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169 ふたつあるんですか?


 アムルロスに多数点在するダンジョンの制作者。その方が目の前にいますよ。


 元神様の大木さん。


 ……なんだろう。神様というと、~ノミコトみたいなのが思い浮かぶから、神様の大木さんとなると凄い違和感があるよ。


 いや、こんなこと考えるのは失礼なんだろうけどさ。


 で、半ば愚痴のような感じで、ダンジョンの生まれた理由を語ってくださいましたよ。

 なんというか、苦労したんだなと。




 まず、魔素濃度をどうにかしなくてはないけないと、惑星管理そっちのけで、その対策を全力ではじめたのだそうな。


 元凶である世界獣は放置するしかないので、とにかく放出される魔素を消費するしかない。とはいえ、消費しきれるものではない。そもそも、あの世界獣はなんで無尽蔵に魔素を噴出しているんだよ、と、地団駄を踏んで転げまわっていたそうだ。


 結局、消費する方向での対策は諦め、魔素を生物にとって影響のない形にすることに変更。気体化しているのが問題なのだから、それをどうにかする方向に。水にも溶け捲っているわけだけれど、それは後回しにしたそうだ。


 魔素をどうにかして固形化する方向で研究を開始。世界獣の体内にある時には液体であるのだから、固形化もできるはずだと、それを信じて約百年。


 どうにか固形化に成功。一部の変質した生物が、体内に過剰に吸収した魔素を固形化していたのを発見し、そこから固形化のメカニズムを見つけたとのこと。


『結局はさ、胆石とか腎臓結石みたいなものなんだよ』


 大木さんの言葉に、私は顔を顰めたよ。そんなものを使いたくないよ。


『中世だかの西洋ヨーロッパだと、鶏の胆石を薬として珍重してたって話だしね』


 あー……ベゾアール石か。なんでそんなものを薬と思ったんだろうね?


 さぁ、魔素を固形化する方法が分かった。魔素固形化システムも組み上げた。それを組み込んだ装置もつくった。


 いざ配置。あっというまに壊された。


 魔素を吸収する装置でもあるわけだから、その近辺の魔素濃度が微妙に濃くなるため、動物だのなんだのが変異しやすくなる。その結果、変異した魔物に施設が破壊される、という事態に。

 また、そのことより、当時の人類に“魔素固形化装置は魔物を生み出す装置”と誤認され、やっぱり破壊されたそうな。


 この頃にはもう大木さんは色々とやけっぱちになっていたそうで、畜生、てめぇらの為に苦労してんのに邪魔すんじゃねーっ!


 と、ブチ切れて、壊せるもんなら壊してみやがれと、地中深くに装置を設置。埋めると魔素吸収に問題ができるために、空気取り入れ口みたいなシャフトを設置、さらに腹立たしい人間どもに挑戦とばかりに、深い縦穴をダンジョンにしたのだとか。


 それも、ダンジョン探索型RPGを参考にして。


 ただダンジョンを踏破されて装置の場所にまで来られても困るため、魔素を用いて魔物を創りだすシステムも生成。その際に、魔物は周囲から魔素を吸収し、体内で固形化を行うように調整。

 尚、魔石が大きいほど強力な魔物になるのだそうだ。


 故に、基本、巨大な魔物ほど強力とのこと。尚、スケルトンなどは邪魔な内臓がないため、馬鹿げた強さの個体が存在したりするらしい。あとはリビングアーマーとか。まぁ、中身が空っぽだからね。


 そんなこんなでダンジョンが稼働したわけだけれど、大木さんの想定に反し、最初の魔物大暴走で人類は大打撃を受け南方に移住。北方大陸はダンジョンから出る魔物、その魔物にくっついて外に出た植物などがはびこって、今でいう北部大森林帯、通称【魔の森】もしくは【死の森】ができたのだとか。


 大木さんはその後、二、三百年様子を見た後、引退し、ここの樹々を払って家を建てて隠棲しているそうな。


 なんというか、疲れちゃったんだって。


 あー、うん、気持ちは分からなくもないな。


 大木さんが管理者になったのが六千年くらい前で、五、六百年くらい管理者をしていたみたいだ。となると、後を継いだ管理者さんはいいところ五百年くらいで昇進したみたいだね。アレカンドラ様が管理者になって五千年って云ってたから。


