3-82:卵の実はピーチャンに押し付けましたよ?
サンドイッチ盗難事件でサンドイッチの安全性が確認できてないのです。その為、仕方が無いので木に生った卵の実は、そのままピーチャンさんに贈呈と相成りました。
お父さんとお母さんがお出かけしている間に、突然ピーチャンさんがやって来たんですよね。一応ですが、お役所でおとうちゃまには訪問する事は伝えてあるそうです。そこで、私は面倒になった卵の実を、押し付ける事にしたのです。
「俺達に、これをどうしろと?」
「安全かどうか確認して欲しいのです!」
そうです、最初っから任せちゃえば良かったのです。エルフさんとかも居るのですから、魔法とか何かそういう物で安全かどうか判断できると思うのです。
「・・・・・・で? これは何だ」
「卵なのです!」
自信をもって宣言しました。すると、ピーチャンが何故か私のほっぺたを両手でムニムニします。
「だ、か、ら、何の卵なんだと聞いてるんだ! こんな目玉のある卵など見た事が無いぞ!」
「むにゅぅ」
ほっぺたをムニムニされて、お返事が出来ませんよ? で、ようやく解放された所で、改めて説明するのです。
「卵の木の実に生った卵なのです!」
「・・・・・・意味が解らん」
その後、説明がてら卵の木を見て貰って、漸く納得してくれたのです。
「はあ、お前は大人しくするという事が出来んのか? 先日の毛虫モドキもまだ解決しておらんというのに」
「この卵は害が無いはずなのですよ? よく考えたら、イツキちゃんが食べるの前提で生まれたのです。それなら多分安全?」
ただ、それでもやっぱり裏付けが無いと食べるには勇気がいるのですよね。もし、目玉なんかが無ければ、とっくに食べていた自信がありますよ?
「まあ、教会の連中に渡せば何とかなるだろうよ。あいつらが食べるのか、他に何か考えるのかは判らんが、これだけ数があれば大丈夫だろう」
籠に入った10個の卵を、ピーチャンさんにズズイと渡しました。そんな物いらないと言われなかっただけ良かったのです。
「でだ、本題に入りたいのだが?」
「本題です?」
可笑しいですね? もう本題は終わったと思うのですが?
私が首を傾げていると、ピーチャンがまたもや私のほっぺたを両手で挟んでムニムニしました。
「お、れ、が、き、た、の、は、な、ん、で、だ?」
一音、一音、区切って話すピーチャンさんです。ただ、卵を取りに来たのだと思いますよ?
「うにゅぅ」
ほっぺたをムニムニされて解放された私は、お顔が歪んでいないか両手で確認するのです。
「お顔、歪んでない?」
「ああ、根性は歪んでるがな」
何か酷い言われようです。こんなに純粋な心の持ち主は、そうそういないと思うのです。根性ですか? ハッキリ言いましょう。根性は無いのですよ! 今どき根性論は流行らないのです!
ぷっくり頬っぺたを膨らませていると、ピーチャンさんが一通のお手紙を差し出してきました。
「ん? これは何なのです?」
「召喚状だ。今回は残念ながら引っ越しではない。漸く首都の態勢が整ったらしい。それで、一度顔を出して欲しいとの事だ。本当に残念だが、数日滞在したら此処に戻って来る」
何でしょう? やたらに残念とか、引っ越しとか強調しますね。
「ツンデレさんですか?」
「ち、が、う! 何処を、どうすればそう捉えられるんだ!」
お顔を真っ赤にして叫ぶピーチャンさんですが、うん、これは図星でしょうか? 拙いですね。まさか、ピーチャンさんのロリコンさん疑惑が発生してしまいました!
「えっと、お友達からで良いですか?」
「だ~~~~~~! 貴様! 何を考えた! な、に、を、か、ん、が、え、た!」
うん、ツンデレここに極まれりですね! イツキちゃんピンチでしょうか?
そんな風にピーチャンさんで遊んでいると、おかあちゃまが帰って来ました。そして、騒ぐ私達を見て、「あらあら」と言いながら台所に行っちゃいました。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私とピーチャンさんは、二人してその後ろ姿を見送った後に顔を見合わせます。
「お前の母親も良く判らんな」
「おかあちゃまは素敵なのですよ? 不倫は駄目ですよ?」
「いい加減にしろ!」
またもや頬っぺたムニムニされます。何かピーチャンさんは、私の頬っぺたがお気に入りなのでしょうか? ただ、そろそろ私の頬っぺたも真っ赤になってませんか? もちろん照れてとかじゃなくて、痛みからですよ? ヒリヒリしてきましたよ?
「わざわざ来ていただいて、どうぞ、お茶ですが」
そこで、おかあちゃまがお盆にお茶と、ジャガイモさんのお菓子を持ってきました。これも、最近我が家のブームなんですよね。ポテトチップスじゃないですよ? 蒸かしたポテトをベーストにして、はんぺんみたいにして固めた後に揚げるんです。
何って言うのか名前は忘れちゃいました。
「お構いなく。仕事で来ておりますので、こちらをご確認ください」
そう言ってピーチャンさんはおかあちゃまに召喚状を差し出します。そこで、おかあちゃまが召喚状の中身を確認しています。
「うまうま、うまうま」
私ですか? 私はお皿からジャガイモはんぺんを手にしてお口に運んでいますよ? 塩味が絶妙に聞いていて、おやつに最適なのです。
「・・・・・・」
そんな私を、何か残念な物を見るように見下ろしてくるピーチャンさんです。
早く食べないとなくなっちゃいますよ?




