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異界山月記 ‐社会不適合女が異世界トリップして獣になりました‐   作者: 空飛ぶひよこ
第三章

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獣とヘタレ

 最初は難しいイメージのやり方だが、回をこなすうちに段々とイメージした事柄が鮮明なものへと変わっていった。

 

 ポイントは、普段意識していなかった現実の事象を意識して捉えることだ。

 例えば、歩くという当たり前の行為を、イメージだけで「歩く」という行為を想定した場合と比較して捉えてみる。歩いた時に自分が体験する感覚を、体の器官にそれぞれ当て嵌めて、分析してみる。

 例えば、木や森をみた時、普段は見過ごしてしまうような、細部までじっくり観察してみる。手触りや、そこに這う虫の動きまで、自分が森を歩いたと想定した時に起こしうるアクションに付随した感覚や、視界に捉えうるものまでイメージを広げながら現実のものとしてみる。

 日常の中に埋没している事象を意識してみた時、世界がいきなり色づいたように感じる。知らない世界に来てしまったかのような戸惑いと不思議な感動があった。

 

 そして世界が色づけば色づくほど、イメージはリアルなものへ変化していったのだ。

 

 当時の葉菜は、最終目的である過去世をみることなどそっち抜けで、そんな「イメージ遊び」とでも言うべき行為に夢中になった。

 大抵は途中でイメージすることに疲れていつの間にか寝てしまうのたが(前世療法は目を瞑ってイメージを集中させるため、大抵は夜眠る前に行っていた)、たまにそれが想像か夢をみているのか分からないような、リアルでフワフワした不思議な感覚に陥ることがあった。

 多分あれを突き詰めれば、「過去世」と言われる前世らしき映像が見れたのでは、と葉菜は思っている。そんな感覚に陥る回数よりも寝てしまうことの方が圧倒的に多かったし、脳を働かせながら眠りにつくのは疲れかとれないことが多かったので、ある程度続けて辞めてしまったが。

 

 魔力をコントロールすることは、きっと目を開いたまま、あの不思議な感覚に陥ることではないだろうか。

 イメージに集中して、自己催眠のような状態に陥ることで、魔力をコントロールする――ファンタジーではいかにもありそうなことではないだろうか。

 

 

 取り合えず目下の目標は、葉菜が既に発動を習得している火魔法か、身体強化の調整を行えるようになること。新しい魔法の習得は取り合えず二の次だ。発動のみを浅く広く持っていても、それを器用に組合せ、状況に合わせて使い分ける戦略的脳みそ等、葉菜は持っていないのたから。

 身体強化は、体内の筋肉の動きが目に見えないが為にイメージを強化するのは難しい。

 ならば自分が最初に習得すべきなのは、火の魔法の調整だろう。

 

 

 葉菜は以前一度あったきりのヘタレ料理人にお願いして(普通にお願いしたはずなのに料理人はブルブル震えて半泣きの状態だった。相変わらず失敬な奴だ)調理に使わない時に、竈の火をつけて観察する許可を貰った。

 本当は一人で外で焚き火でもしたいところだが、火事にでもなったら恐ろしいのでやめておいた。(もしかしたら、火事になりかけるというピンチで、水魔法が習得出来るのではないかと思わないのではないかと期待があるが、さすがにリスクが高すぎる)

 やはり火の使用は責任がとれる人間と一緒でなくてはならない。

 そんなわけで、再度ヘタレにお願いをして(愛らしさ全開ですりよってみせたのに、ヘタレはまた気を失いそうになっていた) 、火の観察時は傍にいて貰うことにした。

 申し訳ないとも思わないでもないが、葉菜の自主トレの時間はヘタレの仕込みの時間のようだからちょうど良いだろう。竈だって複数あるのだから、仕事の邪魔にもならない。ヘタレが葉菜に怯えているせいで、仕込みがやたら手際が悪くなってみえないこともないが、気のせいだ。だって獣の自分は、かくも愛らしいのだから。

 

 慣れろ

 

 そして自分を愛でろ

 

 

 ヘタレのヘタレ矯正の役にもたつだろうし、お互いメリットがあるのだということにしておこう。

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