第126話
別作品の宣伝です。
ミッドナイトノベルズ、アルファポリス、pixivで短編(24000文字程度、7話構成)を投稿しました。
『聖騎士見習いの少女、ついにブチ切れて冒険者になる』
女主人公、バディモノ、百合、無双、ピンチ、ちょいエロなどなど作者の性癖全部詰めの趣味作品です。
規約によりURLは貼れませんが、興味のある方は是非触ってみてください。
俺は一度アルマとセシリアの二人と別れ、教え子たちを連れて宿を出た。
レジャーとしての海水浴が盛んな海岸都市シーフィードには、水着専門の販売店がある。
俺が三人を連れて向かったのはその店だ。
柔らかな潮風が吹くシーフィードの街並みをしばらく歩くと、小洒落た看板のかかった店の前にたどり着く。
扉をくぐって店内に入ると、女性店員が一人やってきて、案内をしてくれた。
「いらっしゃいませ、お客様。本日はどなたの水着をお探しですか?」
「この子たちの水着を。俺は持っているので大丈夫です」
「かしこまりました。ではお客様は、よろしければそちらのお席でお待ちください。お嬢様方はこちらへどうぞ。私がご案内をさせていただきます」
そんな具合で、俺は待合用の席に案内され、リオ、イリス、メイファの三人は女性店員のあとについて店内を巡っていった。
そこそこに広い木造の店内は、清掃が行き届いていて明るい雰囲気だ。
店内の敷地の八割は女性向け水着の展示スペースとなっていて、様々なデザインの見目麗しい女性用水着が所狭しとディスプレイされている。
俺は待合用の席で、子供たちが水着を選び終えるのをのんびりと待っていた。
三人にはあらかじめ予算は伝えてあるし、俺に女性用の水着を選ぶセンスはないのだから、基本的には本人たちと店員にお任せだ。
──そう思っていたのだが。
しばらくすると、三人の案内をしていた女性店員が、俺を呼びに来た。
「お客様、お嬢様方がお呼びですよ。選んだ水着をお客様に見ていただきたいそうです」
「え、本当ですか? すみません、呼びに来させてしまって」
「いえいえ、滅相もございません。試着室はこちらです、どうぞ」
女性店員がそう言って誘導するので、俺はそれについていった。
まったく……あいつら、店員さんを顎で使うなよな。
そうして連れてこられたのは、一枚のカーテンで仕切られた小部屋の前だ。
女性店員は、カーテンの向こうへと声をかける。
「お嬢様方、お連れ様をお呼びしました。カーテンを開けても大丈夫ですか?」
「うん、準備オッケー♪ ありがとう、お姉さん」
「でも、やっぱり恥ずかしいな……。本当に見せるの、リオ、メイファ……?」
「……イリス、怖気づいても無駄。……どうせ明日、海で泳ぐときには見せる」
カーテンの向こうから、三人の声が聞こえてくる。
どうやら水着姿の三人が、このカーテンの向こうにいるようだ。
店員が「では、開けますね」と言って、カーテンを横に引いた。
カーテンが取り払われた小部屋には、予想通り、水着姿のリオ、イリス、メイファの姿があった。
何だか分からないが、三人の周辺の空気がキラキラと輝いて見える……気がする。
「えへへっ♪ どう兄ちゃん、似合う?」
リオはそう言って、きゃぴっと水着モデルのようなポーズを取ってみせる。
リオの水着は、健康的でスポーティなタイプのものだ。
ツーピースで上下に分かれてはいるが、上下とも布地面積は比較的大きめの健全なもの。
ただリオ自身のスタイルが、子供体型と呼ぶのはいい加減に無理のある女性的な魅力にあふれたものになりつつあるため、その姿は息を飲むほどにキュートだ。
ほどよく膨らんだ胸はスポーツタイプの水着を魅惑的に押し上げ、おへそ丸出しのお腹と女の子らしくくびれた腰、水着から伸びた健康的でみずみずしい腕や脚なども、一目見ただけで世の男どもをたやすく魅了してしまいそうな危うさを持っている。
そして、次に──
「……水着姿では、ボクの分が悪いのは分かってる。……でも、お兄さんはロリコンだから、そこに期待したい」
そんなことをのたまうメイファはというと、どこかゴスロリ服を連想させるデザインのワンピースタイプの黒の水着を、その柔肌の上にまとっていた。
露出は水着にしては多くないが、胸の部分や腰元などにヒラヒラのフリルがあしらわれていて、とても華やかで可愛らしい装いだ。
ちなみにメイファは二人の姉と比べるとかなりの子供体型で、悪い言い方をすれば寸胴とかまな板とかいった表現もできるボディラインなのだが、ただ完全にそうだというわけでもない。
