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異界山月記 ‐社会不適合女が異世界トリップして獣になりました‐   作者: 空飛ぶひよこ
第三章

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獣とお城ライフ5

(ダイエットに良いのは、まずは野菜から、と)

 

 デブネコ扱いに密かに気にしている葉菜は、まず真っ先に温野菜のサラダにかぶりつく。さっと熱を通したカラフルの野菜はまだしゃきしゃきの食感を残しており、上からかけられたちょっと癖があるチーズが混ざったトロリとしたこくがあるドレッシングを纏うと、たまらなく美味しい。

 元々葉菜は、野菜が好きだ。特に緑黄色野菜は、小さい頃から食べるように躾られていた為、一日一回は口にしないと落ち着かない。

 肉食獣だから美味しくなくなっているかもしれないと考えていたが、杞憂だったようだ。味覚補正は生肉を美味しく感じるようになったくらいで、以前美味しいと感じたものは相変わらず美味しいままだ。

 猫科の動物が向いていないタマネギみたいな野菜や、イカのような食べ物も平気だったことを考えると、葉菜のもともとの食の嗜好に生肉が加わっただけのようだ。せっかく贅沢出来るお城にいるからには、森では食べれないものも色々食べてみたいため、実に嬉しい。

 三分の一ほど食べたところで、肉に取りかかる。

 ゴマ状のにんにくもどきが添えられた、香ばしく焼けたステーキ。一口かじれば、半生な中心からじわっとあふれでた肉汁が、かけられた絶品ソースと口の中で混ざりあう。

 

(た、たまらん…っ)

 

 少し食べたら、ますます食欲が湧いた。ゆっくり味わうのはこのあたりにして、獣らしく豪快に食べるとしよう。

 食べ物が飛び散るのも気にせずガツガツと夢中で料理に食いつく。

 合間にペチャペチャと水を舐めるのも忘れない。野菜を挟むのも。

 まさに至福。

 

「……ぐぇっ」

 

 だがそんな葉菜の幸福の時間は、首がしまったことで中断させられた。口に入れた食べ物が変なところに入り、暫し噎せる。

 

(主に逆らっていたりしないのに、何故!?)

 

 慌てて首もとを確かめて、憤然とする。

 エネゲグの輪は発動していなかった。

 ただいつの間にか背後に回ったザクスが、後ろから首輪を引っ張っていた。

 

「ガツガツみっともない。城に養われているものとして、少しは食事の作法を弁えろ」

 

(それぐらいまず口で言いやがれー!!)

 

 口より手を先に動かす悪癖を、なんとかしてくれ。

  というか、獣に食事の作法なんぞ期待するな。

 

 だが反論が許されない葉菜は、ザクスが手を離すなり、しぶしぶと飛び散らないように気をつけながら、ゆっくり食べはじめる。

 美味しかった食事が、少し味気無いものにかわった。

 

 

 水を差された食事が終了すると、ザクスが仕事へ向かうため後宮を後にする。

 そんな「愛すべき主人」を、背中を向けたまま尻尾を振ってやることで見送ると(当然どつかれたが、後悔はしていない。従獣の主への思いだ。心して受け取れ)、ザクスがいない開放的な時間が始まる。

 かといって、これからザクスか帰るまでは葉菜の自由な時間かと言うわけではない。

 

「さて魔獣殿。昨日の続きから初めますぞ」

 

 足元まで届くかというくらい長い真っ白な顎髭を持つ好々爺然とした80歳くらいの老人が、笑いながら口にした言葉に葉菜は頷いた。

 

 お城でのお勉強の時間のはじまりだ。

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