表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第8章 偽物編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

558/597

エピローグ(1)

「エリ様。えーりーさーま。聞いてます?」

「ん?」


 呼びかけられてどこを見るともなく中空を彷徨わせていた視線を戻せば、リリアのむすっとした顔が視界に入る。

 考え事をしていてついぼんやりとしてしまっていたようだ。


 隠し子騒動が一件落着し、ほどなくしてリチャードとマリーは西の国へと帰って行った。

 だいたいの知り合いにはネタバラシも終えた。名実ともに事態は終息をみたのである。


 私がリチャードと結婚しないと知ったお兄様は、ほっとしたような残念そうな、たいへん複雑そうな顔をしていた。

 クリストファーは私の嘘に怒ってしまってしばらく口を利いてくれなかったが、最後には「そんなことだと思いました」とかため息をつかれた。最終的に口を利いてもらえるようになったのだから粘り勝ちだろう。


 問題は解決した。思い悩むことなど何もない。

 ……リチャードが残していった、置き土産のような言葉を除けば。


 わざわざ「忠告」だの「アドバイス」だのと言い残していくくらいだ。彼なりに思うところがあってのことだろうとは思うのだが――心当たりがない。

 彼が帰ってしばらく経つ今でも、時々ぼんやりと、その言葉の意味について考えてしまっていた。


 また思考を飛ばしては機嫌を損ねるので、リリアに向かって両手を上げて、「降参」の意を示す。


「ごめん。何だった?」

「だから、怨霊の話ですよう」


 もう、とリリアが頬を膨らませる。

 そんなことをしても可愛らしいだけである。

 視線で続きを促せば、彼女は呆れたように息をついて、再び口を開いた。


「怨霊が何で、リチャードさんに取り憑いたのか、って話で」

「……まぁ、それはリチャードもあの怨霊と同じような気持ちを持っていたからじゃない?」

「その件についてはあえて掘り返しませんけど」


 リリアがすっぱり言い切った。

 リチャードの告白の件は早々にリリアに話してあった。

 というかリリア以外にこの話ができる相手がいなかったのである。つくづく、私には同性の友人というものが乏しい。


 あの時は大変だった。多少ぎゃあぎゃあ言うだろうとは思っていたが、予想以上の暴れっぷりだった。「余計なことを!! 不老不死にしてやります!!」と騒ぐのを何とかかんとか宥めすかした。


 気分は荒ぶる山の神を鎮める旅人であった。鎮まりたまえ、さぞかし名のある聖女と見受けたが何故そのように荒ぶるのか。

 そして脅し文句が通常の脅しとベクトルが真逆で新鮮だった。

 望まぬ不老不死、確かにあまり嬉しくないかもしれない。


 とにかくリリアはあの件を「なかったこと」にしたいようだ。

 では何故、リチャードの話を蒸し返したのか。


「わたしが気になってるのは、どっちかっていうと――怨霊は何故、リチャードさん以外に()()()()()()()()()()、の方でして」

「……どういう意味?」

「だって、あの赤ちゃん――の形をした怨霊、ずっと公爵家にいたんですよね?」

「そうだけど」

「それなら、エリ様とか。もっといえば、エリ様のお兄様とか、クリスくんとか。この家に住んでいる人の方が、遊びに来るだけのリチャードさんよりずっと長く、あの怨霊と接していたはず、ですよね」


 言われてみれば、確かにそうだ。

 家族は全員赤ん坊にめろめろのでろでろで、常に誰かが一緒にいた。特にクリストファーなんかはしょっちゅうベビーベッドに張り付いていたし、同じ部屋にいることも、触れることも多かった。

 取り憑かれていてもおかしくない状況だっただろう。


 だが、実際に怨霊が取り憑いたのは――遥かに接する時間の少ない、リチャードだった。


 リリアの琥珀色の瞳を見つめ返す。

 私の視線から同じ考えに辿り着いたことを読み取って、リリアが頷いた。

 そして、先ほどと同じ疑問を繰り返す。


「それなのに、リチャードさん以外には取り憑かなかった。それは、何故でしょうか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍最新6巻はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生幼女(元師匠)と愛重めの弟子の契約婚ラブコメ↓
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜

社畜リーマンの異世界転生ファンタジー↓
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