6.露出狂の対策と同じである。
モブどれの舞台(略称:モブどれステ)、無事に幕が上がっております!
岡崎も観劇させていただきましたが、めちゃくちゃ楽しかったです!! 〇装に筋トレ……そのうちレポとか書きたいな……
残るは明日明後日ですが、明日は当日券も少しあるようなので、都内近郊の方は気になったらぜひ検索してみてくださいね~!
「ついでだからあっちにも顔出しておくか」
「エリ様。報連相、報連相」
「逆ハーレムエンドなら、隠しキャラも必要だろ?」
すっかりげっそりしたリリアを連れて、王城の中を歩く。
報連相と言われたが、さっきの王太子殿下はフィールドでのランダムエンカウントだ。これから行くのは彼女も知っている場所なので、おのずと誰と話すか予想がつくだろう。
私が向かったのは、第一師団の詰め所であった。
見張りに軽く手を上げて挨拶をして、中に入る。一時期通い詰めていたために最早符牒の確認などされなくなっていて、顔パス状態だ。
いいんだろうか、セキュリティ的に。
「ヨウ、いるか?」
「エリザベス!」
キセルをふかしていたヨウがぱっと顔を上げる。煙たさに顔を顰めると、彼は大慌てで火を消した。
が、ヨウが近寄ってくると風に乗ってどこか異国情緒あふれるスパイシーな煙が一緒にこちらに漂ってきた。袖口で自分の口元とリリアの口元を覆う。
「ヤバい草じゃないだろうな、それ」
「ノン! 普通の煙草デスよ」
やたらにんまりと笑っているのがますます怪しい。
彼を東の国に送り返そうとすったもんだがあったものの、受け取りを拒否され……そうこうしているうちに、東の国で大規模なクーデターが発生した。
前王政がひっくり返り、新しい王だか皇帝だかが誕生したものの、今もまだ内乱が続いている。
そのような状態なのでこの不良債権こと前国王の遺児はますますもって正式には送り返せなくなり、しかも本人も一向に帰りたがらないので、秘匿された組織である第一師団に今なお飼い殺しにされていた。
どころか普通に任務に連れて行かれている。いいのかそれで。
まぁ、たとえ彼が何かしたところで他の騎士が取り押さえられると踏んでのことだろうが。
結局私の寝首を掻きにくるほど強くなれていないしな。
「今度の、学園のダンスパーティーに来て欲しいんだが」
「エリザベス……!」
ヨウがとろりと瞳を蕩けさせる。
私の手をぎゅっと握ると、甘くとろけるような声音でうっとりと頬を染めた。
「ついにワタシの愛を受け入れてくれる気になったんデスね!」
「どうせ警備で来てるだろ? ちゃんと正装してこいよ。服持ってるか?」
「ああ、この日をどれほど待ち望んだことでショウ……! 苦節5年、あの苦しくも甘く切ない日々……」
「で、そこでリリアをチヤホヤしてくれ。いいか、手加減なしでやれよ」
「他の相手に揺らいでいたって構いまセン、最後にはワタシのところに戻ってきてくれる……何といってもアナタはワタシの運命の女性デスから!」
「私にしてるその薄ら寒いノリをリリアにもやってくれたらそれでいいから。じゃあ頼んだ」
ヨウの手を振りほどいて、背後のリリアを振り返った。
「やってくれるって」
「会話になってました?!」
「あいつとの会話は基本壁打ちだから」
「か、壁打ち……」
半ば呆然と呟くリリアに、胸を張って頷いた。
この数年、この気持ちの悪い対応に揉まれているうちに気が付いたのだ。
私が反応するから喜ぶのだと。
私が嫌がる素振りをするから繰り返すのだと。
だからどんなに気持ちが悪かろうがもうガン無視することに決めた。露出狂の対策と同じである。
するとどうだ、噛み合ってはいないが私が話した内容を聞いてはいるようで、ある程度の指示は通ることに気が付いたのである。
そこからは極力無視してこちらの話だけ一方的に伝えることにした。
ストレスはあるがまともにやり合っていたら一生話が進まないので仕方がない。
人は成長する生き物、私も適応したのだ。こんなことに適応したくはなかったが。
無反応を決め込む私の横顔を見ながら、ヨウが自分の身体を抱きしめながら恍惚のため息を漏らす。
「ああっ……全く相手にされないこの感じ……たまりまセン!」
「こわ」
前言撤回。やはり気味が悪い。





