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 その頃犯人はシャイワーカー号のロッカールームからゴルフバックを取り出した。犯人はそのゴルフバッグの中からハンドガンを取り出す。

「コルト・パイソン。1999年10月生産が停止した回転式拳銃。これを使って自殺できるのなら本望です」

 犯人は自分のこめかみに銃口を近づける。

 引き金を引こうとする犯人の背後から合田が声を掛けた。

「藤原高明を狙撃したのはあなたか。京宮蛍」

 その合田の一言を聞き京宮蛍は背後を振り返る。

「なぜ僕が犯人だと分かりましたか」

「その前に罪を認めるのか」

「はい。認めます。藤原高明君を殺害したのは僕です。逮捕してもいいですが、僕がなぜ犯人なのかという根拠を教えてもらえませんか。その証拠を聞けば自殺してもいいでしょう」

「自殺はダメだ。俺は絶対にお前を自殺させない。あなたが犯人であるという根拠はチョークの粉だ。狙撃現場にはチョークの粉が落ちていた」

「それだけですか。それなら教員をしている柏木さんが犯人でもいいですよね」

「柏木が犯人ではないと仮定したら、あなたが犯人であるという結論に至った。舞台で予備校の先生役をすることになっているあなたならチョークくらい入手することも容易だからな」

「だからなぜ柏木さんを犯人ではないと仮定することができるのですか」

「防犯カメラの映像だ。あの狙撃現場の非常階段に取り付けてあった防犯カメラにあなたが映っていた。あの映像からだと、人相が分からないらしいが、胸がなかった。つまり犯人の性別は男。だから柏木を犯人ではないと仮定することができたということだ」

「仮にあの非常階段に防犯カメラが設置していなかったら性別が分からなかったということですか」

「物的証拠は今あなたが所持しているライフルでいいよな。そのゴルフバックの中にライフルが閉まってあるのだろう」

「そうですよ。確かにこのゴルフバックの中にライフルがあります」

「逮捕する前に分からないことが三つある。その答えを教えてくれないか。まずはあなたの正体について。あなたは只者ではない。400ヤード先からの狙撃なんて素人ではできない芸当。あなたは何者なんだ」


 その質問を聞き京宮蛍は失笑する。

「工作員Sと言えば分かりますか。僕は工作員Sなんですよ。世界中で何人もの人間を狙撃してきた経験があるから、400ヤード先の狙撃なんて朝飯前です」

「誰が34を殺したのか。その答えを教えてくれないか」

「こっちが聞きたいですよ。34って誰なんですか」


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