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1-54:77年目の秋です

収穫の秋です~~馬肥えて走れなくなる秋なのです!

秋を迎え、今年の木の実はどうしようと思案中の樹です!


え?夏はその後どうなったかですか?どうなったのでしょう?

気が付いたら秋だったわたしにそれを聞かれても?

ほら、集中してると時間が過ぎるのが早いって言いますから、きっと味覚をどうするかで真剣に悩んでたのであっと言う間に時間が過ぎてしまったのです!


秋の幸がいっぱいなので、動物さん達も、角あり人族さん達も、皆さんドタバタと走り回って収穫をしていますね。時々、捕食行動を見かけますけど、これも自然の摂理ですよね?そうしないと草食動物さんが増えすぎちゃいますし、それで植物全滅は怖いですしね。


それにしても、まだ半年ぐらいで森の中が明るくなりました。

前は木の足元まで光が届いていなかったのですが、今は心なしか森の中が明るく感じます。

下草もほんのり元気ですね。森の雰囲気が明るく感じられるので、動物さん達も心なしかウキウキしている気がします。

それに、なんか人族の人が住んでいる場所が整理されてきちんとした?村になってます。

丸太小屋みたいな家が数件しかまだ無いですけど、一応村を囲う柵も出来てますし。でも、あの柵では動物さん達には何の効果もないでしょうけど、作る意味あるのでしょうか?


興味深く眺めていると、村で一番大きな小屋からエルフっ子が出てきましたよ?

おや?何時の間に人族と交流を持つようになったのでしょう?狼さん達がよく許しましたね。

驚きを持って眺めていると、その家がちょっと他とは違う事に気が付きました。


ん~~?家なのに扉が有りませんね。それに、狼さんが何頭もエルフっ子に続いて出てきましたね。

鬼っ子達はいませんね、どこでしょう?


わたしが興味深く見ていると、エルフっ子がわたしを真っ直ぐ見つめ返してきます。

う~ん、やっぱりこの子はわたしの視線を感じる事が出来るみたいです。

そして、なんか健康体操?を始めましたね。

えっと、手を大きく広げてっでしょうか?屈伸は大事ですね。ぴょんぴょん飛んでますね。

なんでしょう?わたしがエルフっ子を見て感想を言うたびに、森の子供達から呆れたような視線が飛んできます。あ、エルフっ子が座り込みました。うん、息の上がり具合から見て疲れたのでしょうか?まだそんなに時間は経ってないので運動不足ですね!


え?お前が言うなですか?だってわたし運動しようにも動けませんよ?手足も無いですし、よく考えたら筋肉自体ないですよ?あれ?そう考えると脳もないですよね、たぶん。


・・・・わたしってどこの器官で物事を考えているのでしょう?


こら、子供達!あなた達だって同じなのですよ!


◆◆◆


「そっちの木は切っても良いぞ~、今日はあと2本に留めておくからな」


ゾットルは森の意思を確認しながら、一つ一つ丁寧に処理を指示していく。

角が生えてすでに二か月の月日が過ぎていた。そして、それ以前の記憶も無くなった訳ではない。それでいて、自分の身体機能を含め変化した諸々の事に対し不安も、嫌悪も湧かないのは絶えず語りかけてくる森の意思の御蔭であると感じていた。

そして、以前にあった他の者に対する敵対心や嫉妬、金銭欲、そういった感情が非常に薄くなっている事もただそういう物として受け入れていた。

それと同時に、今行っている作業において、森自体が喜びを感じさせる何かを発しているのを感じる事によって安らぎや喜びを覚えるようになっていた。

そして、その事に何ら疑問を抱くことは無かった。


「森自体が明るくなったのを実感できますね。森にいても以前のように圧迫されるような感じはしなくなりました」


元は軍の工兵をしていたという男が、ゾットルの隣で作業をしながら話しかけてきた。


「そうだな、以前は無秩序に木が伸びていた為、全体的に閉塞感のような物を感じたからな」


そう返しながらゾットルは意識を研ぎ澄ませ木々の声を聴こうとする。

現在、全員が森の木々に意思がある事を実感する事は出来る。しかし、その声を聴くことが出来るのは全体の1割程度の者達だけであった。

更にはこの森の奥に聳え立つ神樹様の声となると、不思議な姿をした子供一人のみという有様ではある。

その子供は、元々は一番最初の移民の子であったそうだ。しかし両親が死に、その後移民達と共にいる事に不安を感じ数人の同様の子供達と共に森の中へと入った。そして、今ではホーンウルフに守られながら森に住んでいる。

ある意味、我々を恨んでいても可笑しくない生活をしていると思う。それでいながら、ゾットル達が熱をだし倒れている事を知ると他の子供達と一緒に自分達の介護をしてくれていたのだ。

それも、すべては森と神樹様の意思に従ってとの事らしい。


わたしは、その事を知るとこの地を、そしてこの子供を守って行かなければという思いに駆られたのだった。神樹様の声を聴くことの出来る唯一の存在というだけではなく、まだ幼いながらも光り輝くその姿に思わず跪いてしまった。あの時、有りもしない後光すら見えた気がする。


わたしが今まで生きてきたのはきっとこの地で生きる為だったのだ!そんな思いが今もわたしの中で燃え盛っている。


「ゾットル!おい、聞こえてるのか?お~~い、このロリコン!」


「誰がロリコンか!」


トールズが先程から五月蠅く騒いでいる。この男はつい一週間程前に意識を取り戻したばかりだ。

それでいて非常に悔しい事だが、なぜかわたし以上に森の意思を感じる事が出来る。


「ああ、なんとなく森の意思と俺の意思の波長が合うっていうか、そんな感じか?」


「なんだそのいい加減な答えは!」


「いや、ほら、ほわ~~とした感じっていうか、なんというかよ、俺あんまり頭良くねえからな、上手く言葉に出来ないんだよな~こう感じろ?的な?」


その態度にイラッとした物を感じる。

思わず殴り倒したくなるのだが、わたしではこの男に攻撃を当てる事すら出来ないからな。それが一層悔しさを強める。しかし、おかしい、最近は余り感情的になる事は無くなっているというのに。

そう思ってトールズを睨み付けていると、何かが足元に触れた。


足元を見ると、角のあるリスがまるで私を慰めるように足をポンポンと叩いていた。

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