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開き直ったような態度に合田は激怒する。
「ふざけるな。その34が誰なのかが分かったからあなたは藤原高明を殺害した。違うか」
「それなら教えてくださいよ。あの暗号の解読方法を」
「源氏物語だ。桐壷若菜との交換日記で使用された暗号は源氏物語に因んだ物だった。源氏物語の作者は紫式部。作者は物語を作り出す存在。だから0と呼ばれていた。藤原高明と源幸助は主人公一号と二号と呼ばれていたがどちらも源氏物語の主人公光源氏のモデルとなった人物に由来する。藤原高明の苗字藤原は藤原道長。源幸助の苗字源は源光。同じ光源氏のモデルとなった人物が2人もいたから区別するために一号二号と命名したのだろう」
「それで残りはどのように解読しましたか」
「残りは全て各帖の名前だ。藤原愛衣の旧姓は松風。18帖のタイトルは松風。東宮を示す23帖は初音。あなたを示す数字25は蛍というタイトル。柏木を示す35帖のタイトルは柏木。そして桐壷若菜を示す数字1は若菜というタイトル。だが桐壷若菜には別の数字が隠されている。その数字が34だ。源氏物語34帖のタイトルは桐壷だ。つまりあのメールの意味は、誰が若菜を殺したのか」
「なるほど。だから柏木さんはあの暗号を解読することができたようですね。源氏物語の各帖のタイトルを一般人は暗記していない。一方柏木さんはそのタイトルを暗記していたから暗号を解読することができた。ということは合田警部の源氏物語に興味があったということですか」
「源氏物語の各帖のタイトルなんて暗記していない。式部香子だ。彼女がいたから暗号を解読することができた。彼女は常に紫色のストールを身に着けていた。だから気が付いた。式部という苗字は紫式部を暗示していると。そのことを踏まえて仲間の刑事に調べてもらった。だから狙撃事件の動機に気が付いた。藤原高明は34を殺したのが誰なのかを知ったから殺害された」
合田の推理を聞き京宮蛍は反論する。
「しかし彼女は13年前の現金輸送車襲撃事件に巻き込まれて亡くなった。ということは若菜を殺したのは現金輸送車襲撃犯ではありませんか」
「桐壷若菜を殺したのはあなただ」
「そうだと思うのなら説明してください。なぜ僕は13年前桐壷若菜を殺害したのか」
「確かにあなたには桐壷若菜を殺害する動機がない。それは彼女の幼馴染全員に言えることだ。だから正確に言おう。あれは事故だった。その真実を船が港に戻ったら調書に記載する。だから話してくれ。13年前何があったのかを」
京宮蛍は涙を流す。
「いい刑事に出会えてよかった。これで悪夢から解放される。13年前の真実を話し終わったら出頭します」




