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 警視庁でデスクワークをしていた大野と沖矢が駐車場に向かった頃、ハニエルとサラフィエルは東都港に向かっていた。

 サラフィエルは助手席に座りサマエルからの電話を受けている。

「分かった。ホンマやな」

 サラフィエルは電話を切り、車を運転しているハニエルに報告した。

「レミエルは作戦通り東都港に向かっとるようやで。問題は狙撃場所の特定や。組織有数のスナイパーのレミエルやから素直に東都港には現れんやろ」

「つまりレミエルは東都港を見渡すことができるビルに現れるということですね」

「そうや。そのビルが特定できるとええんやけど、どこを探せばいいねん」

「大丈夫です。今頃サマエルさんが条件に適しているビルを検索している所ですから。700ヤード圏内で狙撃に適しているビルがどこにあるのか」


 サラフィエルの膝の上に置いてあったタブレット端末が起動して、マップが表示された。そのマップ上で狙撃場所に適しているビルが赤く光っている。その場所は10カ所に及ぶ。

「まだや。まだ多すぎる。このビルをしらみつぶしに当たっとったらレミエルの狙撃を阻止できへん」

「まだ絞り込めます。彼のターゲットである工作員はシャイワーカー号に乗っています。シャイワーカー号から見て東都港は3時の方向にあります。彼は闇討ちを嫌っているから12時から6時の方向のどこかのビルで狙撃しようとしているはずです」

「その条件でサマエルに検索してもらうわ」

「まだです。まだ重要な情報を見落としています。シャイワーカー号の基本データです。シャイワーカー号にも死角はあります。レミエルはその死角を避けるはずです」

「確実に狙撃するためやな。分かった。この2つの条件に該当するビルを検索してもらうわ」


 サラフィエルは電話でこのことをサマエルに伝える。

『分かった。3分間時間をくれ』

 サマエルはイタリアンレストランディーノの地下室でパソコンを操作する。

 今パソコンにはシャイワーカー号の見取り図が表示されている。それから死角になる箇所を検索するプログラムを使う。

 すると34カ所の死角が見つかった。


 次に彼は700ヤード圏内でシャイワーカー号から見て12時から6時の方向にある狙撃可能なビルを再検索する。

「3カ所。後はこれか」

 サマエルは最後に狙撃をシミュレーションする。死角にならない6カ所の標的に3カ所のビルから狙撃することは可能なのかという内容。

 そのシミュレーション映像を観たサマエルはサラフィエルに電話した。

「分かった。レミエルはアユカワビル屋上にいる。銃弾の発射角度や軌道を考慮した上で狙撃できるのはそのビルしかない。そのビルから狙えるのは甲板」

『今すぐ向かうわ』

サラフィエルは電話を切り、運転しているハニエルに報告する。

「分かったで。アユカワビル屋上や」

「分かりました。それでは行きましょう」

 ハニエルが運転する車はアユカワビルへと向かう。無意味な狙撃を阻止するために。


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