第34話 湯けむり七色温泉と見返りターニャ
*微エロあり(いつもより成分多めです)
フェン遺跡の調査も無事に終わった。それも予定よりも2日早い。
ここ、フェン地方は北部山岳地帯では最も大きな温泉地だ。
それもオーロラを見ながら、温泉を楽しめるとあって国内屈指の観光地だ
せっかく陛下が、いい宿を用意してくださったことだし、この地方でしか見れないオーロラを見て、温泉を楽しんで行きましょうということになった。
温泉はみんなで入る大風呂と各部屋に備え付けのものがある。
大風呂はもちろん、個室風呂からでもオーロラを楽しめるのがいい。
大風呂はもちろん混浴だ。
そもそも女性が9割のこの世界で、混浴もへったくれもないのだが……。
「はああ。いい湯だ……」
「ホントだなあ……ユキテル……くつろげるぜ……」
「……はあ、オーロラが揺らめいて、きれいですね。ユキテルさん……」
俺はステラとジェシカに見惚れていた。
俺の右隣にはステラが、左にはジェシカがぴったり寄り添っている。
頭上にオーロラが煌めき、それが湯面や彼女たちの肢体を、ゆらゆらと照らしている姿は……なんていうか……。
「ユキテル!おい。聞いてたのか?」
「あ、ああ……。ごめん……お前たちに見惚れてた……」
夢うつつの中、ステラにようやく現実に引き戻された。
「うふふ。ここで3人で愛し合います……?」
「おお!ジェシカ!いいな……それ……」
揺らめく湯面の中、うっすらオーロラに照らされ、艶やかなジェシカやステラの胸の双丘が目の前に迫ってきた。
「……さ、さすがに……調査隊の連中が……って、あれ?」
「あん……いけず……」
さすがに他の人たちがいるところでは……。
追いすがってきそうなステラたちを、とりあえず放っておく。
慌てて周囲を見渡すと、ちょっと離れたところに調査隊の面々がいた。
「お——い。ちょっと一緒に入ろうよ——」
彼女たちの方へ俺が行こうとすると、メンバーたちはそそっと、逃げるように離れた。
「……あ、いや……拙者たちは遠慮するでござる……」
「……遠慮します」
「私も……ちょっと」
「え?どうして?」
「さすがに……恥ずかしいです」
何だか遠慮がちな調査隊の連中に近づいていくと、ターリエンがスレンダーな肢体を隠すようにそう言った。
……あ……そっか。
いつもみんなで神殿の風呂に入ってる俺の方が感覚、おかしいのか……。
ん?ターニャがいないな……。
「あれ?ターニャは?」
「ああ。ターニャなら、向こうの岩陰で身体を洗ってましたよ」
マリオンが指差した岩の方へ行こうとすると、ステラにがっちり腕を掴まれた。
「な、何だよ……ステラ」
「……今晩、ターニャにルルのことを聞き出せたら、聞けよ……」
ステラは小声で俺にそう囁くと、ウインクしながら、調査隊のメンバーたちのところへと向かっていった。
***
その岩陰周辺は湯けむりが立っていた。
オーロラに照らされた薄水色の湯気の中に、1人の女性がいた。
深緑色の長い髪……
その髪をかきあげた時に、垣間見えたうなじが瑞々しい……。きれいだ……。
この香り……ルル?……。
「……ルル?」
俺はつい、ターニャをルルと呼んでしまった。
ターニャだとわかっていたのに……。
「……ユキりん……!」
驚いて振り返ったターニャは俺だとわかると、ホッとした表情を見せた。
その次の瞬間、彼女は慌てて、俺に駆け寄ってきた。
「……だ、大丈夫?何かあったの?」
「……あ、ご、ごめん。ターちゃん……。ちょっとルルのことを……」
「………」
彼女は何も言わずに俺を抱き締めてきて、小さなか細い声で呟いた。
「……ごめんなさい」
「謝ることないよ、ターちゃん……」
温泉で温まったはずの彼女の身体が少し震えていた。
……やっぱりルルの事に関わってるんだろうな。
「……ユキりん……。ルルの代わりに……私を……ごめんね。これしかできなくって……」
そういうとターニャは抱き締めていた腕を緩めて、唇を近づけてきた。
……その瞳は涙で揺れ、彫刻のような滑らかな頬からは、涙が滴り落ちていた。
ルルの事よりも、何だか今、目の前にいるターニャの事が……。
……だって泣いている女の子……放っておける訳ない……。
俺はターニャの頬を伝わって落ちる涙を、そっと指で拭い、薄桃色のターニャの濡れた唇に、自分の唇を重ねた。
