2-39:角付さんとの遭遇~~
トテトテトテ・・・ズル!・・・トテトテトテ・・・コケッ・・・トテトテ・・・
お母さんに手を繋いで貰っていなければ、いったい何回くらい転んだんでしょう?歩くたびに地面の微妙な段差や、泥濘などに足を取られて転びそうになっているイツキです。
「ううう、不思議なのです。森の中よりちゃんとした道を歩く方が転びやすいのです」
特に周りへと意識を取られる事も無く、足元を注視しながら歩いているのにこの状態・・・謎です。
「イツキちゃん、疲れてるんだと思うけどもう少し頑張ろうね」
「大丈夫!疲れてないよ?」
お水を飲んで、しっかり寝たから実際に疲れは抜けてるんですよね。
日陰でもお昼寝効果はしっかりと出るのです。
ただ、残念ながらお父さんが森の中で集めてきたのは草ばっかりでした。
タンパク質はゼロだったのです!あ、あと細い用水路?にいたタニシみたいなのが数個!
それをお水でぐつぐつ煮て食べたんですが・・・うん、美味しくないのです。苦味?えぐみ?とにかくちょっと食べれないわぁという事で、お父さんとお母さんにお譲りしましたよ?
ただ、その日は結局そこで一泊して、朝から街へ向かって歩きはじめました。
もっとも、そろそろお空の真上に太陽さんが燦々と輝いています。ハッキリ言ってもうじき冬とは思えない暑さですね。もっとも、寒いより暖かい方がありがたいような気はするのですけど。
「むぅ、朝から誰も見かけないね~」
「そうね、でも人影を見つけても気をつけるのよ?みんな良い人とは限らないからね」
うん、言いたい事は解ります。ほら、こういう時の定番は盗賊さんなのですよね?
やいやい、ここを通りたければ金を出せとかですよね。
そんな事を考えながら歩いていたら、遠目に何かが見え始めます。
「う~んと、あれが町?」
お母さんを見上げて尋ねますが、どうも反応から町ではないみたいですね。
町はどうやらまだまだ先に有るみたいです。ではあれは何なのでしょう?
「エリーゼ、聞いていた話ではあんな物は無かった。とにかく気をつけてくれ」
「ええ、でも・・・」
見渡す限り両側とも畑ですね。ましてや刈取りの終わった麦畑です。う~~ん、どこにも隠れる所などないですから、馬とかで追いかけられたら絶対に逃げられませんよね?
もっとも、私では馬でなくても追いつかれる事になると思いますけど。
そのまま、お父さんを先頭にして進んでいきます。で、前に有る物はどうやら3mくらいの高さの櫓みたいな物です。
上の方に二人ほど人がいて、どうもこちらを注視しているみたいですね。
で、その櫓を囲う様に木で作られた柵がありますけど、もし戦争とかで攻められたら1時間も持たずに壊されそう。まぁ防衛拠点では無いのでしょうけどね。
「こちらに敵意はない!街へと仕事を探しに向かている所だ!」
櫓にいる人に届く様にお父さんが声をあげます。
でも、さっきから気が付いているんですけど・・・あの人達って角あるよね?
「おかあちゃま、あの人頭に何か生えてる?」
まだ遠目ではっきりしないですけど、何となく角が有る様な?
ただ、お父さんもお母さんも緊張の度合いが鰻上り?お母さん手が震えてるような?
「こ、こちらには敵意は無い!」
お父さん声が震えてますよ?
そんな私達に向かって、建物の後方からバラバラと5人くらいの人達が現れました。
見た感じ後ろ側に出入り口があるのでしょうか?
「悪いが、そこで止ってくれ!」
うん?何か熊さんと言っても良いくらい体の大きな人が前に出てきます。で、手には棒を持ってる?どっちも尖ってないから棒だよね?
で、なんか先程から頭の中に、何かザワザワする感じがしますけど・・・なんでしょうこれ?
う~~~ん、すっごくわずらわしい雑音が鳴ってる?って感じです?
「ふむ、どうやら純人族の方達かな?」
「そうです、西の海岸から先に有る島から来ました」
「ほう、島からですか」
熊さんの後ろに居る人達を見ますけど、どの人もあんまり警戒した感じはしません。
何となく珍しい珍獣を見るみたいな眼差しに近い気がしますが、気のせいでしょうか?
「奥方と子供を連れてここまで来られるとは、お疲れでしょう。我らの事を気にされないならそこの砦で休憩されると良い。その後に荷馬車でよろしければ町までお送りしましょう」
熊さんの言葉に、お父さんとお母さんは顔を見合わせました。
で、その後にお母さんが此方へと視線を向けるので、ニパッ!っと笑顔を向けます。ほら、熊さん何か怖くないですよって意思表示しないとです。
「ありがとうございます。ただ、まだ幼い子供がおりますので・・・」
「あの、子供の分だけでも良いので、何か食べ物を分けていただけないでしょうか?」
「ふぇ?おかあちゃま、イツキはお腹すいてないよ?大丈夫だよ?」
お母さんが私の頭を撫でてくれるのですけど、何となく角付さん達の視線から隠すようにしてる?
角付さん達からはそこまで悪い感じは受けないのですけど、やっぱり亜人さん差別がここにもあるのかな?
「ふむ、まぁそうですなぁ・・・・」
何やら考え込む熊さんを見ながら、わたしは未だに震えているお母さんの手をしっかりと握ります。で、びっくりして私を見るお母さんに又もやニパッっと笑いかけます。お母さんも私の笑顔で少し落ち着いたのか、漸く手の震えが納まりました。
「ふむ、わかりました。今から荷車を出せば、何とか今日中に町へと着くでしょう。あと、食料は干しパンと干し肉しかありませんが、それなら荷車の上でも食べれるでしょう」
そう言うと、熊さんは砦へと戻って行きました・・・けど、これって砦って言うほど立派じゃないよね。
う~~~ん、囲いを作った見張り台?でも、この見張り台って何を見張っているんだろう?
次は漸く町に!・・・
着けると良いなぁ(ぇ
着けるんじゃないかなぁ(ぅ
もしかしたら着けないかも?(ぁ




