社会不適合女とサバイバル
額を木の幹に打ち付けて、葉菜は我に返った。
信じられないことに、自分はこんな場所、こんな状況で少し寝ていたらしい。いくら疲労困憊であったとはいえ、自分自身にびっくりだ。当たりを見回すと少し明るくなって、辺りが白じんでいた。
朝だ。
お腹がきゅるきゅるとなった。
喉もひどく乾いている。
まずは、水だ。
人間は何日水を口にしなくて生きていけるのだろうか。
ふと見上げると、自分がしがみついていた木の枝に、桃くらいの大きさの赤い実がついているのが見えた。
あれは、食べられるのだろうか。
水分が豊富な果物なら、飢えと渇き両方を満たせる。
しかし他の生き物が食べ掛けた跡がないので、伸ばした手を引っ込めた。毒の有無が分からない。
まだサバイバル二日め。冒険は早すぎる。
コアラのように、食料を独占するために毒に体を適応させている生き物もいるだろうから、せめて二種類の生き物には食べられた跡がないと危険だ。
葉菜は少し惜しそうに目の前の果物を睨んでから、まずは水源を探すべく、木からおりた。
水、
―水源、
―井戸、
―雨水
―川、
―湖、
(あるなら、川かな。多分。)
特に根拠がなくそう思ってから、何かせせらぎのような音が聞こえないか、耳を澄ましてみる。残念ながら姿も見えない生き物の泣き声と、木の葉が揺れる音しか聞こえない。
生き物がいるのだから、水源はあるはず。なら、何かの生き物の跡を追って見るべきか。
(いや、万が一おとなしそうに見えて狂暴な生き物だったら困る)
肉食系兎や、群れで大型生物を狩るリスがいたとしてもおかしくない。なんせここは異世界なのだから。
生態が分からない以上、極力生物との接触は避けたい。
(なら、どうすれば分かる?木の年輪は方角だし、枝の向きは確か太陽の方向?これも方角?根の向きは?…ありそうだけど。川は上流から下流に流れるけど、だから何だし…)
必死に水源を見いだすべく、漫画やら何やらの情報を頭の中で検索をかけてみるが、曖昧で役にたたない知識しか出てこない。
「あー、もう考えても仕方がない!!」
考えて出てこないなら、勘でとにかく動いてみるしかない。
運を天に任せて、適当に足を向ける。
(もしかすると、土の湿りが…)
いまだ諦め切れず何とかいかせる知識はないものか唸りながら、葉菜は水源を探しはじめた。




