サウザンド商会
おそくなりましたー。
誤字報告、ありがとうございます。
追記
新年を迎えて、恒例の正月特番の短編を書き始めたのですが、長くなってしまいました。スピンオフとして連載中です。なんとか一月中に完結させたい(;^_^A
シリーズから行けますので、覗いてみて下さい。
世界屈指の大都市、デルスパニア王国王都デルーアの商業地区に、サウザンド商会の本店は在り、王都屈指の大商会と目されている。
元々は戦乱の時代に消滅した小国の王族、ということになっているが、はっきり言って眉唾だ。デルスパニアの王侯貴族の祖先が天津箱舟でこの地に降り立った神様だったという伝説並みに、信憑性が無い。
確かなのは、ある程度まとまった資産を抱えて亡命してこれるだけの地位を持っていたこと、中継貿易で栄えていた小国の特徴的な話し方をしていたこと、やり手の商人で、あっという間にサウザンド商会の基盤を築いたこと、等々だった。
順調に業績を伸ばし代を重ねて、更なる高みを目指そうと隣国の新興商会の次男を婿に迎えたまでは良かったが。
「トマーニケ帝国と戦争になってしまいましたやろ。せっかくエバンス商会と業務提携したのに、裏目に出てしもたんや」
男子寮の玄関入ってすぐのラウンジで、コーカイがあっけらかんと言った。
「まあ、わし一人息子でっさかい、半分トマーニケ人の血ィ入っとるゆうても跡継ぎから外せませんで。父親のマイナス分、なんとか挽回するために爵位狙うことになりましたんや」
商人が家業で男爵に叙爵されるための条件は二つある。年間の納税額が基準を十年連続で上回ること、かつ、商会長が王立高等学園、通称貴族学園を卒業していること。
サウザンド商会は、納税額については余裕でクリアしている。もう一つの条件を満たすために、跡取りのコーカイを貴族学園へ入学させたわけだ。
「騎士爵狙うだけなら、学園は必要有りまへんけどな。一代だけの下位貴族なんて、ありがたみが薄いゆうか、肩書にしかならへんやんか。中位貴族の男爵なら世襲やし、家を貴族にしたっちゅう功績なら、父親の件があっても次の商会長の座は安泰。そういう計算でおましたんや」
「へえ、そうなんだ」
ライナーがいつもの調子で相槌を打った。この間の事情説明の影響は全く感じさせない。さすがメンタル強いな。
「そやけど、今は評価逆転しましてんで。何しろ、神の恩寵の運河でっしゃろ。御神託でしたか、神様のお告げで海峡の場所教えてもろたさかい、トマーニケ帝国と直接交易できますやん。エバンス商会との提携が先見の明に早変わりですわ。ワシの父親かて立場強うなりましたわ」
笑いが止まらないって顔してるぞ、コーカイ。
実はミリアの功績は運河発見って思われている、らしい。
海峡など影も形も無いただの荒野だったと知っているのは、学者か国の上層部くらいのものだ。
まあ、神様が一瞬で運河掘ったって言うより、元からあった場所を教えてくれたって方が信じられるよな。
「今まではトマーニケ帝国との交易はバルトコル伯爵でおましたけど、これからはランドール伯爵や。マークと同級生になれたんは望外の幸運でおま。これからも末永ごう、よろしゅうお願いしますわ」
「こちらこそよろしく」
がっちり握手したところを、通りがかりの生徒がちらちらと見ている。今日中に僕とコーカイの仲が良好だと広まることだろう。
学生寮の部屋割りは、卒業するまでそのままだ。よほどのことが無い限りルームメイトが変わることは無い。
僕とライナーの部屋に、今日はコーカイも同席している。
「いやぁ、あれから、カール伯父さん、大慌てでトマーニケ帝国へ帰りましてな。祖母ちゃんと祖父ちゃんに問いただして、こっちへトンボ返りですわ。祖母ちゃんがな、その、第三夫人やったってのは聞きましたけど、そっから先は知らん方がええ言われてしまいましたわ」
そっか。まあ、平民が高位貴族のゴタゴタに首突っ込んだらリスクしか無いしな。
「表向きはクラスメイトの誼ちゅうことにして、親戚づきあい出来たらと思てますねん。従兄弟ゆうたら、家族同然から他人同士まで、いろんな関係がありますやろ。無理に今までの関係壊さんでもええ思いますねん」
それは僕も同感。
じゃあ、これからも仲良くしようか。
大きな声では言えないけど、バルトコル伯爵家は今代で消滅が決まってる。
その後なら、気兼ねなくトマーニケのお祖父様とお祖母様に対面できるだろうか。できると良いな。
年末、繁忙期に入ってます。週末更新、続けられるかな。頑張ります。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。




