社会不適合女とサバイバル6
自分が嫌いだった。
いつも自分のことばかりで、コミュニケーションが下手くそで、向上心もなく、ネガティブで、ドジで
欠点を上げればキリがない。
その癖、特別優れた長所もない。
いっそいない方が自分にとっても、回りの人にとっても良いのではとすら思う。
中身も外見も完璧で才能に溢れた人間に生まれ変わらせてくれる保障があれば、いつでも喜んで自殺していた。
だけどそんな保障あるわけなく。
それどころか輪廻転生すらある保障がない。
死が「無」であるなら、葉菜が存在し続けるための、消えないための唯一確かな方法は、「齋藤葉菜」として行き続けることだけだ。
だからこそ葉菜は、自分がどんなに愚かでも、自分自身に固執する。
その様がどんなに醜くみえようが、他人から蔑まれようが、自身の生にしがみつく。
葉菜は動かない体無理矢理動かして地面を這った。動いたところでなんとかなるとは思えない。
だが、動こうとしなければ、動こうと意識を持たなければ、意識が飛んでそのまま死んでしまうのではないかと思うと、足掻かずにはいられなかった。
もし端から見たら、地を必死に這う自分の姿は、どれほど惨めに見えるだろうか。
だけどそんなことはとうだって良い。
(―何だってしてやる)
生きられるなら、存在し続けられるなら、葉菜はどんなに醜いことだってする。
体を売っても構わないし、他人だって傷つける。
だから、だから
「―だれ、か…」
すがるように伸ばした手は、そのまま宙をきるはずだった。
だれかがその手をタイミングよく握ってくれるとは思ってはいない。
だが、葉菜の手は、先程までなかった何かに当たった。
「―え………」
ぼやけた視界に映ったものが、信じられなかった。
この世界に来てから、必死に探しても見つからなかったもの。
葉菜の手が触れたのは、扉だった。
いつのまにか目の前には、木造の小さな家があった。
(これは死の間際に作り出した都合の良い夢だろうか)
屋根につけられた煙突から細い煙が出ていて、家主の存在を葉菜に伝えていた。
都合の良い夢でも、構わない。
生きられる可能性があるなら、葉菜はすがる。
生きられるなら、何でもする。
醜いことも、人道に外れたことも
だから、
「……助…けて!!」
最後の力を振り絞って扉を叩いた。
意識は朦朧として、目の前は真っ暗になっていたが、手だけは動かし続けた。
体全体を預けていた扉が、確かに動いたのを感じながら、葉菜は意識を失った。




