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その頃合田たちを乗せた救命ボードが無事に東都港に停まった。東都港には大野と沖矢を乗せた覆面パトカーが停まっている。
合田と京宮の2人は救命ボードを降りた。そして合田は京宮に手錠をかけ、彼を大野が運転する覆面パトカーに乗せた。
東宮たちは警察に連行されていく京宮を茫然として見ていた。
不謹慎にウキウキとしていたのは式部香子だけだ。そんなに警視総監賞が欲しかったのかと宮本栞は呆れた。
午前10時。京宮は警視庁に護送された。これから彼は捜査一課による取り調べを受けることになる。
工作員Sが逮捕されたというニュースは公安調査庁にも届いた。
翌日そのことを受け合田は浅野房栄公安調査庁長官に呼び出された。
「工作員Sを逮捕したそうだけど、どうするつもりなの」
「殺人犯として送検する。京宮は藤原高明を殺した。その証拠も揃っている」
「分かっていないのね。彼はただの殺人犯ではないのよ。彼はこの国で諜報活動をしていたエヌビアン共和国の工作員。彼はこの殺人以外にも多くの事件を起こしているの。彼は公安によって逮捕されるべき犯人。警視庁上層部はありふれた殺人犯ではなく、国家を揺るがそうとしたテロリストとして扱うでしょうね」
「13年前の現金輸送車襲撃事件の真実はどうなる。あの事件で命を失った桐壷若菜は事故死だったと彼は供述しているが」
「真実が覆されることはないと思うわ。マスコミと警察組織が作り出した真実を覆すことは不可能に近いから」
「必ず真実を覆す。俺は京宮の供述を信じることにしたからな」
その頃式部香子と宮本栞は横浜の繁華街を歩いていた。
「あなたのお父さんにこのことを報告しましたよね」
「昨日やったよ。電話でね。それよりも警視総監賞がどうなるのかが気になる。いくらくらい貰えるかな」
「そのことについてですが、あなたは電話でお父さんに報告しましたね」
「そうだよ。私はファザコンだから毎日1時間くらい電話しているんだよ」
「それならご存じですよね。国際電話の通話料金がいくらなのか。あなたのお父さんがいつからブラジルにいるのかは分かりませんが、その生活をしていると一か月の通話料金が3万円を超えることもあるそうです。海外の通話料金は国内の通話料金より高いです。今後はメールでやり取りした方がいいと思います。その警視総監賞で貰える報酬が通話料金で消したくなければの話ですが」
「電話じゃないとお父さんの声が聞けないよ。だから仕方ないじゃない」
「破産したくなければアドバイスを聞くことをおすすめします」
宮本栞はウインクしながら式部香子の顔を見つめた。