 そうだ。


 ふと思いついて、ちょっとあることをやってみたよ。


『私、こんなことができますよ』


 【魔石生成】発動。魔石を作る魔法。云い換えると、魔素を固形化する魔法。


 ちゃぶ台の上に、ででんと、子供の頭くらいの魔石ができた。いわゆる極大サイズの魔石だ。


 大木さん、あんぐりと口を開け、目をまんまるにして呆然としてたよ。そしてその後――


『僕のしてきた努力はいったい――』


 すごい黄昏てた。




『本当に管理者じゃないの?』

『違いますよ』


 竜の顔でも表情って分かるんだね。なんだかすごい悲しそう。


『さっきのは貰った魔法ですから。その魔法を作ったのは銀河管理者なので、そんなに悲観するようなことではないかと』

『……え、なんでそんな上位の管理者と知り合いなの?』

『私が死んで落ちた場所が銀河管理者の場所だったので』

『ちょっと!? さっき召喚されたって云ってたよね?』


 あー。端折って説明したからなぁ。


 なので、エスカレータで突き落とされたところから、ちゃんと説明した。


『……』

『あの……?』

『あぁ、うん。ご愁傷さまでした。ごめん。僕よりも酷いとは思わなかった』


 なんだか同情されたよ!?


『まぁ、それなりに楽しくやっているので、問題ないです』

『そうはいっても、こっちは過酷でしょ』

『テキトーにやってたら一回死にました』

『なにやってるの!?』


 このあと、すべて吐けと云わんばかりに、いろいろと訊かれたよ。こうして生きているから大丈夫だと思うんだけれどなぁ。とりあず、一日一回は死んでも大丈夫なわけだし。一度死んでからが本番なんだと思うんだけれど。やるからには相手の情報はきっちり欲しいじゃない。


『なんだろう。君が人の形をした別の生き物に思えて来たよ』

『ちょっ!?』

『なんでそんなに危機感がないの?』

『まぁ、いろいろと諦めて生きて来たからじゃないですかね。ロクな人生じゃなかったし。なにせ、生前の私の一番嫌いな言葉は『希望』ですからね』


 えぇ、パンドラの箱に希望が厄災として入っていたのは、妥当どころか、最悪の厄災だからだと私は思っていますからね。希望なんて絶望の根源ですよ!


 あ、頭を抱えられた。


『あぁ、それと、痛いのは大丈夫なんですよ。私、ドMなので』

『そんなカミングアウトはいらないよ!?』

『でも愛がない痛みは不愉快極まりないので、全力で仕返しはします。いまは仕返しができるようになりましたからね』

『なんだろう、泣くべきは君なのに、僕の方が泣きたいんだけれど!? なんでそんなにあっけらかんとしてるの?』


 私は首を傾いだ。


 そんな泣くほどかなぁ。私のことだよ? たかが他人事だと思うんだけれど。


『とりあえず、君がいろいろと問題を抱えているのがわかったよ』

『抱えてますかね?』

『自覚がない時点で大概だからね。どうしよう。数千年ぶりに会った人間の女の子が精神的にいろいろと病んでいる件について……』


 酷い云われようだ。まぁ、精神疾患を抱えてるのは事実なんだろうけど。


『ちゃんと泣いたり笑ったりできてる?』


 問われ、思い返してみる。乾いた笑いはいくらでもあるし、泣いたのは、ディルガエアに向かう途中で、勝手に涙がでてきたことくらいだ。


『ダメじゃないのさ!』

『え? ダメ?』

『うん。ダメ。わかった。こうしよう。僕も君の保護者枠に入ろう。これでも人生経験は四十年ほどあるからね。こっちでの六千年はぼっちだから除外だけど』


 はい?


『君のことはひとりで放置しちゃダメだ』

『え、えーと……』

『あぁ、一緒に住むとは云わないから大丈夫だよ。というか、いまは誰かと住んでる?』

『あ、はい。女神様と』

『うん。どうやら当代の管理者も心配しているみたいだね。よし、ちょっと後で話をしに行こう。あ、深山さんの家じゃなくて、あっちね』


 そう云って大木さんは上を指差した。


『さてと、それはさておいてだけれど、深山さんはこんな場所にまでなんで来たの? 確か、人の生息域は二、三百キロくらい南だよね?』

『えーと……ダンジョンの探索に』

『わざわざこんな場所にまで? もっと近くにあったでしょ?』


 疑問に思われたので、ここにまで来た理由を説明した。


『あぁ、僕がいたからか。一応、竜だしなぁ』

『サンレアンには影響を及ぼすような生物はいなさそうなので、予定していたダンジョンに向かうつもりです』

『一応、この近くにもあるけれど、そこはやめておいた方がいいよ。大物しかいないから。いまの深山さんだと……』


 そういってじぃっと私を見つめる。


『……あぁ、うん。ちょっと当代の管理者に問い詰めることができた。うん、君の体はどうなっているんだい? 明らかに普通の人と違うんだけれど。頑張れば青銅竜とも渡り合えそうな感じなんだけれど!?』

『青銅竜?』

『最強の竜種。同等の竜として黄金竜がいるけれど、どちらかというと指揮官的な竜だからね。個体戦力としては青銅が一強だよ』


 ……。銀竜とかはいないのかな? それはさておいて。


『やっぱり、私の体って作りがおかしいですか?』

『作りと云うか、その内包魔力はなんなの? 本当に管理者じゃないの?』

『あ、魔力は頑張って増やしました』


 大木さんがまたも頭を抱えた。


『ま、まぁ、君のことについては、当代管理者に確認するよ。管理者でもないのに、変異もせずに人としての体を成しているのがおかしいレベルの魔力だから』


 えっ!?