***
「本当にいいの。ユキりん……」
「うん。大丈夫。ステラたちは了承済みだよ」
「……ありがと。ユキりん。また同じ部屋で一緒に寝れるなんて……」
今夜もクジで宿の部屋割りを決めようって事になったのだが、ステラたちに根回ししておいたのだ。
一応、彼女たちには、ルルのことを聞き出すためとは言ってある。
確かに自分の中では、それが一番だけど……。だけど……。
傷ついて泣いているターニャをほっとけなかったんだ……。
ルルに何かしたから、傷ついてるのかもしれないし、違う何かかもしれない。
でも……彼女は傷ついてる……。
「……ターちゃん……。またお風呂入る?」
「……いいよ。一緒に入ろ。ユキりん……優しいから……いい」
俺は彼女のナイトドレスをそっと指先で摘み、ゆっくりと脱がせていく。
スルスルと絹の擦れる音がして、張りがあってツンとした豊かな胸があらわれた。
立ったまま、彼女を抱き締めると、その美しい胸が俺の胸板にあたって、形が潰れる。
「……あ……ん」
艶かしい彼女の吐息を耳元に聞きながら、腰にある布を、そろりそろりと下ろしていくと、ターニャの両腕が俺の背中に巻きついてきた。
ふと、自分の指先にかなり深い凹凸を感じた。
それは、ターニャの美しい臀部と太腿の境目あたりに感じられた。
媚薬を使ってた時には、気がつかなかった痕……。
……これ、かなり深い傷だ……。あとで聞こう……。
俺はそのまま、彼女の膝の裏を持ち、ターニャに俺の肩と首を持たせた。
いわゆるお姫様抱っこという奴だ。
「……嬉しい……男の人にこうされるのが夢だったの……」
耳先まで真っ赤にしながら、甘いため息をつきながら、額をこてんと、俺の胸元につけた。
「……ターちゃん……お風呂行くよ‥‥」
「……うん」
***
オーロラが煌いて湯面を揺らす中、俺はターニャの肢体のラインに沿って、触れるか触れないかのギリギリで、ゆっくり指を這わせていく。
「……あ……ゆ、ユキりん……んっ」
「……ターちゃん、きれいだよ……」
彼女の甘い吐息に応えながらも、ゆっくりと触れていく。
「……ユキりん……ちゅ——して……」
俺は彼女の要求に応え、湯気で濡れた彼女の唇に自分の唇を重ねた。
その後、ターニャの嬌声が幾度もなく、個室の風呂場に響いた。
***
何度も何度も愛し合った後、ベッドの上で俺たちは抱き合っていた。
俺がターニャの美しい深緑色の髪を梳くように、撫でてやる。
「……ん……」
まるで撫でられている子猫のように彼女は目を細め、うっとりとした表情で、俺の胸元を撫でてきた。
「……ターちゃん……お尻に傷あるけど、大丈夫?」
「……バレちゃったか……。大丈夫だよ……優しいね……やっぱり」
俺は彼女の傷を癒すかのように、そこを指で優しく撫でた。
「この傷……ローレルの野郎に付けられたんだ……」
「え?ローレルって……あの将軍だよね」
「うん……。あいつ、気に入らないと、すぐこうするんだ……。それに………」
そこまで言うと、ターニャは俺の胸元に顔を埋めた。
……密着しているから、よくわかる……。
彼女は小さく震えていた。泣いているんだろうな……。
俺は彼女を少し強く抱き締めた。
怯え、苦しみに耐えようとする1人の女の子を……。
「……ユキりん……怒らない?」
胸元でターニャが、小さく、そして泣きそうな声で囁いた。
「ああ……。どうしたの?ターちゃん……」
……胸元からすすり泣く声が聞こえる……。
よほど苦しいんだろうな……。
あの面倒臭そうなエロお姉さんは、もうとっくにいなかった。
「あのね……私、ルルを騙して、ルルの封印を手伝ったの……。ご、ごめんなさい……ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい……ユキりん……。わああああぁ——」
…………そっか。
やっぱりターニャが罠に嵌めたんだ……。
でも俺の胸で大泣きしているこの子は……。
「わあああぁ———。ユキりんユキりん、ごめんなさい……。私、ルルが羨ましかったの……。でもでもでも……ユキりんは優しくって……エッチしても優しくって……。私、私……」
俺はただ、ずっと泣きじゃくるこの子の頭をずっと撫でていた。




