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東宮たちが救命ボードに乗り込んだ時京宮蛍はドラグノフ狙撃銃に装着したスコープを覗きこんだ。スコープにはレミエルの顔が映る。
「邪魔な幼馴染は救命ボードに乗り込みました。これで心置きなく狙撃できます」
京宮はドラグノフ狙撃の引き金を引き、レミエルがいるビルの壁を狙った。銃弾は壁にのめりこむ。
「それでいい」
その時スコープを覗きこんでいるレミエルの背後にハニエルとサラフィエルが立った。
「そこまでにしてください。レミエルさん」
「もう逃げられんで」
その2人の声を聞きレミエルは背後を振り返る。
「お前らか。別にいいだろう。これはあいつと俺のゲームだから」
「ダメですよ。この銃撃戦は無意味です。あの方の母国である日本で無意味な銃撃戦は許されません。この銃撃はあの方の許可を受けていませんよね」
「あの方の命令なら仕方ない。今すぐ逃走する」
レミエルは仕方なく狙撃銃を片づけ、ビルから逃走する。
京宮のスコープからレミエルの姿が消えた。そのことから京宮は銃撃戦が終わったと悟った。
「終わりました。出頭します」
レミエルと工作員Sとの銃撃戦は終わりを迎えた。甲板にいる京宮と合田は救命ボードに乗り込み白煙を昇らせているクルーズ船から脱出した。
クジョウホテルから逃走したレミエルはハニエルが運転する自動車の後部座席に乗り込んだ。
「これからどこに行く」
レミエルからの質問にハニエルは自動車を運転しながら答えた。
「イタリアンレストランディーノです。そこでサマエルと合流します」
「新しい仕事の打ち合わせか」
「違います。食事会です」
「まだ活動再開が決定していないなら、エヌビアン共和国で用心棒のアルバイトした方が楽しいに決まっている。一時帰国ということでいいか」
「ダメです。あなたは組織にとって有力な暗殺者ですから。今あなたが海外に戻れば戦力半減です。考えたことがありますか。先月サマエルさんが帰国するまでは3人で活動していたのですよ。最低でも4人いないと仕事になりません。サポート役を除いて4人です」
「つまり俺は数合わせということか。お前らも出世したな」
「そういう意味ではありませんよ」
その時助手席に座っているサラフィエルの携帯電話が鳴った。その電話の相手はラグエルだった。
「レミエルを確保したで。犠牲者はゼロや」
『そうですか。それではレミエルに変わってください』
サラフィエルは携帯電話をレミエルに差し出す。
「ラグエルから電話や」
レミエルは携帯電話を受け取る。
「もしもし」
『レミエル。あなたはターゲットを誘き出すためにクルーズ船の機械室に爆弾を仕掛けましたね。そしてその爆発によりクルーズ船に白煙が昇った。僕は怒っています。あの方が許しても僕は許しません』
「意味が分からない。なぜクルーズ船を爆破……」
この時レミエルはあることを思いだした。ラグエルの幼馴染はシージャック事件で爆発に巻き込まれて死亡した。その当時の映像が今回の爆破と酷似しているとしたら。
「ちょっと待て。なぜお前は爆破のことを知っている」
『ウリエルからの報告です』
「あの爆破事件と今回の爆破事件が酷似しているからって怒ることはないだろう。お前は豪華客船が爆破される内容の映画を観て怒り出すのか」
『彼女が意識不明の重体だったら怒りません。しかし彼女は今病院を退院して日常生活を送っている。そこであの映像がニュースで流れたとしたら、ショックを受けてあのことを思いだす。記憶喪失に急激なショックを与えてはいけない。この事件で彼女が我々のことを思い出したらどうするつもりですか』
「彼女というのはラジエルのことか。なぜお前はラジエルにこだわる」
『真実が知りたいだけです。来月帰国します。帰国したらお仕置きをしますから覚悟してください』
電話が切れ、レミエルはため息を吐いた。そして彼はサラフィエルに携帯電話を返す。
「朗報だ。来月ラグエルが帰国する」




