社会不適合女の半生と仕事
昔から「変人」と呼ばれていた。
会話が噛み合わない。思考回路があさっての方向を向いてる。
物の整理や身支度は苦手だったし(学生時代の机の中はプリントがぐちゃぐちゃに詰まっていたし、顔に歯みがき粉を浸けっぱなしで登校するなんてしょっちゅうだった)、手先が不器用で(プリントが綺麗に二つに折れない)ドジだった。(多分小学生のころ、うっかりどぶにはまって、びちゃびちゃになった回数は誰にも負けない)
いつも何かしら浮いていたような気がする。
ただ、そんな葉菜を面白がってくれる人はいつも一定数存在したし、勉強もそれなりに出来たから、特に深刻な問題にはならなかった。
まずいな、と心底思ったのは、進路も深く考えずに地元の国立大学の文学部に進学してからだった。
いくつか行ったアルバイト。繰り返すドジの連続。皿を割ったり、釣り銭を間違えたり、客と意思疏通が取れなかったり、はっきりいって、自分は「使えない」アルバイトだった。
どんなに気をつけているつもりでも、繰り返してしまうアホな行動の数々。
(自分は、本当に社会人になれるんだろうか)
凹んではサークルの飲み会でネタにして笑われる日々を送りながら、そんな不安を葉菜は内心抱えていた。
やれること、やりたいことも思い付かず、取り敢えず始めた就職活動は散々だった。汚い字で写真の切り口すら気にしない雑な履歴書を出していたのだから、当たり前かも知れない。
だけど、そんな葉菜の気質を面白がった、準都会で小売業をしている小さい会社の社長 が、葉菜を拾った。多分学歴が決め手だと思う。
田舎からは新幹線を乗り継がなければならない、都会の地。もしかしたら自分は変われるかも知れない。葉菜の心は踊った。
しかし、人間そんな簡単には変われはしない。
「気が利かない」
「口ばかりで行動に移さない」
「我が強い」
「ものを出しっぱなし」
「他人に関心がない」
「話し方がおかしい」
「仕事の漏れが多い」
「だらしない」
「不器用」
「報・連・相が出来ない」
「思考回路がずれていて、常識がない」
「ネガティブ」
「売上が作れない」
etc.etc.…
想定した通り、葉菜は販売業に向いていなかった。いや、仕事全般向いてなかった。
自分なりの努力は身を結ばずに空回りばかりで、まわりの冷たい目線や呆れた声が葉菜の気力を奪っていった。
同期や後輩からも置いていかれ、もはや何をすれば良いのかも分からない。
「ごみ社員」と罵りながらも、根気強くまだ上司は自分を叱ってくれてはいるが、見棄てられるのは時間の問題だろう。




