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マーク君の学園生活  義父は英雄 義妹は聖女 叔父は宰相やってます  作者: お冨
第十章 古き血脈

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強行軍

 なんとか週末更新間に合いました。セーフ(笑)

 キャンピングカーもどき。それが馬無し馬車の名称だった。

 命名者は義妹のミリア。

 分かってる。ミリアは適当に呼んだだけだろ。じゃなきゃ、もどきなんて不穏な言葉が正式名称になるはずない。


 聖女様のお言葉は神託あつかいされるって、本当に影響力が半端ない。ミリア、自重しようよ。

 ところで、キャンピングカーって何なんだろ。


 大きさ的には、キャラバンに使う大型の幌馬車くらい。修学旅行で便乗させてもらったから、良く知っている。

 積み荷でぎゅうぎゅう詰めじゃない分、広々と感じる。天井、高いしね。


 幌馬車と違うのは、箱馬車のようにちゃんとした壁と床があること。

 で、その空間に、ソファーベッドとミニテーブル、簡易トイレとミニキッチン、シャワールームまで完備してるんだ。

 これもう、住めるんじゃないかな。


 キャラバンが通る主要街道なら通行可能。馬を含まない荷台部分だけだから、取り回しは良いらしい。

 ただし問題なくとは言い難い。とんでもないスピードで爆走するから、ずっと警報の(かね)を鳴らして、周囲に()けてもらってる。

 通行人の皆さん、お騒がせしてごめんなさい。 


 馬車は馬を休ませるために、乗客のトイレ休憩も兼ねた小休止が必要になる。キャンピングカーもどきはどちらも必要としない。

 ほとんど揺れが無いから、乗り物酔いを気にせず、車中で食事だってできてしまう。

 ソファーベッド使って車中泊するから、いちいち宿を取る必要がない。それどころか町にすら立ち寄らない。

 キャンピングカーもどきの中で全部完結してしまって、なんだか、船旅みたいだ。


 文字通りの強行軍で、三日目にはバルトコル伯爵領に着いてしまった。

 王都からは乗合馬車を乗り継いでふた月、スピード最優先で夜駆けする早馬でも十日掛かるんだけど。それを三日って。

 神代の乗り物、半端ないよ。


 バルトコル伯爵領はデルスパニア王国の東端、ここから先は辺境の荒野を超えて、隣国トマーニケ帝国へと続く。

 他国なら辺境伯領と呼ぶべき土地だ。


 領都の中心にあるバルトコル伯爵邸は、王都のデイネルス侯爵邸を一回り小さくした印象だった。それでも立派なお屋敷。

 当然、高い塀と立派な門があるんだけど。


 この塀、防犯には役に立ってないよね。

 一応鉄格子だけど、間隔ゆるゆるで痩せた人なら大人でもすり抜けられるよね。

 中に入り込んだ子供が庭ではしゃぎまわっているよね。


 高位貴族の常識がガラガラと崩れる幻聴を聞いた気がした。





「驚いたかな、マーク」

 そう言って、出迎えてくれたカレスン・バルトコル伯爵が僕の頭をポンポンと叩いた。幼い子供あつかいはちょっと照れくさいけど嫌じゃない。


「地方の領地持ち貴族は、それこそ千差万別なのだ。バルトコル伯爵家は、領民と距離が近い方でな。トマーニケ帝国との交易が盛んで人の出入りが多いし、商人が力を持ってる。平民と貴族の垣根が低い」


 んんん?  でも、女伯爵閣下は王家の血を引く高貴な方でしょう。病弱でほとんど引きこもりだったんじゃ。


「この塀というか、(さく)を造ったのは数代前のご当主でな、言葉を残されておる。警備兵の手に負えないほど領民が押し掛けて来るなら、そこまで追い詰めた家など潰れてしまえばよいとな。正門脇の柱に刻まれておるから、後で案内しよう」


 そう言ったカレスン卿は、寂しそうに見えた。


 領民を追い詰めたわけじゃないけれど、バルトコル伯爵家は終焉を迎えようとしている。

 そうしたら、その柱も撤去されてしまうんだろうか。


 伯爵邸の前庭で鬼ごっこしている子供たちを見ていると、なんとも複雑な気持ちになった。





 



 三日間の強行軍。あれよあれよという間に終わりました。

 危篤の母親に駆け付ける侯爵夫人相手では、気楽なおしゃべりなどできず終い。

 久方ぶりに実家へ里帰りすることになったキャサリン母上の複雑な境遇を思えば、思い出話をねだる訳にも行かず。


 全然話が弾まない三日間でした。


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。


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