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その頃木原と神津は13年前に発生した現金輸送車強盗事件の概要を警視庁のパソコンを使い調べていた。
「事件が発生したのは2000年7月19日。大量の二千円札が東都銀行に運ばれることとなっていた。その大量の二千円札を乗せた現金輸送車に目出し帽をかぶった2人組の強盗犯が襲撃。その異変に気が付いた警備員が強盗犯を押さえつけようとした所、強盗犯の仲間とみられる人物が東都銀行から遠く離れたビルから狙撃。その銃弾が銀行のガラスを突き破り、たまたま東都銀行に来ていた一般人が銃弾を受けて死亡した。その後2人組の強盗犯は警備員を押し切り逃走。事件解決への手がかりを掴むことができず現在に至る」
神津が警視庁のデータベースに掲載されている事件の概要を読み上げると、木原は質問した。
「その被弾した一般人というのは誰ですか」
「桐壷若菜さん。当時23歳。東都スーパーの店員で東都銀行には給料を降ろす為に立ち寄ったそうだ」
「当時23歳ですか。生きていたら被害者の藤原高明さんと同い年ですね」
「そうだな」
その時神津の脳裏にある推測が浮かんだ。そして彼は突然立ち上がる。
「東都大学だ。俺の推理が正しかったら今回の狙撃事件の容疑者6人は東都大学に通っていたはずだ」
2人は東都大学に向かった。2人は大学の事務室に向かうと、東都大学の卒業生リストを見せてもらうよう依頼した。その量は膨大だ。
一つ一つ名前をチェックしていくと、柏木香織という名前が見つかった。 それからチェックを続けていくと次々と狙撃事件の容疑者として浮上している人物たちの名前が見つかった。
「容疑者たちと被害者の藤原高明さんは14年前同じ大学を卒業したことは分かりましたが、それと事件の関係が分かりませんね」
「まだこの大学での捜査は終わっていないが、その前に合田警部に電話しろ。桐壷若菜という名前を聞いたことがないか容疑者たちに確認しろと」
「分かりました」
木原は携帯電話を取り出し船上にいる合田警部に電話する。
「合田警部ですか。木原です。被害者藤原高明さんが所持していた二千円札は13年前の現金輸送車襲撃事件の盗品でした。そしてその事件で桐壷若菜さんという当時23歳の東都スーパー店員が流れ弾に当たり亡くなっています」
『スーパーの店員か。先ほどシャイワーカー号を訳すと内気な従業員になるという話題になって、容疑者たちが顔を曇らせた。店員を別の言い方に直すと従業員。その亡くなった桐壷若菜の性格が内気なら、容疑者たちとの繋がりが見えてくる。これから容疑者たちに話を聞く』




