28.天からの助けが舞い降りた
活動報告に、小ネタを置いてあります。
小話どころか小ネタですが、ご興味のある方はちらりと覗いてみて下さい。
「姉上!」
だんだんと混乱してきた私のところに、天からの助けが舞い降りた。
義弟クリストファーが、大きな荷物を抱えて走ってきたのだ。普段から天使のように愛らしい義弟だが、今日は本物の天使に見えた。
「クリストファー! どうしたんだい?」
「姉上がそんな格好で出かけてしまうから、まさかと思って追いかけてきたんです! 今日は学園のダンスパーティーでしょう!?」
「それはまぁ、見ての通りだけれど」
「だったらほら、ドレスに着替えてください! ぼく、ちゃんと持ってきて……」
それだ。
ぱちんと私は指を鳴らした。
「分かった、行こう。クリストファー」
「姉上……!」
さらりとクリストファーの肩を抱くと、彼の乗ってきた我が家の馬車へと連れ立って歩く。
最近の義弟はどうも私をまともな令嬢に矯正しようとしている節があり、少々頭が痛かったのだが今日ばかりは助かった。
「え? あの、姉上? なんでぼくまで」
「いいから、いいから」
そのままクリストファーを馬車の中に連れ込む。
さっきまでキャットファイトまがいのことを繰り広げていた3人もギャラリーも、私たちの背中を黙って見守っていた。
「あ、あねう……え? や、何を……いや――――っ」
馬車の中から響く悲鳴に、外では一同にどよめきが広がっている気配を感じる。
それに構わず、私は馬車をがたごと揺らしながら、作戦を実行した。
数分後。
めそめそと泣くクリストファーの肩を抱いて、私は上機嫌で馬車を降りた。
顔を覆う彼は、薄紫色のふわふわしたAラインのドレスを着ていた。夢かわいいチュール素材のパフスリーブがよく似合っている。
というより私が着るには可愛らしすぎるだろう。我が義弟は私をなんだと思っているのか。
そう。私は馬車の中で彼の服をひん剥いて、彼が持ってきたドレスに着替えさせたのだ。
もともと女の子のような可愛らしい顔立ちで、華奢な体つき、ふわふわとした羊さんのような癖毛のボブ。
ドレスを着せて髪を少々整えてからリボンでも結んでやれば、ショートヘアのご令嬢にしか見えない。
皆の視線を一身に集めつつ、私はにこやかに宣言する。
「すまないね。残念だけど、私は義弟のエスコートをしなくてはならないんだ。それじゃ、お先に!」
「うう、ひっぐ……」
「ほら、顔を上げて。来年入学だから見学に来たいって、早く私と一緒に通いたいって言っていたじゃないか」
泣いている義弟の肩をさすってやるが、彼はひどく恨めし気に私を見上げるだけで、なかなか泣き止もうとしない。
泣かれると私が悪いみたいで少々居心地が悪いが、この場を収めるためには仕方ない。尊い犠牲というやつだ。
今度何かお菓子でも買ってやることにしよう。
「言ってましたけどぉ……ぼく、ぼくこんなんじゃお婿に行けない……」
「大丈夫、お兄様が良い相手を見つけてくれるよ」
「兄上だって婚約者もいないじゃないかぁ!」
いつまでもぐすぐす言っている義弟を引き連れて、私はダンスホールに足を踏み入れた。
感想、評価、ブクマ、誤字脱字報告等、ありがとうございます!
応援いただいたおかげで、何とか1日2回更新週間~延長戦~をやりきることが出来ました!
ありがたいことにたくさんブクマをいただいておりまして、気づいたらブラック・ホワイトどころかX・Yの数(ポケ○ンの話です)も超えているのでは、と思ったのですがこれ以上1日2回更新を続けるとしんでしまうので、来週からは1日1回更新に戻ります。
サン・ムーンの数超えたあたりで、また1日2回更新をやりたいと思っておりますので、(いつまでポケ○ンの話しとんねんとか思わず)どうぞよろしくお願いいたします。





