2-26:とにかくご飯が食べれました
がじがじがじ・・・・ごっくん。ふにゃ。
かりかりかり・・・・ごっくん。ふにゃにゃ。
あ、目の前にある梨を一心不乱に齧ってますイツキです。うん、やっぱり秋と言えば梨ですよね。
何と言っても瑞々しさが違います。このあま~~い水分に魅了されちゃいます。
林檎や柿も嫌いではないのですが、やっぱり秋の果物は梨が一番です!異論は受け付けますよ?
でも、まずはそんな事より目の前の梨を齧る事が最重要なのです!
かじかじかじかじ・・・・ん?何か視線を感じます?
横を見るとお父さんとお母さんがいますね。うん、座っている椅子はクッションが欲しいのと、足が下に着いてないのでぶらぶらしてますね。で、今いるのは連れてこられたお家なんですが、なぜかルテクさん達とは別のお家に連れてこられたんですよね。う~~ん、危険分散?
ただ、お父さんがこのお髭さんと親しそうな素振りです。最初に会った森の中で抱擁までしてましたよ?お母さんがいるのに抱擁なんて駄目ですよ?危ない恋は危険ですよ?
そんな事を思い出しながら、一先ず梨を齧るのを止め、視線が注がれる先を見返しますと・・・うん、見なかった事にしましょう。
再度目の前の梨へと意識を戻そうとしたら、隣に座っていたお父さんに頭を叩かれました。
「ほら、ジャベール殿の御子息達がお見えだ、御挨拶なさい」
むぅ、お子様は不要なのですよ?ハッキリ言って邪魔以外に感じた事は無いのです。
今私達の置かれている状況をちょっと説明しますと、角の無い人達に襲われて、拉致された?
何か違うような気がするんですけど、まぁ多少違っても大きくは間違ってない様なのでいいかな?
で、拉致られた先でご飯を食べさせてもらって、で、今食後の果物を食べている所?・・・おや?拉致られたにしては待遇がいいかも?
「こら!すみません、この子はちょっと人見知りなもので、うちの一人娘のイツキといいます」
むむむ、お母さんにまで怒られてしまいました?で、私の前には厳つい髭モジャのおじさんと、細身のおばさん、ついでにさっきから扉越しに覗いている頭が3個の悪魔候補?見るからに相性が悪そうなガキンチョもいます。これは、無視した方がよいような?
「いえいえ、お気になさらずに。デリカ、リウス、サミーそんな所から覗いでないでこちらに来なさい」
お髭さんが悪魔たちを招き入れます。で、なぜか机の上に盛られた果物には視線を注がず、私一択なんでしょうか?私何かしました?
両手でかじかじ梨を齧りながら、上目使いでチラリと見ますが、うわ、視線が合っちゃったですよ?
「ねぇねぇ、名前何っていうの?何処から来たの?」
悪魔たちはそれぞれが挨拶をした後、なぜか私の真ん前に椅子を持って来て座りました。
上から10歳、6歳、4歳だそうです。で、特に10歳のデリカの視線が怖いです!梨から口を話してキョロキョロとどこか避難場所を探すのですが、ここは完全なアウェーなのです!
どこに逃げろというのでしょう?これは、イツキちゃん大ピンチ?
「う~ん、お返事が出来ないのですか?お・な・ま・え・は?」
むぅ、何やら立ち上がって無い胸を張って威嚇してきます。
メーデー!メーデー!ってあれ?メーデーはお休みって意味でしたっけ?
「まったく、デリカちゃん、この子はイツキって言うの、まだ5歳でちょっと人見知りな子だけど仲良くしてあげてね」
「うん!イツキちゃんあっちで遊ぼ!」
あ、梨を持ってるのに、腕を獲られて引っ張られます。梨さんがコロンコロンしちゃいます!
「あ、梨さんが、お、おお?」
机の上にコロリンコする梨さんを見ながら、腕と体は引っ張られて退場なのです。
でも、喉の渇きも治まったし、お腹もくちたのでどうせならお昼寝希望?お日様に当たりながらのお昼寝最高なんですよ?
そんな私をそっちのけで、なぜかお外へと引っ張られ、お家を出たらあら大変?見た事も無い数のお子様、稚児様、悪魔様?え~っと、ひい、ふう、みい、やぁ・・・全部で24名も?ここはどんな都会なのでしょうか?まぁ、この村を見た時にも思いましたが、以前暮らしていた島とはぜんぜん違うんですけどね。
まず、村を囲う柵があります。しかも、柵の前にはお水を張った堀もあります。これだけで、この村の凄さが解っていただけますよね?
で、柵で囲われた村の大きさも、以前の島と比べて倍くらい?ただ、家と家の間隔というか、密度が違います。すっごくキツキツなのです。これだと人口は最低でも3倍はいる?
「この子が今日から村で暮らすイツキちゃん5歳です!みんな仲良くするのよ!」
「「「「「は~~い!」」」」」
なぜかデリカちゃんが仕切って私の紹介までしてくれます。
ただ、そうですか、そうだったんですね、その紹介を聞いて解りました。
私達、今日からこの村で暮らすのですね。
お父さん達のお話を、ご飯食べるのに夢中で聞いてませんでした。




