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2-35:疲れた時のお水が美味しいのです。

トコトコトコ・・・クルリ・・・ウルウル・・・トコトコトコ・・・クルリ・・・ウルウル

翌朝早々にも村を追いだされているイツキちゃん一家です。

本当にもう追い出されるという言葉がそのまんまなのですよ?

昨日の夜に用意した持ち物だって半分以上が没収されちゃったのです!

島から持っち来た物も容赦なく、村に迷惑を掛けたのだからと意味不明?何とか水袋の水は盗られなかったのですが、僅かにもっていた換金しやすそうな物はみんな没収されたのです。


「イツキ、ほら前を向いて歩かないと危ないですよ?」


「でも、みなさん酷いのですよ?」


お母さんにそう反論するのですが、お母さんは苦笑するのみなのです。

お父さんも何も言わずにただ無言で先頭を歩いています。


「これから向かう街は大きいから大丈夫」


笑顔を浮かべるお母さんですが、私達ってある意味難民なのですよね?遠い記憶を辿っても、とても大丈夫な気はしてきません。でも、この村にこのまま居るよりは良いのでしょう。

それに、せっかく仲良くなったお友達たちは、誰一人として見送りに来てくれませんでした。

日の出から早々での出立なので、無理もないのかも知れないけどすっごく寂しいです。


またもやテクテクと森の中を歩き続ける苦行が始まりました。

もう5歳を過ぎたのですけど、未だに歩くのは不得意で良く躓きます。何故なのでしょう?前世の呪いとかあったら嫌だなぁ、そんな事を思いながらもテクテクテクテクと歩きます。


・・・・あれ?なんか後ろから視線のような物を感じます。これも前世で良く感じたような?

お母さんに手を曳かれながら、頭だけぐるんとさせて後ろを伺うと・・・おお、ちょこちょこと雑草さん達がいっしょに移動しています。何でしょう?葉っぱを持ち上げるようにして根っこが前へと踏み出される姿をみてると、丈の長いスカートを足で踏まない様に持ち上げて歩いている情景を彷彿させます。

うん、何か見てて違和感いっぱいなのです。

でも、雑草さんみたいに器用に歩けていれば・・・むぅ、過去の失態が汚点となって私に圧し掛かって来るような気持ちですか?


「こら!イツキ?だから前を向いて歩かないと危険なのよ?さっきからふらふらしてる」


「ごめんなさいです」


またもやお母さんに叱られてしまいました。

しかし、たった数日でどこまで雑草さんは数を伸ばしたの?

まぁどれだけ増えたとしても所詮は雑草さんですけどね。


それと、最近は雑草さん達の意識?気持ち?感情?なんと言って良いのか解らないのですが、何となくこう思ってる?っていうのを感じ取れるようになってきました。

そんな雑草さん達は、相変わらず私と目が合うとニパッ!ニパッ!と満面の笑顔を向けてきます。

最近では何となくこの笑顔を見ると安心しちゃうのはナルシストさん?

ただ、そんな風に気持ちを盛り上げようとしても、だんだんと疲れは溜まるのです。

むぅ、唯でさえ以前の疲れだってまだ残っているのです。此のままではイツキちゃんは早々にダウンですよ?


「イツキ、もう少し先へ行けば水場がある。イツキは良い子だからそこまで頑張ろうな」


「はい、がんばる!」


元気を装って答えますけど、良い子だって悪い子だって限界は変わらないと思うのですよ?

そんな事は言わないですけど、でも水場かぁ、いっぱいお水が飲めるのは嬉しいのです。頑張って歩くのです!


テクテクテクテク・・・・


うにゅ、もう少し先ってあとどれくらいなのでしょう?もう1時間くらいは歩いている気がしますが?

でも、ここで何かを言っても残りの距離が変わる訳ではないのです、なおで少しでも体力温存の為にも無言なのですよ?


・・・・・・テクテクテクテク・・・・・


でも、そういえば何でお父さんはこの森での水場を知っているのかな?だって此処へ来るときは結構当てずっぽうでしたよね?謎ですね、不思議ですね、でも、お父さんは先ほどから何かを確認しながら歩いています。だから嘘ではないのだと思うのです。でも、そろそろイツキちゃんは厳しいですよ?


何となく頭がぼ~~っとして来たかな?って思った時お父さんが立ち止まって一本の木を手で触って何かを確認している事に気が付きました。


「あなた、イツキちゃんがそろそろ厳しいの、ちょっと休憩を入れれない?」


「ん?ああ、すまん!水場をまず確認しないとと焦っていた。今水場への目印が確認出来たから、イツキに水を飲ませてやってくれ。少しここで休もう」


「ええ、イツキちゃん頑張ったわね~、お水を飲みなさい、あ、ゆっくり飲むのよ?」


休憩と聞いてストンと座り込んだ私に、お母さんは水袋から木の器に少しお水を入れて渡してくれます。


「はぅ、お水が美味しいです」


喉から胃に行くまでに体にお水が吸い込まれて行ってる気がします。

でも、少しでもお水を飲むことが出来て、萎れていた葉っぱが起き上がるように元気が沸いてきます。やっぱりお水は大事ですね!

お母さん達も器に少しお水を入れて飲んでます。水場が有ると言ってもまだ未確認ですから仕方がないですね。


「水場が確認出来たら、その付近で今日は野営しようか」


まだお昼を過ぎたぐらいかな?でも、森の中では日暮れから夜まではあっという間に変化します。だから早めの準備は大事なのですよね。

それから30分くらい休憩して、その後一時間くらいかな?歩いて漸く湧水が沸く場所に辿り着けたのです。


「ここはジャベールが教えてくれたんだ。知らなければ森で野垂れ死んでも可笑しくなかったかもな」


「ジャベールおじさんが教えてくれたの?」


「ああ、だからイツキもちゃんとジャベール達に感謝するんだぞ?」


お父さんが笑いながらそう教えてくれたのです。

陽が沈み暗闇が辺りを包み始めた中、親子三人で一つの毛布で包まりながら寝ました。毛布が一枚しか持ってなかったのです!でも、焚火からの熱と、家族の温もりで十分暖はとれるのです!


イツキが深い眠りについた頃、イツキ達の周囲を囲んでいた雑草さん達がざわざわと葉を揺らし、何かを警戒するようにざわめいていた。イツキ達が出てきた村のある方向に向け、森の奥から無数の何かがざわざわと地面を黒く塗りつぶすように蠢き進んでいく。ただ、その何かは雑草さん達を避けるように進み、その為イツキ達はその事に気が付く事はなかったのだった。

感想でずばっとこの展開を読まれていましたw

ともかく、イツキは無事です!(ぇ

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