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その頃木原と神津は登庁した。2人が仕事場である警視庁捜査一課3係に入ると、北条がいた。北条の近くには先に登庁していた大野と沖矢がいる。
「驚愕の事実が判明しました。狙撃事件の被害者藤原高明さんが所持していた二千円札は盗品です」
「盗品だと。どういうことだ」
「あの二千円札に記された紙幣番号が13年前に発生した現金輸送車襲撃事件で盗まれた紙幣番号と一致しました。あの紙幣には藤原高明さんともう一人の人物の指紋が検出されました」
「つまり狙撃事件と13年前の現金輸送車襲撃事件には関係があるということなのだね」
「その現金輸送車襲撃事件を再捜査することが狙撃事件の真実を明らかにする近道になるかもしれませんね」
その時警視庁捜査一課3係に設置された電話が鳴った。電話に一番近い位置にいた大野はその電話に出る。
「もしもし。警視庁捜査一課3係です」
その電話の内容に大野は顔を青くする。電話の相手は用件を伝えるとすぐに電話を切った。
大野は仲間の刑事に電話の内容を報告する。
「公安調査庁からです。至急警視庁捜査一課3係の刑事2名を公安調査庁長官室に呼び出す」
「浅野房栄か。俺と木原は千間刑事部長の所に行って家宅捜索状を請求するから、お前らで行け」
「分かりました。呼び出しが終了次第捜査に合流します」
大野と沖矢は駐車場に向かい木原と神津は刑事部長室に向かう。2人はドアをノックして刑事部長室に入る。
「失礼します。千間刑事部長。藤原高明の自宅を家宅捜索させてください」
「藪から棒だな。どういうことか説明してもらおうか」
「狙撃事件の被害者藤原高明が所持していた二千円札は13年前の現金輸送車襲撃事件の盗品です。被害者の自宅を家宅捜索すれば、盗品が発見されるはずです」
「それで盗品が発見されたらどうする。書類送検でもするつもりか。被害者宅を家宅捜索するまでもない。13年前の現金輸送車襲撃事件が解決した所で狙撃事件は解決しない。だから家宅捜索状は請求しない」
いつもの千間刑事部長に戻ったと木原たちは思った。
「分かりました。それでは別の方法で再捜査します」
木原が一言伝え、2人は刑事部長室を退室した。
2人は警視庁の廊下を歩きながら話し合う。
「これからどうする」
「簡単です。現金輸送車強盗事件の概要を調べます」
2人は警視庁のデータベースにアクセスして事件の概要を調べるため、警視庁捜査一課3係に戻る。




