第四章☆長井丈博士
アンドロイドが、食堂のようなところへ入り込み、機械に材料を投入して自動調理を始めた。
私は手近な椅子をひいて、座った。椅子とテーブルがひんやり気持ちいい。
やがて、ほかほかの食事のプレートが目の前に置かれた。
私は無我夢中で食べた。
やがて満腹感で幸せな気持ちになった。
ぶーんん。
巨大なスクリーンが起動して、映像を映し出した。
蝶の研究をしていた長井丈という人のドキュメントだった。
家の庭に柑橘系の植物を植えて、アゲハ蝶を育てて、研究をしていた。
幼虫にラベンダーの匂いを嗅がせながら電気ショックを与えると、その幼虫の次の世代のアゲハ蝶がラベンダーを回避する、という研究で、匂いの記憶が遺伝するという。
「すごい」
私は感心して見ていた。
その間にアンドロイドは私の汚した食器を洗い、棚に片付けて、私がドキュメントを見終わるまで待っていた。
「ありがとう、ごちそうさま」
そう声をかけると、元の水耕栽培の部屋の方へ行ってしまった。
私は、記憶が遺伝することについて考えていた。
代々受け継がれていく。それは大変なことだと思う。いい思い出も悪い思い出も次の世代へ。
私は?人間は?一代限りなのだろうか?
のろのろと立ち上がり、蔦の回廊で光が差す場所に座り込んだ。
きらきらきれい。
生きているってこういう気持ちも込みだよね。
この感覚は残って欲しい。そう思った。




