若きライナー君の進路
先週、先々週とお休みいただきました。何年かぶりに寝込んだインフルエンザ、マジできつかったです。せき込み過ぎて脇腹、多分横隔膜あたりが筋肉痛になりました。
本格的な冬間近、皆様もご自愛ください。
シリーズ本編は、目次のタイトル上のシリーズ表示から飛べます。オスカー君の活躍、楽しんで下さいね。
ネタバレ有りなので、悪しからず(笑)
長期休暇が終わって、学園の後期が始まった。
頭の中は家のことでごちゃごちゃしてるけど、そんなこと関係なく日常が戻ってきた。
僕ら三年生は、必要な単位取得の最後の追い込みに入る。
単位が足りなければ卒業できずに退学になる。卒業できなきゃ家督を継ぐ資格なしと判定されてしまうから、みんな必死だ。
理由が怪我や病気なら成績不振とちがって不名誉にはならないけど、家督を継げないことにかわりない。
テムニー侯爵第二夫人のアリス伯母様がこのパターンだった。
もし伯母様が学園を卒業していたら、テムニー侯爵と離縁してバルトコル伯爵家を継いでいた可能性があったらしい。
そうなったらそうなったで、またぞろ後継者問題が持ち上がるんだけどさ。
従兄弟のサミュエル兄さんは一人っ子だから、テムニー侯爵家とバルトコル伯爵家で取り合いになっただろうな。
卒業単位を揃えてしまうと、スケジュールに余裕ができる。
興味本位で選んだ授業を受けたり、将来を見越してコネを作るべく社交に精を出したり、就職活動をしたりするんだ。
その就職活動だけど、去年から、もっと言うとタムルク王国との戦争から様変わりしてる。
ミリアが神代古語でサンギョウカクメイとか言ってた大変革だ。侯爵家以上の高位貴族が中心になって、大量生産を始めとした新しい産業形態を導入している。
おかげで求人がとんでもなく増えて、卒業生は引っ張りだこ。
元々学園を卒業すれば喰いっぱぐれないって言われてたけど、今じゃ平民だってお貴族様並みの好待遇な仕事が選び放題だ。
「だからさ、ライナーだっていくらでも王都に残れるんだよ。ミリアのアシスタントで漫画描いてたんだから、最先端の情報に触れてただろ。国の文官だってなれるし、このままミリア専属になってもらっていいし、なんなら正式にランドール伯爵家で雇うし」
僕が言う隣で、コーカイが口を開いた。
「そうでっせ。お貴族様が堅苦しいて苦手や言うんなら、わしんとこの商会に就職してもらいたいですわ。ライナーやったら大歓迎や。ドーンとでっかい商売やりまひょ。雇われるのが嫌や言うんなら、自分で起業する道かてありまっせ。いくらでも頼ってくんなはれ」
「んー、でもなぁ」
肝心の本人は、気の抜けた返事だ。
卒業まであと半年になって、Aクラスで将来が決まってないのは、僕とライナーの二人だけだ。
ライナーは腐っても三年間Aクラスを維持し続けた実績があるし、進路は選り取り見取り。今のデパ国なら、聖女様のコネは王家以上だったりするんだよ。マジで最強。
「俺、村に帰るつもりなんだけど。なんとか開拓成功判定貰えそうだし、村長さん、男爵に叙爵する当てが出来たし。正式に領地として認められたら、やる事山積みで俺でも役に立てると思うんだ。そうじゃねぇ」
確かにそうなんだけどさ。故郷が大事ってのは分かるけど、正直勿体ない。
ニーナ義母さんの実家が開拓村から昇格した男爵家なんだけど、規模拡大できないまま小さい村一つだからなぁ。
ツオーネ村と似たり寄ったりの田舎じゃ、ライナーには狭すぎると思うんだ。
「あのさ、マーク、マークの親父さんだって、ツオーネ男爵の入り婿に戻りたがってるんでしょ。大将閣下には不釣り合いな望みだけどさ、平民の俺ならおかしくないと思わねぇ」
うぐっ。オスカー義父さんはなぁ。それを言われると反論できない。
「あんなぁ、ライナーには勿体ない言うんなら、ライナーに相応しい場所に育て上げたらどないでっしゃろ。ライナーのとこ、カース公爵領の縁でっしゃろ。土地が余りまくってる辺境なら、いくらでも開拓できるん違いまっか。何やら産業誘致するなり、新しい街道引っ張ったり、サンギョウカクメイに乗っかればいくらでも遣り様おまっしゃろ」
コーカイの言葉に、ポロリと目からウロコが落ちた。
そうだよ。辺境だっていくらでも発展できるよ。ランドール伯爵領って見本があるじゃないか。
「国全体の開発計画とか、一枚かみたいとこでんなぁ。マーク、デイネルス侯爵閣下につなぎ取れまへんやろか。宰相様は無理でも、女侯爵閣下にお会いできたら嬉しおま。ライナーのためなら一肌脱いでもらえるちゃいます」
リアーチェ叔母様か。奨学金騒動でお世話になった時、ライナーの事気に入ってくれたし、話だけなら聞いてもらえそう。
「いやちょっと、話が大きくなってねぇ。ご迷惑じゃ」
やだなぁ、ライナー。話を持ってかない方が拗ねるよ、叔母様なら。
コーカイ君の似非関西弁が悲惨なことに。
マーク君、使えるコネは何でも使い倒せる図太さ持ってます。
うーん、天津箱舟由来のあれこれを使えば、ライナー君の故郷だって大都会まっしぐらでしょう。例のビート板使った船用の運河網を整備したりして。
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