なだらかながらも柔らかな曲線美をもった肌の輪郭は、妖艶さを兼ね備えた幼い顔立ちとも相まって、そこはかとない危うさで見る者を誘惑しうるものだ。
いや、もちろん俺は、別にどうとも思わないんだけどな。
ただこう、小さい女の子をよろしくない目で見るおじさんとかは魅惑的に感じるだろうって、それだけの話だ。本当だぞ。
そして、そんな二人すらも超えて、何よりも恐ろしかったのが──
「あ、あの、先生……やっぱりこれだと、子供っぽいですか……? 学校用の水着だっていうし、そんなに露出も多くないから、いいかなって思ったんですけど……」
イリスはもじもじと恥ずかしそうにしながら、頬を赤らめつつ、上目遣いでそう聞いてきた。
イリスが身に着けているのは、いわゆる「スクール水着」という種類のものだ。
しかも希少度が高い白色のタイプ。
スクール水着というのは、イリスが言ったとおり「学校で使う指定水着」のことだ。
といっても、普通の学校には遊泳のための設備などあるわけもなく。
もっぱら富裕層の子供たちが通う初等学校や中等学校、あるいは教育設備が潤沢な王都の勇者学院などにある、「プール」と呼ばれる遊泳用設備がある学校でのみ採用されている水着になる。
で、これまたイリスの言うとおり、スクール水着は水着にしては肌の露出は控えめだ。
まあ当たり前だな。
子供たちが運動のために着用する学校指定の水着に、セクシーさなどというものは一切必要がない。
そういう意味では、スクール水着は最も「健全な」水着のひとつとも言えるだろう。
だが、しかし。
問題は、女性の水着姿の魅力というものは、布地面積の大きさだけで決まるような単純なものではないということだ。
まず清楚な雰囲気のイリスに、白のスクール水着がよく似合っているというのはあるのだが、そればかりではない。
イリスは三姉妹の中で、女性的な部位の発育が最も豊かだ。
十四歳の少女にしてはずいぶんと豊かに育った胸やお尻は、子供向けのスクール水着をどん、どんと押し上げて強く自己主張をしており、これは逆にまずいのではないか、逆に、などと見ているこっちが錯乱してしまいそうになるほどだ。
それでいて、引っ込むべきところはしっかり引っ込んでいることに加え、恥ずかしがってもじもじとする仕草に、こちらを窺ってくる上目遣いの眼差し。
これはダメです。
百点満点中の、百五十点ぐらい。
……いや、待て待て。
俺はいったい何を考えているんだ。
そもそも教え子たちの水着姿の品評など、言語道断。
教師としてあるまじきことだ。
イリスだけではなく、リオやメイファも恐ろしく可愛いからといって、それにドキッとしてしまうことなど絶対にあってはならない。
だから、そう。
特に意識することなしに、さらっと「みんな似合ってるぞ」などと言ってしまえばよかったのだ。
でもその言葉が、俺の口から出てくれなかった。
代わりに俺は、ごくりと唾を飲んでいた。
その俺の様子を見たメイファが、ニヤリと笑った。
俺は直観的に、危険を察知した。
「……お兄さん、どう? ……ボクたちの水着姿の感想は」
メイファがゆっくりと、俺に向かって歩み寄ってくる。
「あ、ああ。いや……よく似合ってると思うぞ」
「……ボクたち、可愛い?」
「あ、ああ。可愛いんじゃないか……?」
「……そこで疑問形は、おかしい。……ボクは、お兄さんに聞いているんだよ。……お兄さんは、この姿のボクたちのこと、可愛いと思う?」
「か、可愛いよ。三人ともすごく可愛い。な、これでいいだろ?」
「……投げやり。……ちょっと不満だけど、このぐらいで勘弁してあげる」
腰が引けた俺の腕に、メイファがひしっと水着姿のまま抱きついてきた。
至近距離でニヤリと笑って、俺を見上げてくる。
俺の腕にはいつもよりもダイレクトに、十四歳の少女の体温や肌の柔らかさが伝わってきていた。
俺は横手にいた女性店員へと、おそるおそる視線を向ける。
女性店員はにこにことした、底の見えない笑顔で言った。
「そちら三人分の水着、お買い上げでよろしいでしょうか、お客様?」
「……はい。よろしくお願いします」
ノーという選択肢は、いかなる意味でも存在しなかった。
そんなわけで子供たちの水着を購入してから、俺たちは宿へと戻る。
その頃には空が夕焼け色に染まる時刻で、帰り道では日射しも暑さも弱まっていた。
この日は宿でゆっくりと休み、翌朝。
昨日に負けるとも劣らぬぴっかぴかの青天の下、アルマやセシリアとも連れだって、俺たちは街の郊外にある海水浴場へと向かったのだった。




