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とても幸せに暮らしています~私とモフモフと過保護の日常~  作者: シーグリーン
暇を持て余した神の使いの就職活動編

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13 将来の夢

 



 あなたも魔物をテイムして冒険いっぱいの毎日を――



 いきなり違うジャンルの世界に放りこまれたかと思ったが、今はのんびり島で暮らしたいからそれは30年後くらいのお楽しみにしておこうと思う。

 定年後の楽しみ、みたいな。ゴーレムさんがラスボスになると見た。


 正式にこの世界の人間として暮らすとこういう特典もあるという事がわかって良かった。

 でもパーマはあのまだら模様の毛が素敵なのでテイムはしない事にした。



「パ~マ~パ~マ~」



 ボスの頭に乗って低空飛行でパーマを探す。



「あっいた!」



 かさりと物音が聞こえパーマが木々の間から顔を出した。尻尾でわざと音を立ててくれたみたい。

 うん、今日も賢そうなモフモフだ。そしてよく考えたら森の保護色とはほど遠い。



「久しぶり~。少し首元を撫でさせてもらっていい?」



 少しだけ言葉が理解できるパーマは尻尾をひと振りしてくれた。



「ありがと」



 ボスにくわえてもらって地面に降り立つ。


 そのままそっと近付き手を差し込んでカリカリふさふさしていると、ダクスを背中に乗せたエンがとことこと歩いてきた。

 マッチャがダクスをさりげなく支えてるのがなんとも。



「キャン」



 うわ、なんか先輩面してパーマに挨拶してるんだけど……。とても偉そう。犬もそんな偉そうな顔出来るんだ。

 言っとくけどダクスなんかペロリだからね? 一瞬でペロリ。


 でもパーマは気にした様子もなくダクス先輩に対して尻尾をふぁさふぁさしていた。大人の対応。



「ぴちゅ」

「キュッ」



 そうそう、こちらの先輩達には下手に出てた方が良いよ。というか私とダクス以外には下手に出てた方が良い。

 そしてナナはいつもこじんまりを甲羅に乗せてくれてありがとう。





「また遊びに来るね~」



 たっぷりと野生の魔物を撫で回し、ようやく農作業に取りかかる事にした。






 拠点に戻る途中に新しい地下トンネルが出来ていたのでそちらに進む。


 ここで探険ごっこをするのも悪くないな。宝箱を用意したりして。怪我をしない落とし穴も作ってもらおう。あと壁から飛び出す矢。先を布で痛くない仕様にしよう。

 それにしてもアイデアがばんばん出てくるな。才能かしら。



 チカチカさんから誰も(サンリエルさん含む)いない事を確認して小屋に到着。



「おお~」



 謎の感動。


 サンリエルさんの掃除のおかげか埃っぽい感じもしないし居心地の良さそうな小屋だ。まさしく物置小屋。

 農作業の道具も小屋に相応しいさり気ない配置……じゃなかった。あれ明らかに壁に飾られてるよね。

 映画とかで見る壁に飾られている剣で侵入者に応戦するやつだよね。しかも壁にびっしり。一族特有の癖が出たな。多いほど良いっていう。



「――チカチカさん、秘密の通路の入り口ってどこですか?」



 やっぱり気になる。

 悪用はしないけど仕掛けのある部屋とかワクワクする。



「そこの壁と床にスイッチがある。でも罠が仕掛けられてる」


「なにそれ怖いんですけど」



 抜群の警備態勢だな……。


 クダヤの領主が仕掛ける罠は本気でやばそうなので秘密の入り口はなかった事にして農地に向かった。









「へえ~ヤマチカねえ~」

「素朴な顔してるな」



 農地用の門の所にいた地の一族の男性達に身分証と腕の証――マッチャに特殊インクで桜の花びらを描いてもらった――を見せたところ、興味深そう見つめられた。

 全く悪意は感じられないから嫌な気持ちにはならないが、素敵メンズに囲まれているというのに今の格好が悔やまれる。

 せめて髪を可愛くアレンジしてくるんだった。素朴な顔なりに可愛くなれるんです。



「真珠の装飾品てどんなの?」

「ガル族長が興奮してたな~」

「店はいつ営業するんだ?」

「畑仕事?」



 人が増えたし質問攻めなんですけど。

 それにしてもヤマチカの知名度凄いな。名前だけが独り歩きしている。



「真珠の装飾品は見本があったら良かったんですけどすみません。お店は数日中に開けますので良かったら見に来てください。これから種を植えに行きます」



 もっと話術のスキルがあれば良いのにと思いながら質問に答える。

 でも私の会話が弾まない返しにも門番の人達は「店に行くからな!」「無理すんなよ」と陽気に送り出してくれた。優しい。





 ボスナビで自分の農地に到着。

 荷車を引いて完全に農家の人。マッチャのサポートがあるにも関わらずへっぴり腰だったけど。

 近くに砦が見えるし辺りを見渡せば農作業をしている人がちらほらいるので街の外でも確かに安心感はある。ちょうどいい広さだし。



 農作業の経験は無いに等しいがとりあえず種を植えてみる事に。

 どうもこの土のふっくら具合からして簡単に種が植えられそうだ。ありがとうサンリエルさん。

 お膳立てがすご過ぎる。



「よいせ」



 (くわ)を手に取り適当に土をえぐり空いた穴に種を数粒落とす。それを繰り返す。

 地球の畑を思い出し、間隔を空ける、同じ種類の野菜でまとめる、土を盛るという点を意識してみた。

 種類によって違うだろうが、土をかぶせて水をやれば芽は出てくれると信じたい。


 みんなの足跡が土に浮かび上がるのを楽しく眺めながら作業を進めた。

 ダクスは種を植えた真上を歩くんじゃない。






「出来た! 疲れたし腰痛い。後は水――あそこか」



 井戸が少し先にある。

 水運び大変そうだなあと考えていたところでチカチカさんから過保護提案が。



「雨降らす?」


「あー……最初は自分で水をやってみます。ありがとうございます」



 最初だけ水をやって後は自然にお任せする。自然というかチカチカさんだけど。



 木のバケツを持って井戸に向かい、ヴァーちゃん達の水汲みを真似してバケツになんとか水を入れる。

 重い。もうすでに大変。

 拠点の井戸は主にヴァーちゃん達が使っていたので分からなかったが中々の重労働だ。

 おじいちゃんおばあちゃんなのに。一族の人達はやっぱりすごい。



 重いがマッチャのサポートは断わり最後まで自分の力で運ぶ事に。

 自分の力だけでやり遂げたい気持ちが湧き起こってきたのだ。たまに出てくる謎の衝動。

 たった数十メートルの往復で、しかもその他は全部お膳立てされた環境ではあるけど。



 が、3往復した時点でマッチャサポートに頼る事にした。

 根性無さすぎ。これで口だけ人間だという事をさらに証明してしまったな。でも気にしない。



 種植えが終わり地面に座り込んで休憩していると、「荷車で運べば良かった」とチカチカさんの遅すぎるお言葉を頂戴した。



 早く言って。







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