おつかい
短い。短いですが、ここで切らないと長くなりすぎてしまいそうで(;^_^A
急に季節が進みました。玄関脇の金木製が咲きましたが、香りがほとんどしません。夏の酷暑の影響でしょうか。
学園の長期休暇はあとわずか。そんなギリギリのタイミングで、僕はランドール伯爵領へトンボ返りすることになった。
予定外にも程がある。
つい先日通った道筋をキャンピングカーモドキで逆走して、夜間はそのまま車中泊。寄り道無しで、食事やトイレだってキャンピングカーモドキの設備で済ませた。
一歩も外へ出ない、まるで船旅のような強行軍。
バルトコル女伯爵の臨終に駆け付けた時に、二度と御免だと思ったんだ。まさか数年で再体験する羽目になるとは。
港町マイヅルの海軍基地に乗り付けたけど、僕はあくまで民間人。私事で軍事施設に入るわけにはいかない。
正門入り口でオスカー義父さんに面会を申し込んで待つことしばし。
領都からこっちへ戻ってる筈だから、すぐに連絡付くだろうって当てにしてたけど。
敷地奥から猛スピードで小型の馬無し馬車がこっちに来た。前面の大きな窓には運転するオスカー義父さんの姿が。
「どうした、マーク、何かあったか」
焦った声は、威厳とか全く無くて。
オスカー義父さん、貴方は海軍の総司令官です。この基地の司令です。
部下の一人も連れずに、フットワーク軽すぎでしょ。仕事は暇なんですか。
案内されたのは、海軍基地に隣接する兵舎の一室だった。
個室ではあるけれど、ベッドと机とクローゼット以外に何もない。学生寮より、ちょっと狭くないか。
「いや、将官用の官舎はちゃんと作る予定だし、予算だってついてるんだ。ただ、俺は単身赴任中だし、優先順位は俺の権限でどうにでもなるし、後回しにしてるだけで」
オスカー義父さんはあくまで仮住まいだからこれで充分と言ってるけど。
司令官が一つ屋根の下って、他の人たちの迷惑になってるでしょ。絶対精神衛生に悪いよ。
「それで、急にどうしたんだ」
「分かってて言ってるでしょう、父上。そも、デアモント公爵閣下に何言ったんですか」
オスカー義父さんの目が泳いだ。
「あー、マークに話さなきゃいけないのは分かっているんだが。その、な」
「王都のランドール伯爵邸で、閣下がキャサリン母上にプロポーズしました。僕はその場にしっかり同席しましたよ。先日、閣下が父上を訪ねて来られたのはプロポーズの許可を得るためだったとか。何考えてるんですか」
キャサリン母上はランドール伯爵家の第一夫人なんですよ。略奪婚を申し込むなんて暴挙、普通します?
あまつさえ受け入れるなんてあり得ないでしょうがっ。
オスカー君とマーク君の親子の会話(笑) じっくり書きたいので次週に回します。
相変わらず威厳と無縁のオスカー君、情けないけどやる時はやる人なんです。一応、有能なんです。でなきゃ救国の英雄呼ばわりされません(笑)
オスカー君の活躍が知りたい方は、シリーズ本編をどうぞ。目次のシリーズ表示から飛べます。
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