる気がしませんか?


◆◆◆


「難民が大挙してくるようだぞ、受け入れるのか?」


「わかりません、今トールズ様達が会議を行って見えます」


「先触れや斥候はきたのか?」


「いえ、来ておりません。今回は護衛すら付いておりません。しかし、総数は最低でも万は越えると思われます。このままこの居留地で受け入れは不可能です!」


居留地の監視及び警備を担当しているサバラスは、こちらへ向かって来る移民達の対応に頭を悩ませていた。元々、彼はあくまでこの居留地における警備が主体であり、管理はそれこそトールズやゾットルの担当である。この為、無駄に騒ぐ事は無いと皆に指導していた。

併せて、本国から調査部隊が派遣される事は想定していた。ただ、この様な馬鹿げた数の人々が押し寄せる事は想定していなかった。


「北部で生き残れないと思われる者達を挙って送り込んできたのか」


「そのように思われます。ただ避難民自体も問題ではあるのですが、我々に生えている角も問題ではあると思います」


その言葉に、サバラスは最近あまり気にならなくなった自分の角を思い出した。もちろん、今この場にいる面々の角へも併せて視線を向けた。


「うむ、確かに拙い気はする。しかし、どう誤魔化すのだ?」


「さぁ?」


「おい、お前何気に無責任だな!」


「ですが、自分は判断する立ち位置におりませんし?」


報告する男をサバラスは睨み付けるが、相手は気にした様子すらない。思わずため息を吐く。


「おいおい、溜息なんざ吐いてる暇はないぞ?俺達より数が多いんだ、この村へ来させるんじゃなく以前の拠点跡で拠点を作らせる。問題は食料だな、碌な食料を持ってないはずだ、万単位の食料などどうすれば良いのか、これが秋口ならともかくなぁ」


入り口から入ってきたトールズが、サバラスへと声を掛けた。しかし、問題点はまったく解決される事は無い。


「いえ、それをどうするか会議されていたのでは?」


「馬鹿野郎!会議で食料が出てくりゃ毎日でも会議してりゃいいだろうが!」


至極もっともな事をトールズが言うが、やはり何の解決にもならない。


「森の生き物たちもピリピリし始めていますね。この角が生えたおかげで色々な事が解ります。しかし、それでもやはり何の解決案もありませんが」


「だよなぁ、木の実を干したのが残ってはいるが数が無いしな、結局は森で食い物探すしか方法は無いんだろうが、そうすると魔物との争いが怖いぞ?」


「ですねぇ」


「いっそのこと関わらずに自分達で生きろで良いんじゃね?」


「いえ、それは無理でしょう?彼らは恐らくこの村に行けと言われてますよ?」


「だってよ、お前角の生えた人間に声掛けれるか?無理だろ?俺だったら無理だな」


トールズの言葉にサバラスはそれもそうかと思った。自分とて様子を見はするかもしれないが情報を持って本国へ帰るだろう。もっとも帰るところがあればだろうが。


「まぁ難しいことはゾットルに任せるとして、最悪戦いになるからな、俺はそっちの準備をしとくわ」


思いっきり何の解決にもならない会話をしてトールズはさっさと外へと歩いていった。

それを見ながらサバラスはゾットルがどういう結論を出すのかを考えるのだった。


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