『それで、ここの近所のダンジョンに行くのかい? さすがにそれは止めた方がいいと云わせてもらうよ』

『いえ、探索予定のダンジョンは、ずっと東の、山にあるダンジョンですよ。【バンビーナ】って呼ばれてるダンジョンです』

『名前で云われてもわからないからなぁ。えーと、これのことかな?』


 ちゃぶ台の上にマップが表示された。ホログラフみたいだ。多分、これが北方大陸の地図だ。結構ずんぐりした感じの大陸なんだね。


 で、右端。山だらけのところに赤い点が点滅している。……ふたつほど。


 多分、この点がダンジョンだよね? あれぇ。ふたつみえるんだけれど。


『この点がダンジョンの場所なんですよね。ふたつみえるんですけど』

『ふたつあるからね』


 ……えぇ。


『ふ、ふたつあるんですか?』

『うん。そこはまともに機能させた最初のダンジョンでね。試作型の魔素固形化システムが使われているんだよ。出力がちょっとばかり弱くてね。そのままだと人間たちに容易く破壊されそうだったから、補助としてもうひとつ近場にダンジョンを設置して、最下層で繋げてあるんだ。だから……いうなれば二世帯住宅型のダンジョンっていったらわかる?』


 あぁ、なるほど。入り口はふたつ、ダンジョンもふたつ、でも最下層はひとつで繋がっている、ということか。


 私はうんうんと頷いた。


『上層から中層は弱っちい魔物しかいないだろうけど、下層と最下層はそれなりに魔素が集まっているから、そこそこ強い魔物が生成されているよ。人型は無し。とはいえ、入り込んで住みついている場合もあるから、絶対とはいえないね』


 あぁ、棲み処にする魔物もいるんだね。そういったことを考えると、管理ダンジョンって、かなり危険度が落ちるんだな。魔素を処理出来て、危険度もさがるとなると、管理ダンジョンは本当に、国としてはお宝の山じゃない。


『設置から長いこと経っているから、最下層だけでなく、もしかしたら他の層も繋がってるかもしれないよ。壊れても自動修復するんだけれど、場合によっては改修とか勝手にするから』

『えーと、それって、ダンジョンの構造は一定ではない、ってことですか?』

『そうなるね。まぁ、壁がひとつ増えたとか、通路が増える程度だよ』


 ほほう、ということは、拡張されている可能性もあるのか。まぁ、一日二日で変わることはないだろうけれど。


『それで、どうする? すぐ行くかい? それとも今日は泊っていくかい? そろそろ日が暮れるけれど』

『一晩お願いします。ここ二日寝てないので』

『君はなにをやっているんだい……』


 大木さんが呆れたようにため息をついた。


 大木さんのお家は快適だった。お風呂最高。ご飯は――


『お米のご飯。お味噌汁。あぁ、焼き鮭にサバの味噌煮に南蛮漬け……』

『とりあわせは滅茶苦茶だけれど、食べたいだろうと思ってね』

『大木さん大好き』

『……なんだろうね。これほどまでに喜べない大好きもないね。というか、落ち着いて食べなさい。詰まらせるから!』


 うぅ、ご飯美味しい。涙がでてきた。


『こんなんで泣かれてもなぁ。さっきの泣くの意味と違うんだけれどなぁ』


 大木さんがなにかいってるけれど知らん。私は遠慮なく食べるのだ。今日ほど大食いになったこの体に感謝することはないね。




 こうして、私は至福のひと時を過ごしたのです。



『一食で六合も食べるのか』

『おかわりいいですか?』

『……君のお腹はどうなっているんだい?』



感想、誤字報告ありがとうございます。


※ 管理者に関して。

 管理者の代替わりは以下の通りです。


◆アムルロス

 大木直人→■■■■■→アレカンドラ→アレカンドラの属神(六神)

 となってっています。


 五年前(もうじき六年前)に、アレカンドラが三階級特進。前銀河管理者(変態)に指名され、銀河管理者となっています。

 現状はアレカンドラが銀河管理者と惑星アムルロス管理者を兼任している状態となっています。




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― 新着の感想 ―
[一言] 解説ありがとうございました。 別人とわかり安心しました。 でも大木さん心配性の世話焼き母さんになってるよ(^^;
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