表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界山月記 ‐社会不適合女が異世界トリップして獣になりました‐   作者: 空飛ぶひよこ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/136

獣とお城ライフ2

 ザクスはそんな葉菜のコンプレックスを突きつけた。

 

(コロス)

 

 立ち上がっていた尻尾が、ゆらりと揺れた。

 

 

(噛みコロス裂きコロス……あと何だろう?圧死か?お前がデブと抜かしたこの躰に潰されてみるか?)

 

 まあ、実際殺せはしないだろうが、腹を蹴られた分の報復することくらいは許されるだろう。

 そう思って飛びかかろうとした瞬間、首に嵌められた輪がしまった。

 蛙が潰されたような声をあげて突っ伏した葉菜をザクスが冷たく見下ろしていた。

 

「何度エネゲグの輪に罰せられれば気がすむ……低脳が。いい加減学習しろ」

 

 葉菜はベッドに顔を押し付けながら、ぎりと歯ぎしりをした。

 

 

 首に嵌められた主従契約の証であるエネゲグの輪は、さながら孫悟空の輪のように締め付けによって、契約違反の行動をとったものを罰する。

 その基準は輪の判断による。従属の立場にあるものが、主を害そうとするのはアウトらしい。庇護すべき対象を蹴り飛ばすのは大丈夫なのに、理不尽だと思う。

 

(そもそも輪のサイズ自体が不公平なんだ)

 

 葉菜が突っ伏したまま恨めしげに見上げたザクスの指には、葉菜の首にはまっているものと同じような指輪がはまっている。笑えることに、よりにもよって左手の薬指にだ。

 この指輪も葉菜の首輪同様、持ち主が契約を果たしていないと判断した時に締め付けによって、罰する。

 だが、考えてみてほしい。

 

 首を絞められれば死ぬが、指を絞められても死なない。痛いだけだ。

 そんな代償が違い過ぎる罰が対等であるはずがない。

 だいたいザクスは自分の薬指一つくらい平然と切り落とせそうな男だ。あまり罰の意味がない気がする。

 

 

 訳がわからぬ間に結ばれた主従の契約。

 つくづくあのとき名前を教えてしまったのかと、心底悔やまれる。

 なぜ名前の意味を教えてくれなかったのか、とジーフリートを恨みたくなる。

 教えてくれていたのに、言葉が理解出来ずに、何となく頷いてスルーしていた可能性も大いにあるが。

 

 

 

 

 

 

「遅い!!もっと足を速く動かせ!!」

 

(なんで、こんなことに)

 

「身体強化を使うなっ魔力の無駄遣いだし、訓練にならない」

 

(使うなって言われても勝手になるんだよー!!)

 

 広大な後宮の庭園の外周を、葉菜はザクスに怒鳴られながら走り回っていた。

 そう、葉菜が住んでいる離宮は、何を隠そう王族専用の後宮なのだ。

 数年前に昼ドラ展開のゴタゴタがあり、今や住まう女性が居なくなっていた後宮を、皇太子であるザクスは都合が良い隠し場所だからと葉菜にあてがった。

 葉菜は後宮の唯一の主であり、性別を考えるとただ一人の皇太子の寵姫というよう。

 女性向けファンタジーで後宮入りは珍しくないが、葉菜のような形で後宮入りをはたした話はあっただろうか。しかも獣として。

 びっくりするほど嬉しくない。

 

「身体強化を使うなと言っているだろうが!!だから筋肉がつかずデブネコのままなんだ」

 

(またデブネコ言いやがった~っ!!)

 

 

 足に力を入れて、瞬発力を高める方法。実はあれは獣の能力ではなく、葉菜が有する「魔力」を無意識で使用しているらしい。

 そう、この世界には魔力がある、完全にファンタジーの世界らしい。おまけに葉菜は魔力を持っていて、無意識のうちに行使していたらしい。

 今まで「異世界補正」と呼んでいたもののほとんどが魔力故だとわかり、納得してしまった。どうりで色々と葉菜に都合が良すぎることばかり起こるはずだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