第31話 逆ハニートラップ大作戦
*微エロありです
俺たち調査隊は、今、北部山岳地帯のフェンというところに来ている。
ここは極寒でオーロラが年中みられるという。
それに温泉宿がたくさんある観光地でもある。
今回、調査に来た目的は2つある。
表向きはアルス南部遺跡で見つかった石版や碑文に、この地域のことが記されていたからだ。発掘していて、よく出土する機械の部品のようなものが、何なのかがわかるかもしれない。
それに気になっているのだが、アルス南部遺跡で突然、ルルがおかしくなった原因も何か掴めるかもしれない。
ルルがおかしくなったあの柱のことが、碑文に少し書かれていたためだ。
もう一つの目的はターニャを罠に嵌めること。
彼女と会うのは調査する時くらいだ。
そこで開放的になれる、この温泉地であることを利用しちゃおうって訳だ。
もちろん、ここに来る前にステラとジェシカとは打ち合わせ済み。
……あの超強力媚薬、<百万力>も忍ばせてる。
***
「おお!ここか、豪勢だな。ユキテル!」
「……わあ……いいお宿ですね。隊長」
ステラやマリオンが、到着した宿を見上げて、目を丸くしている。
しばらくご厄介になるこの宿は7階建で、フェンでは一番高級なところだ。
さすがジェシカ……。
ちゃんと陛下に、ルル捕囚の件について話をつけてくれたもんな……。
彼女がいなかったら、こんないい舞台を準備できなかったよ。
そう心の中でジェシカに感謝した。
「じゃ、今回はお部屋は2人部屋になるので、クジで決めましょうね」
そう言いながら、ジェシカはクジを出してきた。
もちろんこのクジは、ターニャが俺と相部屋になるよう小細工した奴だ。
早速、ロビーでクジ引きがはじまった。
こういう光景を見てると、なんだか高校生の修学旅行のようだ。
仕事だというのに、キャッキャ言いながら楽しそうだ。
「……私はリディアと一緒か」
「拙者とじゃ、嫌なのか?マリオン……」
「ちっ!あたいはアエラとかよ」
「私はジェシカさんとですね」
「……あ。私、隊長とだあ。やったね」
当たりクジを引いたかのように、クジを握り締めて飛び上がって喜ぶターニャ。
他のメンバーたちは、それぞれ残念そうにクジを捻ったり、くちゃくちゃにしていた。
結局、部屋割りは、大食いコンビのマリオンとリディア、正反対な性格同士のステラとアエラ、大人しめなジェシカとアエラ、そして俺とターニャが相部屋となった。
……思惑通りだな……
さて、ターニャ。これからたっぷり聞きたいことあるんだ……。
「ユキテル、それじゃ指示出してくれ」
何か黒いものが湧き上がってきた俺に、ステラが脇をつついて促した。
「じゃ、明日から調査に入るから、今日はのんびり過ごしてくれ!」
俺は気を取り直して、隊長らしく、そう一同に伝えた。
***
食事や風呂を終えて、みんな、それぞれの相部屋へと戻っていった。
当然、俺とターニャもだ。
正直いって、ドキドキする。
彼女の色香が凄いってのもあるが、上手く彼女を落とせるかどうか……。
ジェシカたちが言うように、こっちがハニートラップに嵌らないようにしなきゃ……。
つい1ヶ月前まで、年齢=彼女いないだった俺にはハードル高すぎる。
「隊長さん……。ルルが行方不明なんですって……?」
「……ああ。そうなんだよ……どうしたらいいか……俺……」
ベッドサイドに座っていた俺はちょっとビクッとなって、半分本音を話す。
もう半分はターニャへの疑念と復讐心だ。
ワザとらしく心配そうな顔するなよ……。
「かわいそうに……隊長。ルルと婚約されたばかりでしょう?」
「まあね。まだ書類上のことだけど……」
「ルルの事は帝国の警備担当にお任せするしかないわね……」
「……ああ……そうするしかないかな……」
友人なのに、まるで他人事のように言うターニャへの怒りが湧いてくる。
……ジェシカが言ってたな……。罠をかける時は冷徹にって……。
俺は少し拳を握って、湧き起こる黒い感情に耐えた。
「……もし……私でよかったら……ルルの代わりにならないかな?」
ターニャはそう言いながら、俺の隣に座り、その距離を狭めてくる。
U字形をした襟のナイトドレスからは、その豊かな胸の双丘が見えそうだ。
見事な曲線を描く脚のラインにはスリットが入っていて、今にも生の美脚が溢れ出しそうだ。
……我慢だ……。
1ヶ月前の俺なら、すぐに落ちただろう。
……ど、ど童貞じゃないし……もう……。
そそそ、それに俺には、ル、ルルやステラ、ジェシカたちがいる!
