親子の会話
なろうチアーズプログラムとやらに参加してみました。よろしくお願いいたします。
デアモント公爵が、キャサリン母上にプロポーズした。この暴挙を、オスカー義父さんが許可していたと判明した。
「普通に考えて有り得ない。キャサリン母上は父上の第一夫人なんですよ。略奪婚申し込む方も受け入れる方も、常識どこやったんですか」
「あー、マーク、気を鎮めてくれないか。大声で怒鳴られるより怖いから。それに、二人だけで話すのは初めてじゃないか。落ち着いて話さないと勿体ないぞ」
怖いって何さ。オスカー義父さんは海軍司令官閣下でしょうが。子供一人に気圧される軍人なんて居るわけないでしょ。
ん。でも。
「初めて、でしたっけ」
「ああ。俺はほとんど家に帰れなかったし。たまの機会は、家族みんなとだった。と言うか、マークはキャサリン義姉さんかミリアと一緒だったろう」
言われてみれば。二人っきりは本当に初めてだ。
「ごめんな。父親らしいこと何もできなくて。家のことはニーナとキャサリン義姉さんに任せっきりで。マークは本当に良い子だよ。良い子過ぎて、心配になるくらいに。ランドール伯爵家の後継を辞退したのも、ミリアやカークに譲るためだろう。もっと貪欲になってくれていいのに」
「違います。本当に要らないんです」
駄目だ。オスカー義父さん、生ぬるい顔してる。ええい、そんな事より。
「話を逸らさないで下さい。そもそも何でデアモント公爵に許可出したんですか」
「そうだね。いい機会だし、そもそもの話をしようか」
「まず、政略上の理由。これがメインじゃないけど、周囲に受け入れられやすいという点で重要になる。分かるだろう」
まあ、それは。
「例の契約結婚の後始末で、マークはデアモント公爵家に籍を入れなきゃいけない。それが一時的なものになるか永続的かは、まあ、成り行き次第だな」
オスカー義父さんが、いかにも不本意ですって顔で言った。
「契約結婚の条件だからという理由では、高位貴族、それも侯爵以上でないとすんなり納得しないだろう。ただの口実で公爵家に無理やり押し掛けたって邪推されるだろうし、一々契約内容と破った時のペナルティを説明して回るなんて無理だ」
たしかに。
そもそも契約相手のバルトコル家はすでに爵位返上して消滅している。そんなもの無視すれば良いと思う者は多いだろう。
「ここでキャサリン義姉さんがデアモント公爵と再婚すれば、マークは連れ子だ。連れ子を養子にして跡を継がせるなんて、そこらへんにいくらでも転がっている話だからな。契約結婚云々より、よほど通りが良い」
「それはそうでしょうけど、キャサリン母上への風当たりが酷くないですか。今は伯爵夫人だけど、元は子爵夫人ですよ。そこから公爵夫人なんて、エザール叔父さんより格差有りますよね」
子爵家からデイネルス侯爵家へ婿入りしたエザール叔父さん。今でこそ宰相として辣腕振るってるけど、結婚当初の苦労は察して余りある。
公爵はさらに上の爵位。おまけに母上は初婚じゃない。条件が悪すぎるだろ。
「そこは大丈夫。キャサリン義姉さんはミリアの義母だ。聖女様の影響力は国を動かすからな。ありがたくないけどな」
そうですね。オスカー義父さん、聖女様の実父ですもんね。そこらへんは良ーく分ってそうだなぁ。
「次に本当の理由だけど。俺は、キャサリン義姉さんに幸せになってもらいたいんだよ」
「俺はツオーネ男爵家の婿養子だった。ランドール家に戻ったのは、上の兄貴、マークの父さんが亡くなったからだ。キャサリン義姉さんの虫除け係になるためだったんだ」
「虫除け係、ですか」
その頃のことは何となく知っているけれど、こうして正面切って話してもらうのは初めてだ。
「リアーチェ義姉様が言ったんだよ。ランドール家を乗っ取るためにキャサリン義姉さんと再婚しようなんて不届き者が湧いてくるって」
リアーチェ叔母様が。
デイネルス女侯爵閣下の威厳にあふれた姿が思い浮かんできた。
「キャサリン義姉さんとは形だけの結婚で、俺は夫の務めを何一つ果たしてこなかった。第一夫人としての責務だけを負わせてきたんだよ。今だって王都の伯爵邸の管理を全部押し付けている状態だ。伯爵夫人なのに、俺がエスコートできないせいで、夜会の一つも出席できてないし」
「それは仕方ないんじゃ。だって父上も出席できてないでしょう」
戦争には二度駆り出されたし、平時だって軍務で長期出向ばかりしてたし。今は港町マイヅルで海軍を一から構築していて、王都には戻って来れないし。
「マーク、正直に言ってくれ。キャサリン義姉さんは幸せだと思うか。今以上に幸せになれる可能性があるなら、選ばせてあげたくないか」
それは………。
「実を言うと、デアモント公爵が許可を求めてきたのは初めてじゃないんだ。キャサリン義姉さんと節度あるお付き合いをしたいって申し出があった。マークを引き取る下地を作るために親交を深めたいという理由で」
「ちょっと待ってください。聞いてない。いつの話ですか」
「マークが学園に入学してすぐだった……けど。キャサリン義姉さんから聞いてなかったか」
聞いてない。聞いてないよ。そんなことになってたなんて。
ううむ。書き切れなかった。次回に続きます。
家令のリカルド・オーエンさん、知ってて黙ってたのは、この縁談纏めたいからでしょうね(笑)
オスカー君、仕事が忙しすぎて家庭を顧みる時間を作れませんでした。ニーナさんが肝っ玉母さんタイプでなかったら、熟年離婚案件になってたかもです。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。




