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異界山月記 ‐社会不適合女が異世界トリップして獣になりました‐   作者: 空飛ぶひよこ
序章

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社会不適合人間論

社会不適合女が、異世界にトリップしてなんか特殊な能力得たら、生き残れるのか。

本当は引きこもりたいのに

世の中はきびしい。

 世の中には、社会不適合人間というものがいる。

 

 普通に考えて、普通に会話しているはずなのに、周囲に怪訝な顔をさせてしまう人間だ。

 

 自分では当たり前のことをしているのに、いつの間にか『変人』のレッテルを貼られてしまう。

 

 皆が当たり前にしていることが、出来ない。周囲から遠巻きにされ、孤立する。

 

 

 子ども時代は、まだいい。排除されていない同じ社会不適合予備軍の仲間は一定数いる環境ではあるし、自分よりひどい仲間がスケープゴートになってくれる。

 

 学生時代も、まあいい。子ども特有の残酷さで虐めの被害に遭い、この時代こそ地獄だというものもいるが、何せまだ親の庇護下にある。毒親という不憫な環境でなければ、守って貰う権利を堂々とかざして良い立場だ。また、『個性』という逃げ場もある。スケープゴート仲間も年をとっていくうちに数が減りながらも、まだまだ存在している。

 

 問題は社会人になってからだ。

 

 ある程度厳選され、個々の能力が平均値が上がった「社会」は、社会不適合人間にとって非常に住みづらい場所である。絶え間なく襲い来る「理不尽」と「不本意」の数々。耐えきれずに逃げだそうにも、「大人」という肩書きが、それを許さない。

 全てを放り出した瞬間、襲いくる世間の冷たい目が、後退しようとする足を踏みとどめ、さりとて前進することも出来ぬまま縛られる。

 当たり前のことですら困難なため、仕事のスキルアップもままならない。結果、「無能」の称号を貼られて、会社の中で孤立する。

 

 社会人は社会不適合者にとってもっとも辛い時期だと思う。

 

 あくまで私見である。

 

 もっと早くに挫折にあった人間は、「それはお前が幸せな過去があったから」と、否定し、スケープゴートにされていたことを怒るかもしれないし、苦もなく社会に溶け込めている人間には分からないかもしれない。「社会人が辛いのは当たり前」と言われるかもしれない。

 

 

 まあ、何が言いたいかというと

 

 

「本当使えねーな。何度言ったら分かるんだ。ごみ社員が」

 

 

 斎藤葉菜。24歳。社会人歴、間もなく三年目。

 

 そろそろ完全に社会をドロップアウトしそうです。

 


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