ちゃんと嫁がいるんだ!
俺は下腹部に力を入れて、欲望に負けそうになる自分に打ち勝とうとしていた。
「……ねえ……ユキテルさん……私じゃダメ?」
ターニャは上目づかいで瞳を潤ませながら、俺を見上げてくる。
彼女の濡れた唇が、別の生き物のように蠢いて見える。
……ごくん……。
ルルに似てる……。同種族だと言うこともあるんだろうか?
こう、近くで見ると似た雰囲気があるのだ。
それに……この男心をくすぐるしぐさ……。
「……そ、そ、そんな事はないさ。きれいだし可愛いからな……」
震える声でやっと口説き文句を言えた。
……半分は本当にそう思ってる。
彼女が宮廷魔術師じゃなきゃ……。
「あら……私にもチャンスあるのかしら?うふふ」
そう言って、ターニャは俺にしな垂れかかってきた。
…………俺は……うん!
決めた!ルルを助けるためだ……。
ジェシカがくれた王家秘伝の媚薬(使いすぎは永久昇天)を信じよう……。
俺はターニャの背中に媚薬<百万力>を気がつかれないように、そっとふりかけた。
「……あ!……」
ターニャの肢体が急にピクンとする。
その途端、彼女は蕩けた表情になって、その薄桃色の濡れた唇がわななきながら、俺に迫ってきた。
……ええい!やっちゃえ!
俺は迫ってきたターニャの唇を乱暴に奪うと、そのまま彼女をベッドに押し倒した。
***
翌朝、ターニャはあられもない姿で、俺の胸元でぐったりとしていた。
あの媚薬の効果は……もう凄いってもんじゃなく、殺人的だった。
ターニャは乱れに乱れ、何度も何度も天国へご招待できた。
逆ハニートラップって、本当はこれから何だよな……。
昔、先輩は『肉体関係持つと、人って情が湧いてくるんだよ』って、なんか自慢げに話していたけど……。
「……あん……。ユキテル……素敵でした……」
ターニャはうっとり蕩けた表情で、俺を見つめる。
本当に上手く行ったんだろうか……?
試しにルルのことを聞いてみるか……いや……ちょっと早いよな……。
俺とターニャは、まるで熱々新婚夫婦のように、べったりくっついて部屋を出ると、そこにはステラとジェシカが、待ちかねてたかのように立っていた。
「お二人さん……夕べはお盛んだったようで……」
ステラは、にやにやしながらも、そんなことを言いながら、『上手く行ったな』と言わんばかりに親指を立てている。
「……声、廊下中聞こえてましたよ……」
一方、ジェシカは顔を真っ赤にしながら、小声で恥ずかしそうに呟いた。
***
朝食後のミーティングが終わってから、ちょっとステラたちに呼ばれた。
きっとターニャの件だろうと思って、調査隊のみんなに気がつかれないように、上手く抜けてくる。
「で、あの女はどう?」
「……どうって……ステラ……お前……」
俺は頬をぽりぽりかきながら、答えに困った。
どう?って、ターニャの肢体は素晴らしかったです!とか言ったら、ブン殴る癖に……。
「あ、あ、あっちの方じゃないぞ!いやらしい事考えたろ?今」
「い、いや……ち、違うぞ!ステラ……」
「はあ、ステラさん、ユキテルさん……夫婦漫才はいいですから……。これからターニャさんの動向を見て、こちら側につきそうなら、私たち同様にしてしまえばいいと相談したかったんですよ……」
ジェシカは眉間に指を当てて、ため息をつくと怖ろしい提案をしてきた。
「……うんとさ、ジェシカ……。私たち同様って、要は嫁にするってことか?」
「はい!そうですよ。そうするとターニャさんも監視下に入りますし、ユキテルさんもお嫁さん増えて、Win-Winじゃないですか」
「おお!あったまいいな!ジェシカ!さすが王女だぜ」
あっさりジェシカの提案に乗るステラは……まあいいとして……。
にこにこしながら、提案するジェシカを見てると末恐ろしいものを感じるよ……。
俺、とんでもない女性を嫁(まだ書類上だが)にしたかもしれん……。
あの……俺、今、夕べの影響で、遺跡発掘担当者の職業病、腰痛が酷いんですが……。
……俺のガラスの腰、持つかな……。




