2-75:新たに始まる非日常?2
お肉獲得大作戦を一晩使って考えたイツキさんです。
肉肉しい樹はとにかく見送りで、でもお金を稼いでもお肉自体がなければ意味が無いのです。難題です。
おかげで、昨晩はお布団に入ってから10分も悩んじゃいました!
な、何ですか!子供は寝る事もお仕事なのですよ!成長ホルモンが分泌されなくて、ボンキュボンになれなかったらどうするのですか!
とにもかくにもお肉獲得大作戦は今頓挫しているのです。何か良い方法は無いのでしょうか?
「う~~~ん、そもそも牧場経営が難しいのですよね?大型肉食猫さんとか、他の肉食さん達が食べちゃうから、放牧が出来ない。鶏さんはそもそも鶏舎自体がないですし、飼料の確保も難しいのかな?」
むぅ、問題は山積なのです。でも、でもですよ?もしここで牧場経営が出来れば、又は養鶏場経営でもですが、そうすれば大儲けなのでは?だって、供給が追い付いていないので売り手市場なのですよね?
「飼料はなんとかなる気はします。草食の方達の餌なら作れるし、問題は家畜の警護?」
目の前で行われている、ジャガイモさんと挑戦者たちの戦いを見ながら・・・これいけるんじゃない?と思い立ちます。ただ、ある意味草食?の代表であるジャガイモさんが肉食の方達と戦えるかが問題なのですが、見ている限り問題なさそうな気がするのです。
「そうすると、あとは場所と肝心の家畜さんの確保ですね?う~~~ん、まずは鶏さんの有精卵を買って、卵を孵す事からでしょうか?」
そもそも、卵が売ってるのでしょうか?というか鶏・・・うん、見た事無いかな?でも、鶏肉っぽいのは売ってるし、でも、まさかあれは大きなカエルさんとかないよね?
中々に怖い考えになってきたところで、大鷲さんとか居るし、何らかの鳥はいるから大丈夫かな?と思えたので、とにかく鶏の卵を目指してみる事に。でも、有精卵と無精卵って見てわかるのかな?うん、まぁそこはまぁプロにお任せをしましょう。
テッテケ、テッテケと小走りに走って、お母さんの所へと向かいます。もちろん、今日収穫のジャガイモは籠に入れて持ってますよ・・・薬草さんが!ジャガイモの運送に慣れてきた薬草さん達は、籠を危なげなく運んでくれます。それなので、わたしはその後ろに走っているだけです。
「おかあちゃま、ジャガイモ持ってきた!」
「イツキちゃんありがとうね、そこの脇に置いておいてくれる?明日早くに売りに行くから」
「は~~い」
持ってきた?籠を、玄関の脇スペースに置きます。これで私の今日のお仕事は終了です。
これはから楽しい楽しい趣味のお時間なのです!
「ねぇ、おかあちゃま、鶏さんの卵って市場で安く売ってる?」
「え?卵食べたいの?」
「違うの、鶏さんが欲しいから、卵から育てるのです!」
「あら、卵から?・・・う~ん、卵から雛・・・どうなのかしら?う~ん、確かに卵の方が安いけど、孵化しなければ大損だし・・・」
う~む、何やらお母さんが悩みはじめちゃいました。卵だって我が家にとっては安い物じゃないですしね。
鶏さんになれば雄でも雌でも元は取れるとは思うけど、孵らなければ腐っちゃって卵自体すら食べれないもんね。
「そうねぇ、とにかく鶏さんを飼ってる人の所に行ってみる?もしそんなに高くないなら雛を買うほうがいいかも?」
成程です。リスクを考えるならその方がお得です?もっとも、お値段しだいなのでしょうが。
という事で、お母さんと卵を売っている人の所に情報収集へ向かいます。
「えっと・・・ここは市場ですよ?」
お母さんに連れられてきたのは街の中央にある市場です。我が家が普段ジャガイモさんを売ってる広場よりも高級な食材を売ってる、露店じゃなく屋台みたいな物で売ってる高級店出店の広場なのです。
「ええ、卵はここで売ってるから。でも、まだ販売してるかしら?売り切れちゃうと引き上げちゃうから」
お母さんに手を引かれてどんどん中央へと向かいます。
でも、私は鶏よりも周りで販売されている物に興味津々なのです。
うわぁ、あれはブドウみたい、あっちはリンゴ?でも色がちょっと変かな?ここで売ってるという事なら高価なのかな?それなら果物を主に作った方がいいかな?
目に映る物を見ながら、今後の快適ライフに向けての計画が降っては消え、降っては消えしていきます。
「イツキちゃん、ほら、キョロキョロしてると危険よ、お母さんとお手てを繋ぎましょうか」
そう言って差し出された手に急いでしがみ付きます。フラグを立てたりしたら危険なのです。ここで迷子に何かなったら、絶対に誘拐されたり、事件に巻き込まれたりするのです!絶対にお母さんから離れてはいけないのです。
決死の思いでお母さんの腕にしがみ付きながら、市場の中央へと辿り着きます。すると、目の前には空っぽの屋台を片付けているおじさんとおばさんが居ました。
「あの、すいません、ちょっとお尋ねしたいのですが、鶏屋さんですか?」
「ん?なんだい?悪いけど今日持ってきた分は売切れちまったよ?御蔭様で肉も卵も完売さ」
おばさんが手に持った空っぽの籠をこちらに見せてくれます。うん、見事に空っぽです。
「あ、はい。そうではなくてこの子が雛を飼いたいと、それでお値段はお幾らくらいなのかと」
「ん?雛を?」
「うん、雛さんが欲しいのです!」
おばさんは怪訝そうな、不思議そうな顔でこちらを見ました。そして、私とお母さんの顔を見て、溜息を吐きます。
「悪い事を言わないから止めときな。肉になっちまってるから解んないんだろうけど、鶏は危険だよ。子供が飼育するなど無理さ、ましてや純人族なら逆に餌にされちまうよ」
最後には苦笑を浮かべるおばさんに額には、大きな一本の角が生えています。
むぅ、確かに鶏さんは危険だと思います。前前世でのテレビでは足や手を突っつかれて血を出している人もいました。でも、おばさんの言葉は、何かそれ以上の印象を抱かせます。
「えっと・・・もしかして大きいの?」
「そうだねぇ、まぁ大人の鶏はお嬢ちゃんくらいの大きさはあるね、更に凶暴と来てる。なんであれで魔物じゃないのかと私らはいっつも首を傾げてるさ」
そう笑いながらおばさんは片付けをまた始めます。
「イツキちゃん、どうする?」
お母さんがそう尋ねます。でも、ここでハイ、そうですかと引き下がるのも何か違うと思いますし、どうしましょう?
うんうんと腕を組んで悩んでいる私に、会話に混ざらず黙々と片付けをしていたおじさんが私達に声を掛けました。
「そんなに気に成るなら一度遊びにおいで、この街から南へ1時間・・・う~ん、お嬢ちゃんなら2時間かな?くらい街道を下って左側にある村がうちの村だよ。そこで実際の鶏や雛を見て考えてみたらどうだ?」
「え?行っても良いの?」
「ああ、ただ腕の立つ大人と一緒にが絶対条件だ。どうしても鶏を捌く過程で血の匂いがしちまう。それで狼や野犬、魔物なんかも寄って来ちまうからな」
そう言うと、おじさん達はガタゴトと屋台を引いて広場から出て行きました。
でも、これってこの世界での養鶏場を見る絶好の機会ですよね!
これは・・・まだ日常パートな気がします・・・よね?
この後の展開はイメージ出来てるんですが、そこまで中々辿り着かない罠なのです!




