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エピローグ 溢れる緑

*あとがきがあります

 ローレル将軍の反乱から、数ヶ月後、俺とステラは反乱を抑えた功績により、それぞれ貴族の爵位を与えられた。

 ステラは帝国附属魔導図書館長から、国防担当官へ、俺はジェシカと婚姻関係にあることもあって、陛下の補佐をする宰相に……。


 最初はルルの代わりに大巫女を……と言われた。

大樹のじいさんからも、お前が大巫女をしろって言われたけど、丁重にお断りした。


だって、ルルの帰ってくる場所が減ってしまうだろ?

そもそも巫女は男性がするもんじゃないし……。


 陛下には遺跡のこと、自分の出自、『大戦』のきっかけについて、思い出したことも含め、全て話してある。


陛下はただ静かに、話を聴いてくださった。

 

 そして『大戦』のきっかけは、お主たちではなく、中王国にある……とさえ、言ってくださった。


***


「ユキテル……。毎日、水やりしてる、お前の顔……気持ち悪いぞ!」

「……別に……。ステラ……お前は樹が育っていくのって、嬉しくないか?」

「ルルとターニャの樹に水やりしてる時、いつもニヨニヨしてんだもんなあ……」


ゲロゲロと吐く仕草をして、すかさず逃げていくステラ。

可愛いんだよ……。この樹が……ほっとけ……。


しばらく経ったある朝のこと……。


「……ん?ユキりん……おはよ」


右腕に艶かしい姿の子が絡んでいた。

……ああ、すごく懐かしい声……。そしてこの肌の感触……。


「……ターニャ、おかえり……」

「……ユキりん……忘れたの……?ターちゃんって呼んでって言ったでしょ?」


クスクス笑いながら、抱きついてくるターニャ。


……ああ。

やっぱり、ターニャだ……ターニャが再生したんだ……。


彼女の揺れる瞳を見つめ、久しぶりに接吻をしようとしたその時、


バン!


突然、部屋の扉が開く。


「……ユキテルさん……。いつからターニャとそういう関係になったんです?」


あれ……?この怒った声と姿……。

その声はベッドサイドに近づいてきて、再び、文句を言ってきた。


「ターニャもターニャです!泥棒猫みたいに……ちゃんと言ってください!」

「……あれ?ルル……ルルも再生したの……?残念……ユキりんを貰っちゃおうかと……」

「……もう!ユキテルさんも、黙ってないでなんか言ってくださいよ!」


その姿がこちらに近づいてくる……。

見慣れた姿……。

サラサラの深緑色の長髪……。可憐な唇……。


「……ルル……。ルルなのか……」


俺は目を疑った。


全魔力移譲で再生なんて……。

それはほぼ無理だと思っていたから……。


「……ふあい……。ゆ、ユキテ……ルさん……。ちゃんと帰ってきました……みんなと一緒にいるために……」


深碧のその瞳に目一杯、涙を溜めてルルが抱きついてきた。


 子どものようにエンエンと声を出して、抱き合って泣くルルとターニャ。

彼女たちの髪を梳かすように、いつまでも撫でていた。


泣き止んで、しばらくすると突然、ルルが立ち上がって宣言した。


「みんなで結婚式しましょ!」

「……え?前、ルルの代理がいないからって、できなかったんだけど……」


そう。

 最初に結婚式をしようって話になった時、ルルのいつものドジのお陰で、書類だけになってしまったんだっけ……懐かしい……。


そう思い出しつつ、苦笑してると、ルルから枕が飛んできた。


「今度は私自身が執り行うから、大丈夫です!」


……え?ルルは花嫁役も大巫女役もやるのか……。できるの?


「ユキテルさん!見くびってはいけませんよ!生まれ変わったルルの力……お見せします!」


いや……。そりゃ、生まれ変わったのは確かだけど……。

言葉の意味が……。

性格や癖まで改善されるわけじゃないから……。


そのあとステラたちも結婚話に加わってきた。

勢いを増した嫁軍団の強行により、1ヶ月後に正式な結婚式を挙げることとなった。


***


「汝、ユキテル=コバヤシ。汝は、悲しい時も老いた時も病める時も、死が永遠に別つまで……。大巫女ルル=シャブリエ、国防担当官ステラ=エンバット、帝国第一王女ジェシカ=エンリル、ターニャ=エンリルを愛するか」


「はい……。4名とも、永遠に愛を誓います」


「汝に大樹より聖名を与え、これを持って婚姻の証とする。聖名はスノー=ルル・ステラ=エンリルとする」


 ……すごく緊張した……。


 友人や職場の同僚の結婚式に呼ばれたことはあったけど、見てるのとやる方じゃ、大違いだな……。


 婚姻の儀で1人二役をしているルルは大変そうだった。


 さっきまで大巫女として儀式を執り行っていた。

これから接吻の儀のため、慌てて、衣装替えをしているところだ。


「きゃ!」


ズダーン!


神殿に鳴り響く大きな音が聞こえた。


……やっぱり……。

ルルが衣装に足を絡ませて、転倒していた。


あははと、ごまかし笑いするルルを起こしながら、ため息をついてしまった。

ドジっ子はやはり治らないな、と……。


***


「ユキテル!初夜だな!」

「どこが初夜なんだ?みんな毎晩のようにしてるだろ?」

「……ユキりん……女の子の気持ちはいつも初夜だよ。結婚式の後だし……」

「私……再生してから、一回も抱かれてないです……ユキテルさん」

「……私も……お仕事忙しくって……抱かれ足りないです」


この娘たちは……。


いくら身体強化したソレでもね、限界が……。

少し呆れていると、嫁さんたちが円陣を組んで、何やら相談している。


「どうした?」

「ああ……今、4人同時にベッドインするには、どうしたらいいかを討論してたんだ。国防より難しいぜ!」


4人同時だと!


「前のように1人一晩で交代していくだけじゃダメなのか?」

「「「「ダメ、絶対足りない」」」」


なぜこんな時に限って、速攻で意見一致するの?


「よし!これでローテーションだ!」


何やら決まったらしいな……。

こっちの体力も考慮してくれるといいんだけど……。


「ユキテル!初夜だ!従って、今日は4人全員でベッドインだ!」

「……い!結婚式で疲れてないの?」

「大丈夫だ!むしろ式で昂ってきたぞ!上半身と下半身、左右で問題ない!」

「……ちょ、ちょっと、俺、今、腰が……」


「うふふ。ユキりん……。優しく揉んで、あ・げ・る」

「あたいは上半身の右をもらった——!」

「私は上半身の左です……3回はしてもらわないと……」

「……私は……先に頂こうかしら?」

「こら!ジェシカ!順番は守れ!」


そんな嬉しいような怖いことを言いながら、嫁4人が舌舐めずりしながら迫ってくる……。


もう……ね……。

ドジな巫女さんに呼び出されてから、ずっと昼間も夜も、身がもたん!

短い間でしたが、お読みくださいまして、ありがとうございました。

こんな拙い編成と拙い文章をお読みくださいまして、厚く御礼申し上げます。


またこのようなものにレビューや感想、評価をいただいたことも、大変ありがたく思っております。


今回の反省点は多いのですが、これらは次回作に活かしたいと思います。


当初のプロットでは、この西帝国編以外に他国のものもあったのですが、これにて、一旦、完結とさせていただきます。(プロローグから8話まで改稿はします)


ご要望が多ければ、続編を書くかもしれません。

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