15.いえ……面白いお方だなと
1日2回更新週間が終わるとどうなる?
知らんのか。
1日2回更新週間が始まる。
というわけで、今週も1日2回更新、頑張ります!
「待て、勝手に入っては……」
「大丈夫ですよ。悪いことをするわけでなし」
殿下をそっとベッドに降ろして、布団を掛けてやる。
「さ。早く寝て下さい」
「いや、しかし。生徒会の仕事も、授業もある」
「殿下は大して労せずして何でもできてしまう方なんでしょう? なら1日くらい休んだところで変わりませんよ」
「だが」
「ほら、オーバーワークは身体に毒です。筋トレと同じ。何事も適量ですよ」
「……」
起き上がろうとする殿下の肩をやんわりと押さえる。
たとえやんわりであろうと、殿下のか弱い力ではびくともしない。
だいたい、生徒会の仕事とは何なのだ。
前世では乙女ゲームに限らず、二次元では当たり前のように「生徒会」なるものが存在し、学内の選ばれたカースト上位の人間が所属していたり、教師より権限を持って学校を牛耳ったりなどしていた。
だが、現実の生徒会について、私は何も覚えていない。
選挙はあったような気もする。入っておくと入試のとき推薦をもらえる、みたいな話もあった気がする。
しかし、それ以上でも以下でもない。
生徒会だからといって腕章をつけている生徒もいなかったし、「きゃー生徒会よ! かっこいい!」とかなっているのも聞いたことがない。
何をしているのかもまったく知らないし、興味もなかった。
思うにここで言う「生徒会」というものは、あくまで「妖精」とか「ネッシー」と同じ、空想上の存在なのではないか。
二次元の中にだけ存在し、実在しない概念なのではないか。
だとしたら、その仕事、やらなくても実のところ、支障はないのではないか。
誰か先生なりがやってくれるのではないか。それこそ、妖精さんが代わりにやってくれるかもしれない。
「きみ。もしかして、だが」
殿下のことをすっかり放置していたところ、彼は何やら胡散臭いものを見るような目つきで、私を見上げていた。
「私を心配しているのか?」
「ええ、当たり前でしょう。目の前で王太子が倒れかけて、心配しない臣下はいませんよ」
「だが、普段は私のことを、強かだなんだと言って全く病人扱いしないだろう!」
殿下の言葉を肯定すると、彼は信じられないといった様子で食って掛かってきた。何だ、元気じゃないか。
「え? 病人扱いがご所望でしたか?」
思わず呆れた声を出してしまう。まだそんなことを言っているのか。
「いや、されたいというか、その」
気まずそうに口ごもり始めた殿下に、私はわざとらしく肩を竦めて告げる。
「病人扱いというなら、城下に連れ出すなどもってのほかだなぁ」
「ぐ、」
悔しそうに俯く殿下。もはやライフワークになってしまった趣味の資材を買いに行けないのは、殿下にとって辛かろう。
その姿が完璧王子たるゲームでの彼とはあまりにも乖離していたものだから、私はつい笑いを漏らしてしまった。
「……何がおかしい」
「いえ……面白いお方だなと」
「面白い? 私が?」
私の言葉に、殿下は一瞬目を丸くすると、すぐに視線を鋭くして私を睨んだ。私は咳払いと共に姿勢を正す。
不敬とそうでないことの線引きが難しい。乙女心より難しい。
「普段の王太子らしい殿下と、ずいぶん違う顔をされるもので」
「……きみのせいだよ」
殿下が、私を睨みつけたままで呟く。その頬は妙に赤く、長い髪からちらりと覗く耳まで朱に染まっている。もしかすると、本当に熱があるとかで体調が優れないのかもしれない。
だとしたら私はお手柄なのではないか。報奨金とかもらえないものだろうか。
「きみがおかしなやつだから、つられているんだ」
「おや、心外だ」
「私だって、きみに面白いと言われるのは心外だよ」
ふむ。それは一理ある。この外見の令嬢という時点で、自分がイロモノ枠だという自覚は大いにあった。
「では、ゆっくり休んでおかしなところは治してください。いつもの完璧な王太子殿下に戻ったら、またいくらでも働けますよ」
「……そう、だな」
布団をぽんぽんと叩いて立ち上がれば、殿下は瞼を閉じたまま、布団の端を握って小さくそう答えた。
医務室の出口に近づくと、戻ってきた保健医とすれ違ったので殿下のことを伝えておいた。
すると彼女は、さっと顔を青くして私に詰め寄る。
「ば、バートンさん。あのね。体調の悪い人に付き添ってくれたのはありがたいのだけど……貴女は女の子なんだから、男の子と2人きりになるというのは……その……」
「心外だな。いくら殿下が可憐でも、病人を襲ったりしませんよ」
「違うの。バートンさん。違うのよ」
私の肩を掴んできた保健医は、がっくりと項垂れた。
なんと! 初めてレビューと言うものを書いていただきました!
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございます! すごくすごくうれしいです!





